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怪しい英単語、あるいはコンサルタントの職業病

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★「怪しい英単語を使うヤツは信頼するな」
先日「おまえの話は英単語が混ざっていて、よくわからん。日本語で言え」とお叱りを受けた。過去にも「白川さんの言葉、ルー大柴かと思いました」とか、「まずは横文字を憶えるのが大変」とか、色々と言われてきた。

僕に限ったことではなく、コンサルタントが怪しげな英単語を駆使することについては「幻惑してお客さんに契約のハンコを押させるためだ」であるとか「単なる格好付けでしょ」等々、散々な言われようである。
ただし、僕の知り合いのコンサルタントには、格好いいからとか、お客さんをだますために英語混じりのトークをしている人はいないように見える。そんなことで幻惑されて発注してしまうほど、僕らのお客さんは能天気ではない。

ではなぜ英語混じりなのか?それは単に「英単語混じり会話」がコンサルタントの職業病であり、本来根治すべきものにも関わらず、直せていないからだ。
もちろん病識がある人(自分が病気だと気づいている人)もいれば、病識がない人もいるのだが・・。

★どれが伝わる?
怪しげなコンサルティング英単語の代表例に「フィージビリティ・スタディ」があるので、これを例に考えてみよう。

A)その件につきましては、弊社がフィージビリティ・スタディをリードいたしますので、

B)その件はケンブリッジ側で、実現可能性を検証してみますので、

C)それが本当にイケるか、イケないのか、僕らが裏を取りますので、

どれも、だいたい同じ意味である。あなたのスタイルはどれに近いですか?
僕はなるべくC)で話すようにしている。そもそも、あまり躾のいい人間でもないし、なるべく相手に直接届く言葉を選びたいから。
前にセミナーでの棒読みについて書いたけれども、棒読みのアンチテーゼとして、特に講演するときはこういう話し方をする様につとめている。

おっと、
×:棒読みのアンチテーゼとして、
○:棒読み反対派の立場からは、
ですね。

でも、1:1でかしこまって話す場合はB)で話すときもある。お客さんと仲良くなった後やツイッターに書くときの様に、気を抜いている時は「フィージビリティ・スタディ」と言ってしまうこともある。
うーむ、病気である。

★なぜ、英語がろくに話せないのに英単語が混ざるか
全く威張れた話ではないのだが、僕は英語(特に会話)が苦手である。英語がうまく話せないくせに、日本語会話中に英語が混ざってしまうのは、自分でもかなり格好悪いと思う。
例えば、
「インセンティブが必要」
「タスクをアサインする」
「アンフェアかも」
などなど。

格好悪いので改めようと思っていても出てしまうのは、一種の病気である。
原因は2つ考えられる。

1)コンサルティングを学び始めたときの名残り
僕が勤めている会社、ケンブリッジは元々アメリカの会社なので、転職した頃はアメリカ本国で開発された方法論を輸入していた。「タスクをアサインする」などは、完全にそのときの名残り。
概念を丸ごと輸入しているから、言葉もくっついてきて、そのまま使っているのだ。
company⇒会社、の様にイチイチ訳していた明治の先人は偉いね。

2)コミュニケーション力不足
もちろん、そういう言葉は社内での内輪語、符丁であって、社外の方と話す時には使うべきではない。相手に伝わる言葉で話すのはコミュニケーションの基本の「き」である。
経理の方と話す時は、経理の用語で。情報システム部門と話すときはITの用語で。
同じように、「タスクをアサインする」は話す直前に「仕事を割り振る」と言い換えればいい。
でも、能力不足で、特にヤヤコシイ話や気を抜いている時は、それが追いつかないことがある。

★意図的に使う場合も
逆に、意図して英単語を使う場合もある。僕の場合だと、「スコープ フェーズ」「ファシリテーション」などなど。

例えばスコープフェーズは一般的に「要件定義」と呼ばれている工程に近いのだが、決して同じではない。そして、その「同じではない」部分こそが、僕らがプロジェクトを成功させるための鍵だと思っている。つまり、こだわりポイントなのだ。
こういう時は、申し訳ないけれども、新しい概念とセットで、新しい言葉を覚えていただく。もちろん、一所懸命、言葉の意味も説明する。

「ファシリテーション」の場合は、あまりに日本語で説明するのが難しくて、放棄してしまっている。それを説明するために、僕はお客さんと一緒に本を1冊書いたくらいだ。
先日イベントでご一緒した日本ファシリテーション協会の会長さんも「ファシリテーションとはなにか、益々分からなくなってきた」と言っていた。

とはいえ、僕はこの「ファシリテーション」という考え方/技法が本当に大事だと思っているから、初めて話す相手にはなるべく一所懸命説明する。キーワードや写真や実演を通じて。
ツイッターやブログの様に不特定多数の方に発信するときに、毎回細々説明できないのがツライ所だけれども、徐々に「何となく意味が分かる」という人が増えて欲しいと思って活動している。

さて、こういう言葉(スコープフェーズやファシリテーション)で英単語を使うのはアリ、と個人的には割り切っている。「新しい概念はカタカナで書かれている」というのは、良くも悪くも日本語に染みついているわけだし。
プロジェクトを一緒にやるお客さんは、わりとすぐになじんで、その言葉を使い始めてくれる。問題はまだお客さんになっていない、普通の人に伝わりにくいことなんだけどね。

まとめ。
怪しげなカタカナ語を駆使するのはコンサルタントの職業病である。あなたがコンサルタントならば、直すように努力しよう。コンサルタントとおつきあいする側ならば、相手のコミュニケーション能力を疑おう。
今日はここまで。

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