オルタナティブ・ブログ > 少しでもパラノイアになってみる >

知的好奇心を満たすために、いろいろなことにチャレンジする

Apple A6の噂

»

iPhone 5が9/13に発表され、搭載されているSoCがA6と発表されました。そのA6はAppleから正式に発表されている情報は下記になります。

・CPUは2倍速い
・GPUは2倍速い
・ダイサイズは22%小さくなっている(A5からだと思われる)

CPUとかGPUの中身を語ろうとしないのはAppleの常のことなので仕方ありませんが、気になるところではあります。そのA6に関していくつか記事になっています。

モバイルアプリの姿を変える可能性を秘めたiPhone 5の中核「A6」
iPhone 5のベンチマーク、新しいiPadの約2倍のスコアを記録
Apple A6

プロセスルールは明確には分かりませんが、たぶんSamsungの32nmでしょう。小さくなっているため、45nmはありえないため32nmか28nmのどちらかです。現時点で28nmを製造できるのはTSMCぐらいですが、そのTSMCは28nmがキャパが足りていないことを有名なため、iPhoneを満足するほど生産できるとは思えません。そうなると過去の経緯からSamsungの32nmで製造するのではないかと思われます(Samsungで作るならばGFもあるかなと思うのですが、どうでしょうか)。

GPUは普通に考えれば、A5Xと同じものではないかと思われます。そうすればA5の2倍の性能とシュリンクによる小型化でサイズは確保可能です。CPUが大幅に変わっているならば、GPUを冒険しない設計にするのは理にかなっています。

ただ、CPUに関しては今のところ不明です。後藤氏の記事でもあるとおり、3つのパターンの可能性があります。

・Cortex-A9のクアッドコア
・Cortex-A15のデュアルコア
・独自コア

現時点では製品が出荷され、解析されていないため分かりません。

私は以前Cortex-A15のデュアルコアではないかと考えていました。ただ、それだと1つ問題があります。

A6の周波数は1GHz前後と言われています。Cortex-A15/Cortex-A9の性能比は、3.5/2.5=1.4倍程度で、A5の周波数は800MHzです。このため、Cortex-A15-1GHz/Cortex-A9-800MHzの性能比は、せいぜい1.75倍です。これでは2倍に到達しないことになります。

私はCortex-A15の周波数は1.5GHzも到達できると考えていたためIPCと周波数の向上で2倍もありえると考えていましたが、周波数が1GHzならばCortex-A15でない可能性が高いです。

Cortex-A9のクアッドコアに関しては、もっと難しいと考えています。

45nmのA5のサイズは122.2平方mmで、32nmのA5は69.6平方mmです。プロセスルールが1世代進むことで57%にシュリンクできています。A5Xのダイサイズは165平方mmです。32nmにシュリンクすると94平方mmになります。A6のダイサイズは95平方mm前後が予想されています。

"第3世代iPadを分解、新型プロセッサ「A5X」と従来品の差異が明らかに"にA5Xのダイの写真がありますが、この中でCPU部分はARM Coresです。

もし、A5Xを32nmにシュリンクして、CPU部分をA5Xの2倍すると95平方mmに収まらないのではないかと思われます(A5Xはメモリバスが128bitもあったり不要な箇所はあるので、必ずしも入らないわけではないのですが)。

また、私が一番Cortex-A9のクアッドコアに関して懐疑的なのは、性能です。マルチスレッドアプリならばコア数を増やすことで性能を上げることは可能です。ですが、シングルスレッドアプリは性能は上がりません。シングルスレッドの向上は全てのアプリで体感できますが、マルチスレッドアプリの場合はアプリによります。どちらがより良いかと言われれば、やはりシングルスレッド向上の方がメリットは大きいでしょう。

このため、Cortex-A15では性能が足りなさそうですし、Cortex-A9のクアッドコアではダイサイズが足りない感じがします。

両方を解決する方式は、独自コアしかなくなります。後藤氏の記事でもP.A. Semiを買収してから4年経過しているため、独自コアの可能性もあると指摘しています。CPUの開発には4年かかると言われています。IntelがTick-Tock戦略で2年毎にCPUのアーキテクチャをリフレッシュできているのも2チーム(オレゴンチームとイスラエルチーム)があるため、1チームは4年周期でアーキテクチャしています。

また、QualcommもScorpionを2008年に出してから、2012年にKraitを出すまで4年空いています。

このため、P.A Semiチームが独自コアを設計できていても不思議ではありません。

独自コアがどのような方法で1GHzで2倍も性能を上げることができるのか分かりませんが、1つ懸念があります。それは、解析がどこまできるかです。

Appleは詳細を発表しません(もうこれは慣例です)。このため、詳細を知るためにダイを解析してきました。今までのA4、A5、A5XのCPUコアが分かったのはSamsungのものと非常に似ているためです。

もし、CPUコアを独自にされると似なくなり、キャッシュからここがCPUの部分だろう程度しか分からない可能性があります。どこまで解析が出来るのかわかりませんが、一般ユーザには詳細な情報を手に入れることが出来ないかも知れません。

ただ、もし独自コアならばAppleの野望は相当大きなことを意味しています。独自コアにすることでARMのロードマップに関係なく、性能と消費電力をコントロールすることが可能です。

有体に言えば、AシリーズをMacBook Air/ProやiMacに乗せることを視野に入れることも出来ます。周波数が低い(=消費電力が低い)のはターゲットがモバイルだからであって、周波数を上げることは可能でしょう。Cortex-A15は2.5GHzまでしか想定されていませんが、3.0GHz超えを目指して設計することも可能です。またIntelのCPUの様に大きなL2/L3キャッシュを乗せるものを作ることも可能です。

このように考えるともしA6で独自コアを搭載されることになれば、Appleが新しい野望に向かって一歩進んだことを示していると思います。

Comment(0)