技術における世代間の伝承について
企業内に存在する貴重なノウハウ、知的な財産について、ベテラン社員から若手社員に伝承はうまくいっているのでしょうか?
近年は、技術を要する大事な部分を外部企業に業務委託をしてしまって、社内にノウハウが残らないという懸案も一部で出てきているようです。
技術の移転に必要なのは、各世代間でバランスの取れた人員の配置がなされていて、抜け落ちている世代が存在していないことが重要だと考えます。
筆者が最近接する機会のあった現場において、世代バランスの取れた人員配置という点で、問題を感じた場面がありましたので、ご紹介したいと思います。
1点目が、病院(総合)のリハビリステーションでの作業療法士などの人員配置についてです。
たまたま私自身が肩に不調を感じていた時期があったので、当病院の整形外科で診察を受けて一定期間、隣接するリハビリステーションで作業療法士から処置を受けていた期間がありました。
その現場を見ていて感じたのですが、明らかに30歳前後(25〜35歳)くらいの療法士ばかりが働いていて、40〜50歳代の人員がほとんど(唯一1人)存在していなかったのです。
これには不思議な感じを受けました。
40歳以上の療法士はすべて管理者に昇進していて、処方の現場には誰も残っていないと仮に説明を受けたとしても、明らかにバランスが悪いと思ったのです。
2点目の事例ですが、子どもの通う小学校の教員の世代構成についてです。
これもやはり20〜30歳代の教員が多数を占めているように見えて、40歳以上のベテラン教師の影が薄いように見えたのです。
職員室に侵入して調べた訳ではないのですが、運動会等の学校行事の現場を見ていて感じたことです。
世の中の通説では、日本の人口の世代構成として若年層の数が圧倒的に少ないという事実が通っていますが、労働の現場では逆に若手しか存在していない、という事例があることも知っておきたいところです。
ベテランが多過ぎるのも、若手が多過ぎるのも良くなくて、各年代がバランス良く労働の現場に配置されていることを良しとする考え方を筆者は持っているのです。
理由は明確で、年長者しか知らない長年の経験に裏打ちされた技術やノウハウを、労働の場で若手に伝承していくことは、企業や組織が永続的に栄えていくために絶対に必要なことだからです。