人は、言われれば言われるほど、やらない
<良くある風景>
ダイニングでテレビニューアを見ててコマーシャルになったので、
「そろそろ風呂掃除でもするか」
と、立ち上がろうとしたときに、キッチンにいる妻から
「風呂掃除してよ。あんたの仕事でしょ」
などと言われると、無性に腹が立つ。そして、
「いまやろうと思ったのに、あーあ、やる気なくなった。後でやるわ」
と言ってしまう。
隣の部屋では妻が息子に言っている。
「夏休みの宿題はやくやりなさいよ」
息子はクライマックスにさしかかったテレビに夢中で聞えない。それは、まるで冬ソナにはまっていたときの妻のようだ。 テレビにのめり込んで何も聞えないだ。
「聞えないの!?すぐやんなさいって」
「え、何?」
「何回言わせるの、宿題やりなさいって」
「もうやったよ」
とむくれた口調で言う息子。
ここでよせばいいのに、私は妻に一言。
「宿題しなくて困るのは自分なんだから、ほっといてあげれば?」
そして息子に助け舟。
「おい、風呂入ろう。俺たちシャワーでいいから。シャワー浴びながら風呂掃除しようぜ。」
<妻の視点>
妻からすると、夕方に買い物行って、早朝に干した洗濯を取り込んだところで、6時頃みんなが帰ってきて、
「え~まだご飯出来てないの~お腹すいてるのに~。早くなんか作って~」
と言われ、5人分の料理を作り食べさせて、食事が終わったら食器を洗って、
次に5人分の洗濯の山を仕分けしながら、たたまなくてならない状況で、
二人の男子は、テレビで大笑いたり、くつろいだりしているのだから「なんかやれよ」と思うのも無理は無い。 かといって、料理や洗い物を、子どもや旦那にさせたいとは思わない。
自分が自由に好きに、きれいに使っている聖域だからだ。
<仕事上でのコミュニケーションを良くするポイント>
実は似たような会話は、会社でも行われている。
「提案書は作ったのか?」
「日報は書けよ」
「ちゃんとCRMをアップデートしたか?」
などの上司からの指摘から始まるものである。
家庭に比べると上下関係があり、ガバナンスがきくので、強制的にやらせることが出来るが、
言われた方は不満が残る。
「報告書書いたからって、売上げが増えるわけじゃないだろうが」
とTwitterでつぶやきたくなる気持ちもわからないではない。
さて、これらからコミュニケーションのポイントが見えてくる。
・人は誰でも他人から指示、指摘をされると、やりたくなくなる
・指摘した相手の見ている前で、すぐにはやることに屈辱を感じる
という二つの感情である。
例えば、私が妻に
「そろそろ、洗濯物たためば」
と言うと、120%の確率で怒って、やらなくなるだろう。
逆の視点からとらえると
「指示、指摘をせずに、見てないところで後からやる自由を与えれば、動く」
ということである。 たとえば、妻の場合、私に、
「8時頃にウオーキングから帰ってきて、お風呂に入るからよろしくね」
と言い、息子には、コマーシャルのタイミングで
「宿題、週末なら手伝えるから言ってね」
と言っておくと、お互いに気持ちよく動ける。
また、私や子供たちはお腹が空いているのに、ご飯が出来ていなければ、
「今日は部活大変だったからお腹すいた~。先週のパスタおいしかったよね~」
と言うのである。
社員がやりがいを持って、気持ちよく仕事が出来、かつ自律した個人を作り上げ、チームの力を高めるための、基本的なリーダーシップ&コミュニケーションスタイルとして、
「GEM」
があるが、これらを家庭で使うことで非常にスムーズになる。
これらのスタイルの基本は以下である。
・最終ゴールを明確にしお互いに合意する
・自由裁量の範囲(条件)を極力広く設定して、時間と行動の自由を与える
・ゴールに達成できた時に得られるものが大きい
・ゴールを達成できなかった時には指示した人からの罰則でなく、結果そのものが代償となる
家庭では、
・直ぐにやらせるのではなく、期限だけ設定してその範囲内でいつやっても良い
・親の目の前でやらせるという屈辱を与えない
・やらなかった代償は、親が与えるのではなく、先生に怒られる、学校でかっこ悪いなど結果から代償をうける
という形である。
次回、時間があるときに、GEMについても紹介したい。