景気回復についての難しい判断
アベノミクスの効果もあって、少しずつですがようやく景気が上向き始めた、という分析結果が出るようになってきました。
確かに、業績の回復や将来への積極的な投資などにより、投資家の評価は高まり、結果として株価に反映されるようにもなってきました。
さらに、株高による資産効果もあって、主要都市の百貨店を中心として高額品が引き続き売れ続けています。
これらの事象は事実であり、それに加えて訪日観光客の増加や特に中国人観光客の爆買いと呼ばれる派手なお金の使い方によって、観光ルートに立地する商業施設では特需も受けているのです。
ところがこうした、好景気の始まり、と報道されているほどに、私たちの暮らし向きは良くなってきたのでしょうか?昨年4月の消費税増税から立ち直ったのでしょうか?
残念ながら答えはノーと言わざるを得ません。
ちょうど先日の日経新聞の朝刊に世論調査の結果が掲載されていましたので、ご紹介したいと思います。(日本経済新聞社とテレビ東京により実施された調査です)
それによると、消費税率が8%に上がった2014年4月と比べた生活の変化を聞くと、60%が「変わらない」と答えました。
「悪くなった」は37%で、「良くなった」はわずか1%だったのです。
そして17年4月の消費税率10%への引き上げは「反対」が58%で「賛成」の31%を大きく上回っているのです。
景気回復を「実感している」は16%で「実感していない」は78%にも達しました。
確かに、アベノミクスが始まる前(2012年以前)までの超デフレ、失われた20年、と呼ばれた時代に比べれば、株価の上昇ぶりや円安基調には一定の高評価をしないといけません。
筆者が考える日本の近年での好景気のピークは2007年の7月だと考えます。実際にトヨタ自動車も過去最高水準の業績を当時は計上していますが、その時期でさえ、人々が印象として感じる景気の良さには、意外とクールなものがあったはずです。
つまるところ、近代日本においては、もはや国民の誰もが景気の良さを強く実感するような時代が到来することは今後もありえないのかもしれません。
それが上記のような世論調査の結果にも表れているのだと考えます。