得意なことを知る必要があるのは、それを活かすためではない。あるいはハードディスクがないパソコンの話
プロジェクトをやっていて、お客さん達と僕の間でずーっと見解の相違があるテーマについて、頭の整理がてら書いてみたい。
※途中でツイートの引用をしたら、うまく行かなくてアレコレやっているうちに表示されたけど、なぜか2重になってしまった。2個めは無視してください。
プロジェクトをやると、全てのお客さんから必ず「会議ごとに何を意思決定するのか、事前に知らせて欲しい」とリクエストされる。
僕らはプロジェクトファシリテーターとしてざっくりしたテーマ(今日は経理仕訳のToBeフォーマットについて議論します)は示すが、それより細かいこと(仕訳に含める原価部門はどのレベルであるべきか?)は示さない。なので「もっと細かいレベルまで、事前に知らせてくれないと困る」と言われるんだと思う。
僕らが事前に示さないのは、
・会議の直前(前日とか)まで準備をしているので、直前になるまで分からない
とか
・会議の最中、議論しながら新たな論点が出てくることがある
というのが理由で、「示さない」というよりは「示せない」。
とはいえ、そういう事情以前の問題もある。
僕自身、お客さんたちが熱心に要望するほど、それを必要と思っていない、という問題だ。
上記のように本質的に難しい上にそもそも必要と思っていないので、リソースを使ってまで要望に答えようとはしていない。(それをするくらいなら、プロジェクトにとってもっと大事なことはたくさんあるでしょ、というスタンス)
なぜ必要と思っていないかといえば、自分は全く必要としないから。
もし事前に意思決定事項を教えてもらっていたとしても、予め資料を読みこむなどの予習は絶対しないだろう。それをするには時間も勤勉さも足りない。
そして「意思決定事項をいきなり突きつけられて、その場で決める」ということも別に苦ではない。
そもそも僕は短期記憶力に難があるので、普段から会議のたびに意思決定に必要な情報をその場で集め、それをもとに意思決定している。
同僚「課題Cについて迷っているのですが」
僕「ふーん、そもそもおたくのプロジェクト、いま〇〇が終わった段階だっけ?」「このフェーズいつ終わる?」「××の資料はできている?課題Aはもう決着したんだっけ?」
⇒情報を収集している僕「だとしたら、課題Cなんかにかまけている場合じゃなくて・・」or「だとしたら、課題Cはこう考えればいいんじゃないかな?」
⇒収集した情報をもとにアドバイスしている
みたいな感じだ。このワークスタイルは、多くの仕事を同時並行的に抱えることになった15年くらいまえから始めた。
このワークスタイルは、いまから40年くらい前のパソコンに似ている。
古い話でアレだけど、当時のパソコンにはハードディスクが搭載されていなかった。
だからパソコンでゲームをするときは、ゲームのアプリそのものを毎回テープとかフロッピーディスクでパソコンのメモリにロードしていたのだ。
次のゲームを遊びたくなったら、次のゲームをロードする。メモリ上にロードされていた前のアプリは消去される。
さっき書いた僕のワークスタイルと似ていますよね。
※この下りを書いてから気づいたのだが、自分を超古いパソコンに例えるのってかなりの自虐だな・・。
このワークスタイルは、
・同時並行的に多くの仕事に関わっている
・脳みそに搭載されたハードディスクがポンコツ
・ロードされたばかりのアプリを起動させたら、すぐに使える
・毎回情報を伝える時間を使っても、お釣りが来るくらい有益なアドバイスができる
など、僕の環境や脳みそに合わせて必然的に編み出された。
で、なんでこんなことをツラツラ書いているかといえば、この手の能力や環境は完全に人それぞれで違うから、最適なワークスタイルも人によるよね、という話をしたかったのだ。
少し前に、こんなツイートをした。
ストレングスファインダー的な「自己の強みを知る」が大事だと思うのは、「自分の強みを活かせるようになろう」とかではない。そんなの意図的にできなくない?
-- 白川克「システムを作らせる技術」読んでね。 (@mshirakawa) January 5, 2023
そうじゃなくて「自分が息を吐くようにできることを他人に求めすぎない」ため。
そして
・僕はいま仕入れた情報をもとに意思決定するのが苦じゃないし、慣れている
という話と、最初に書いた
・お客さんから「何を意思決定するのか、事前に知らせて欲しい」とリクエストされる
という話を、このツイートに絡めて改めて考えてみた。
結論は「自分にとって苦もなくできることでも、他の人にとってはそうではないことは多い。毎回リクエストされるんなら、ちゃんと対応した方がいいよね」ということだ。
長く書いてきた割に結論は平凡で申し訳ない。
これほどまでに「自分では苦もなくできることは他人もそうだと思いがち」というバイアスが大きいんだと思う。
チーム全体の生産性を高める上ではとても大事な観点な気がしている。