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技術で勝って、商売で負けていませんか?

電機不振を紐解く

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electrical_machinery.jpgかつては花形と言われ、自動車と並んで日本の代表的な産業と言われた家電・エレクトロニクス分野の苦戦が伝わるようになってずいぶんと年数が経過しました。

筆者の同級生が、日立に入社したという噂を聞きつけたときは羨望の眼差しを当時は向けていたものです。
それが今はどうでしょうか、代表的な低迷業種となってしまいました。

電機不振に関して、日経新聞の経済教室に参考になる記事が掲載されていたのでご紹介したいと思います。(16.3.15付 青島一橋大学教授の投稿)

「第一の原因は、半導体の微細化に起因する技術進歩によって、『より良いモノ』を生み出す日本企業の強みが生かされにくくなったことである。ラジオ、オーディオ、テレビ、ビデオ、デジタルカメラなど日本企業が強みを発揮したのは単品としての製品だ。」

「製品という枠内で顧客の要望を極限まで満たすように、部材から組立までの流れを同期化することに強みがあった。しかしデジタル化が進み、製品機能の大部分が半導体チップに統合されると、個別の製品の性能や品質で差別化することは難しくなった。」

「市販のチップセットで十分な性能の製品ができるのならば、顧客の高い要求に合わせて持続的に性能を高める努力の差別性は大きく低下する。」

「一般に私たちは製品を、主要な機能や構成要素で定義する。車ならば推進力、操舵性、エンジン、タイヤなどで、そこに一定の機能的、物理的な境界を認識する。だが技術進歩は製品の境界を脆弱なものとする。半導体の集積化とソフトウェア制御の進歩により、多様な機能を組み合わせる自由度は飛躍的に高まり、固定的な製品の枠に縛られた改善努力は相対的に価値を失う。より良い製品を届ける『すり合わせ能力』は価値につながりにくくなる。」

「こうなると産業の付加価値は、既存の製品や事業の枠を超え新たな組み合わせを提案するソリューション事業や、様々な製品に広く使われる強い基本部材を提供することに移転する。」

「しかし日本のエレクトロニクス企業の多くは、モノの境界にこだわった事業から脱却できなかった。」

以上ですが、同氏は他の原因としても、家電エコポイント制度を始めとした過剰な政策的な保護や、イノベーションへの投資がおろそかになった点を挙げています。

いずれにしても、長年染み付いた体質から脱却するためには、顧客が何に価値を見出そうとしているのかを見極めて製品の開発に生かす手法を、いち早く取り入れていかないといけないことがわかります。

私事ですが、本拙稿でこちらのオルタナティブブログへの投稿がちょうど500本目を迎えました。
昨年の4月8日から書き始めて1年と5ヵ月で到達しました。
いつも購読いただいて有り難うございます。

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