ヤフーによる一休の買収の背景
ヤフー株式会社は、シティーホテルなどの高級ホテルやレストランの予約サイトを運営する一休をTOB(株式公開買い付け)を実施して約1000億円で買収すると報じられました。
ヤフーは国内では盤石と思われてきたポータルサイトであるYAHOO!JAPANを運営してきましたが、ヤフートラベルを強化する目的があるようです。
ホテル予約サイトの事業には、楽天トラベルなどとの激しい競争が存在していて、業界首位の座を譲っている状態です。
普及価格帯での宿泊施設では、どうしても価格競争に陥ってしまい、思うように利益が上げられていないのです。
そこで、高級ホテルや旅館、レストランの予約に強い、という特徴を持つ「一休.com」を取り込むことによって、他社との差別化を図る、というのがまずは表向きの理由です。
ただ理由はそれだけではありません。
大事なことは、ヤフーの儲けの方程式に揺らぎが生じていることが挙げられます。
ヤフーでは今でも相変わらず、YAHOO!JAPANを使った広告によって収益を得るビジネスモデルに頼っていますが、あれだけ強かったこのモデルに陰りが生じてきているのです。
背景には、スマホの普及があります。
ブラウザを使わずに、アプリを起動して自分スタイルの使い勝手を追求している人たちが増えたのです。
それによって、YAHOO!JAPANを参照する人が減ってきている、という訳です。
連動して広告媒体としての魅力が減りつつある、という見方です。
ヤフーはとっくにこのような危機感を社内で共有しているはずです。その証拠に立て続けに今回の一休を始めとして各種サービス系のWebメディア買収や提携に動いているからです。
ところが、旧来からの屋台骨である広告による収益獲得スタイルの次にくる柱が育ってきていない、という焦りがあるという訳です。
グローバルに展開しているヤフーですが、現在の日本ほど、ビジネスとして成功した例は他の進出国では稀なほど、YAHOO!JAPANはこれまで成功してきました。
それを端的に表してきたのが、検索で使うためのポータルサイトとしての利用率の高さや知名度、存在感の大きさです。
このストロングポイントが、国内進出以来、初めて脅かそうとされている現状はまた、1つの時代の終わりを投影しているかのようなのです。