訪日観光客の爆買いだけに頼ってはいけない
現在、日本中の小売りサービス業における内需不振を補っているのが、中国人を筆頭としたアジアからの訪日観光客による「爆買い」です。
爆買いによる恩恵は、従来からのゴールデンルートだけではなく、地方都市にまで及び始めています。
例えば、アベノミクスの効果が薄れてきたデパートの業績を下支えしているのも爆買いであり、当初よりアベノミクスの恩恵に預かっていない地方でも、今や期待するのは訪日観光客であり、各地であの手この手の誘致合戦が繰り広げられています。
一見すると賑やかで結構なことですが、筆者には一抹の不安がずっとつきまとっています。「爆買いは永遠には続かない」という点についてです。
そこで今回は、筆者に意見の近い投稿を寄せている前伊藤忠商事会長および駐中国大使も務めた丹羽宇一郎氏の主張を紹介したいと思います。(日経ビジネスより)
「国も地方自治体も企業も、いかに観光客にモノを売るかという発想に偏り過ぎてはいないか。観光を担う人は、もっと積極的に海外トップクラスの観光地を訪れ、観光客を感動させる本質的な価値は何かについて、深く考えた方がいい。」
「カネは追いかけると逃げていく。必要なのは、相手の"心"を追いかけることだ。それがビジネスの鉄則だ。今、炊飯器やシャワートイレが売れても、自分の国で同等の品質の商品を安く買えるようになれば、早晩、そのような"爆買い"はしぼむ。それでも、日本に来て、日本にカネを落とそうと考えてもらうには、訪日客のカネを追いかけることではなく、心を動かすことだ。それには、観光客を感動させるしっかりとしたマネジメントが欠かせない。」
「それは、観光を"学問"として確立することにほかならない。私は日本の今後の成長分野は、技術・農業・観光だと考えている。その中で、学問として確立していないのは、観光だけではないか。」
いかがでしょうか、非常に説得力のある意見を同氏は語ってくれています。
私から1つ言うとしたら、アジアからの観光客も大事ですが、欧米からの観光客をもっと増やす知恵を絞った方がいいと思います。欧米から来日した旅行者は爆買いに走らないはずです。
それよりも彼らは、日本らしさを求めて訪日します。洗練された都市空間や賑やかな買い物スポットに興味を持つのではなく、違う目線で日本を見つめていると思うのです。