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環境と人材教育について考えてみる

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ecology.jpg夏というシーズンは、他の季節に比べてある程度まとまった休みを取得することができる貴重なシーズンです。

そこで今回は、この季節ならではの体験である、自然との触れ合いを通じて誰もが身近に感じるテーマである「環境」について考えてみたいと思います。

内容は、人材教育との関係で書いていきたいと思います。

「グローバル人材」という言葉がビジネスの世界で言われるようになって久しいが、環境を人材教育の題材とした場合、知識教育や体験教育だけでなく、国際的に通用する広範な視野の醸成につながると考えることができる。それは、下記にあげる「5つの視点」が育つからである。

第一の視点は「その世界に存在しているものは、他の何かと関係を持っている、もしくは、何らかの影響をお互いに与え合っている」という考え方である。

例えば、異なる生物は密接な関係を持って活動することのうち、アリとアブラムシのような関係を相利共生という。異なる生物でも相互に作用し合って、それぞ れ進化していく共進化という考え方に気づくことができるであろう。企業でも、関係する株主や消費者、NPOなどと対話するステークホルダー・ミーティング で透明性の高い関係を築きつつ、企業活動にその声を活かしていくといった取り組みがある。

第二の視点として、複数の要件や性質を満たし、バランスよく複合的な視点を持つことの重要性があげられる。

例えば、企業や個人が「社会性」「事業性」「革新性」を持って、社会や地域が抱える問題を解決していこうというビジネスのことをソーシャルビジネスとい う。1つの性質だけ満たせばよい、この1つさえ達成できればよい、という限定的な視点ではなく、両立やバランスを重視している。環境と経済と社会の向上の 達成や、先進国と途上国とで豊かさをわかちあっていくことも重要で、環境汚染対策と地球温暖化対策を同時に達成するコベネフィット・アプローチもそうした 考え方に基づいている。

第三の視点は、他社評価の導入などといった信頼性の重視である。現代の事業活動は、情報開示を行うだけでなく、その信頼性を高めることが重要である。環境報告書の作成において第三者による審査などの形で信頼性を高める動きもある。

第四の視点として、小さいな力でも、やがて大きな流れや、活動の輪になっていく、広がりを持ったものになっていくということが言える。たとえ1人であって も、身近で、できることから行動することが大切である。森の火を消さなければならないことを「わがこと」であると捉えた「ハチドリのひとしずく」も、そう した考え方である。「地球規模で考え、足もとから行動せよ」という意味をもつ「Think Globally, Act Locally」という標語もある。

第五の視点として、未来を見るときに、まず過去を検証することによって、そこから導き出される、さまざまな可能性の存在を信じることである。従来通りにし ていれば同じ未来が続くだろう、という期待ではなく、今の行動によって、未来が変わっていくという現実的かつ長期的な視点である。あるべきゴールを想定し て、必要なプロセスを考えるバックキャスティング・アプローチも提唱されている。未来の社会の形は、今の私たちの行動が決めていくのである。

このように見ていくと、環境について学ぶことは、視野を広げ、多様な価値観を育むための基礎教養の土台にもなるといえる。環境経営において望まれる人材の 資質として、「環境問題に向き合って自分で考え、多角的な思考ができる」という項目があるのも、納得のいくところである。

経団連も、CSRへ取り組むための留意事項の1つに「人種問題や貧困問題への関心の高まりを受けて、グローバルな視野をもって、これらの課題に対処すること」をあげている。

環境やCSRへの取り組みそのものが、視野の拡大に役立つといえるだろう。

                             東京商工会議所より引用

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