ウォルマートを追い上げるアマゾン
世界最大の売上高を誇っている企業が、米ウォルマートであることはよく知られたところです。
一方で、アマゾンの売上高の伸びには驚かされ高成長を毎年つづけていますが、ウォルマートに比べるとまだ4分の1の規模にとどまっています。
ところが、今の両社の伸びの違いが続けば、いずれは盟主の座が逆転して、アマゾンが首位に立つ日がこないとも限りません。
それくらい、両社の勢いには圧倒的な違いがあって、ウォルマートに将来に対する危機意識が芽生えてくるのは当然です。
陣営はやはり黙っていませんでした。
アマゾンに対抗して、ネットの活用を徹底的にやり始めているのです。
コンセプトは、ただITを導入すればいいとか、ECマーケットプレイスをやればいい、という考え方ではないようです。
基本は、全米に張り巡らせた店舗網にお客さまに来ていただくことが中心ですが、その際に不憫に感じられたり、手間だと思わせることに対して、有効にアプリやITシステムを組み入れているのです。
例えば、店内ピックアップサービスがそうです。
PCやスマホで事前に希望の商品を注文後、ウォルマート側の準備が整い次第、メールで連絡が届き、あとは店舗に商品を取りにいって清算を済ませて持ち帰ってくる、というものです。
とにかく、広い店内をあちこち回って、商品を買い物カゴに入れるという手間を極力軽減して、お客さまには無駄な労力を使わせないという考え方で、あの手この手の買い物支援サービスを手掛けているのです。
なぜウォルマートほどの小売業界の巨人が、ITの利活用を急いでいるのでしょうか?
理由はアマゾンが追い上げてきたからです。
特に、同社は食品分野に力を入れ始めていて、近未来には両社の四つ相撲が見られるかもしれないからです。
ウォルマートにしてみれば、敢えてライバル社の強い領域にどんどん進出して、自店舗にお客さまを誘導してくる、という戦法はよく見られることです。
例えば、金融の分野は急にフィンテックの存在感がこちらの予想以上の早さで高まり、もはや国内メガバンクも無視できない存在となってきました。
そこで、むしろ自社で積極的にフィンテックの技術を取り込み、研究して、手掛けようとしています。
某メガバンクでは、社内の研究員に急遽辞令を発して、九州のブロックチェーンを得意とするベンチャー企業にプログラムの習得のために行かせる、という英断を下したという事例も聞きました。
いずれにしても、あらゆる業界業種で、激しいイス取りゲームが始まっています。
またP.F.ドラッカーの言葉を引用してしまいました。
「マーケティングとイノベーションが企業において重要であり、それ以外は企業にとってコストでしかない。」