顧客経験価値が需要を創造する(事例ご紹介)①
富士通総研で実施した、顧客経験価値が需要を創造する事例をご紹介します。
この事例は、千葉市の市街中心部から大型商業施設が撤退したことに伴い、市中心部の集客力が落ちてしまったので、若者を呼び込み、街を活性化できないかとの依頼があり、取り組んだ事例です。
私たちは様々なアイデアを考えたのですが、千葉の街並みがアニメの舞台となっている「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」(略称:俺ガイル)を中心に据えたイベントを行うことにしました。
このイベントは、アニメを追体験できる参加型のイベントにし、複数の事業者で経験価値を創る共創型イベントへのチャンレンジです。更に、デジタルを活用することでユーザにとっての便利さを追求したことと、あとから分析できるようにすることで知見を蓄積できるように仕立てていきました。
イベントでは、第一に商店街とコラボして地元商店街をスタンプラリーで回遊するようにしました。共創していただけた商店には「俺ガイル」のグッズや本を販売して頂き、商品を購入すると参加者はスタンプを一つ貰えます。このスタンプラリーは、初回は紙ベースで行っていたのですが、お陰様でスタンプラリーも大変な人気を頂きました。そのため、何回かスタンプラリーのイベントを行ったのですが後半はブロックチェーンを使ったデジタルな仕組みにしました。
スタンプラリーとは別に千葉モノレールやロッテマリーンズともコラボレーションをしました。千葉モノレールでは、ラッピング列車を走らせただけではなく、車内でもアニメを感じられるように社内刷りやアニメキャラクター付きのつり革を制作しました。更には、記念切符の販売や声優さんによる車内アナウンス、限定グッズの販売など徹底的に「経験価値」の創出をしていきました。
驚いたのは、効果です。例えば記念切符は数千円の値付けにも関らず飛ぶように売れ、その年の千葉モノレール株式会社の決算発表資料には「俺ガイルとのコラボ列車により、年間乗車人員も順調に増加し3期連続で記録を更新」と、当初考えた以上のインパクトを残すことができました。
次に行ったのが千葉ロッテマリーンズとのコラボレーションです。中日ドラゴンズとの交流戦をイベント試合として、「俺ガイル」の主人公の「雪ノ下家主催パーティー」や実際のアニメに出てくるシーンから「ぼっちシート企画」、始球式などのイベントを組みファンを集めようとしました。
私はこの企画について、当初あまり乗り気ではありませんでした。というのもアニメを好んで読む若者たちと青空のもとで野球に汗をかく若者たちは客層が違うと思ったからです。ターゲットが違う以上、アニメ押しのポジショニングでは集客がうまくいかず、ご先方にご迷惑をかけてしまうのは目に見えています。
しかし、実際には私の懸念は杞憂でした。結果として、コラボチケットは1000席を1分で売切りました。それだけではなく、グッズの販売も盛況でした。この経験をしたときに顧客経験価値の重要性を体感しました。お客様は自分がしたい経験にお金を使うことに対して糸目を付けません。更に、余韻に浸りたいとか記念に残したいといった理由からグッズも競うように買って行きます。
一方、興行側からすると、新規顧客の呼び込みができます。既存顧客にリピート購入して頂くよりも、01(ゼロイチ)と言って、初めての顧客を呼び込む方が、数段費用が掛かります。しかし、アニメが媒介となることでプロ野球にとっての01を今までにないレベルで実現できました。こうして、相互にメリットが得られることが分かりました。
続きは執筆中です。少々お時間ください。