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顧客に提供する二つの価値

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生活者は皆様が提供される商品やサービスと「いいつきあい」をしたいと期待しています。彼らは「いいつきあい」ができるかどうか、サービスや商品を通じた経験から感じ取っていきます。人によっては商品やサービスよりも企業やブランドの持つ雰囲気によって判断する人もおられるかもしれません。あるいは知人がその会社にいるからとか地元の企業だからと言う理由かもしれません。いづれにしても人を好きになるのと同じように、心の距離が短くファンであることや好意を感じて頂けないと、何かを買おうとしたときに一番最初に思い浮かんでくるディスティネーション化はできません。

そのためにも、企業に取ってみれば、どんなつきあいができるかを明らかにすることが求められます。そうすることで、継続的に生活者のこころの中のシェアを保ち、ファンでいていただける、選んでいただける存在であり続けることが出来ます。

つきあう価値を感じて貰うためには、自社の持つ特性を磨いていく必要があります。自社の持つ特性というのは、提供する価値のことであり、他社との違いを明確にすることです。

特性を磨く

特に現代はデジタルにより進化のスピードが速いことが特徴です。いままでシステムとは無関係と思われていた農林水産業などの第三次産業ですら、デジタルの波により大きく変化しています。このように、デジタル化の影響を受けない業種はないといってもいいでしょう。

このようにテクノロジーの進化と共に、特性を磨き、進化させていかなければファンを増やしてくことはできません。あのアップルでさえ、2001年の売上の82%がパソコンでしたが、2006年には50%がipodとなり、2017年は62%がiPhoneと世の中の進化にあわせて、自らの提供する商品やサービスを進化させています。

進化するということはなにもデジタル化するという意味ではありません。特性を磨くということが不可欠な要因であり、その際にデジタルを活用するという意味です。「どう進化していくのか」を見極めるには、「どんな特性を極めるのか」について答えがなければなりません。

二つの価値

商品やサービスは大きく分けて2つの価値を提供しています。ひとつは機能的な価値であり、もうひとつは快楽的な価値です。現代は、精神的な面での豊かさを追求する時代です。従って、機能的な価値だけを提供していても、やがてはコモディティ化してしまい、価格競争に巻き込まれ利益が取れなくなってしまいます。或いは競合商品の進化に飲み込まれてしまうかもしれません。

伝統的なマーケティングでは機能面により差異化を図ってきました。しかし、コモディティ化する製品では、機能面での違いは乏しくなり、快楽面が注目されるようになってきた。例えばパソコンでは以前はCPUの性能や画面の美しさにより差異化を図ってきました。しかし、パソコンは組み立て産業であり、台湾系の企業に追いつかれてしまい、一気にコモディティ化してしまいました。価格競争に巻き込まれていないのは、独自のブランディングポジションを確立していたり、快適にゲームが楽しめるといった独自の特性が磨かれたものだけです。

それでは、機能的側面からの価値と快楽的側面からの価値がどのような特性があり、関係性があるのかを考えてみましょう。

機能的価値と情緒的価値.png

機能的な価値というのは、理性や頭に訴求する価値です。例えば、携帯電話を例にとると電話ができる、メールの受発信ができる、Webサイトを閲覧できるといった機能を活用することが出来る価値です。

一方、快楽的な価値というのは、格好良さであったりセンスの良さと言ったように、心に訴求する価値です。自分が憧れる生活(の一部)を充足できるとか、自分が貫きたいライフスタイルを表現できるといった価値です。

人は不快を嫌がり避けますし、快は心地いいものとして、受け入れます。この時に、不快を避けることと快を受け入れることでは目標が異なります。不快を避けることの目標は防衛です。従って、安心や信頼という感情が生まれやく、一方、快を受け入れることは好ましい状態へ近づくため喜びや興奮をもたらしやすいことが分かっています。

例えば、iPhoneのテレビのコマーシャルはイメージ先行型です。プライバシー保護ができる端末であることを訴求するにもおしゃれで心に訴求する仕立てになっています。Apple Musicの新CM5,000万曲で忘れられない夏に」も5,000万曲を訴求しながらも「忘れられない夏」と快楽的な価値を訴求しています。このように機能的価値に加えて快楽的価値を訴求することでユーザの「喜び」を発掘しています。

また、別の例ではAmazon Goがあります。Amazon Goは「レジがない」ことが特徴ですが、レジを通さずに決済を済ませる「驚きの」経験価値(快楽的価値)を訴求して大きな話題を生みました。一方、技術的には同じことが日本の小売業でも検討されていますが、その価値は人手不足を補うという機能的価値が主で、話題はAmazon Goに持って行かれてしまいました。同じ機能であっても、機能的価値を訴求するのか、快楽的価値を訴求するのかにより評価は大きく分かれた事例です。


このように独自の快楽的価値に磨きをかけることが機能的価値に磨きをかけることに劣らず重要です。AIの時代が到来しても、或いはAIの時代だからこそ人間の発想や感性により大きな差が出ることになります。

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