フィルタリングは子どもを守らない!?
<フィルタリングは、ネットのいじめからは、子どもを守らない>
子どもに正しくフィルタリングの活用を教えたいという先生からの依頼で、フィルタリングに関する教材、ビデオ、テストなどを集めていたら、フィルタリングの概要から仕組み、ネットの危険性が非常にわかりやすく整理され、紹介されているサイトを見つけた。
InterSafe http://intersafe.jp/personal/08.html
お父さんや子ども向けに非常によく考えて作られているコンテンツが良く整理して提供されているサイトで、リンク先も含め非常に役に立つと感じた。
しかし、フィルタリングの効果を訴求する、ビデオが、何度見ても、どうしても納得できなかった。 このビデオのシチュエーションでは、フィルタリングは子どもを守らないのだ。
携帯電話で安心ネットライフ ~子どもの見ているサイトを知っていますか?~
上記のビデオだけが、腑に落ちない。
流れは以下のようになっている。
・あるとき、女の子の顔とエッチ画像の合成写真が、どこかの掲示板に掲載された
(修学旅行や友達と遊びに行ったときなどに友達がとった写真とワイセツな写真を合成したものと思われる。)
・その写真の子どもの兄弟が、その掲示板にアクセスしたことで、その写真の存在がわかり、母親に話す。
・母親は「フィルタリングをかければ見えなくなる」と言って、その子の携帯電話にフィルタリングを設定。
・そのサイトに貼られた写真の削除依頼や通報はしないで、そのままにしておく。
・「これで安心だと」家族が言う。
これで何が解決したのだろう。 これで安心してはいけない。何も解決してないからだ。
これでは「裸の王様」だ。
いや、裸の王様であれば、本人の耳に入らないからいいだろう。
この場合、
学校裏サイトの掲示板かプロフ(自己紹介サイトのゲストブック)には掲載され続け、そのワイセツな写真との合成写真は子どもの友達や多くの人たちからは見えたままになっているので、いずれ、友達から写真のことで、からかわれるだろう。
この写真をダウンロードして親切にメールで送ってくれる友達もいるかもしれない。
不快だから本人が、自らの意思で、「誹謗中傷記事や写真を見ない」と決意しているのなら、この使い方もあるだろう。 私も、「私が【2ちゃんねる】を見ない3つの理由」で書いたように、見ないサイトがある。
また、そもそも、兄弟の携帯電話にフィルタリングをかけていなかったからこそ、この件がわかったことからも、「このケースに限っては」フィルタリングの効果が無いことが明らかだ。
事前にフィルタリングをかけていたとしても同様だ。
フィルタリングで目隠ししても、自分以外の皆から、それらのコメントや合成写真が見られる状態なのであれば、現実の友達からの言葉や行動がこの女の子を傷つけるはずだ。
「自分の写真をプロフなどに自分がアップして、それが、再利用されたので、アクセスできなくなれば、写真も貼れない」
という意見もあるかもしれないが、
・フィルタリングにひっかからない健全なサイトに写真をアップすれば結果は同じ
・そもそも、フィルタリングでなく、「自分の写真をネット上で公開しない」が対策
であるはずだ。
フィルタリングは違法・有害情報に子どもが誤ってアクセスしてしまうことを防止する目的では極めて有効なものだ。
・ 違法サイトに子どもが行くことで、個人情報が漏れたり詐欺に会ったりすることを防ぐ
・ 子どもがネットで、悪意のある人と接触する可能性を減らす
・ 極端に性欲をあおり、自殺へのきっかけを作り、犯罪を誘発させるなどの「違法・有害サイトやコンテンツ」へアクセスしないことで、トラブルに巻き込まれることや、加害者になる機会を減らす
という面では極めて効果的であり、これが子どもに(大人でも)フィルタリングをかけさせる目的だ。
「フィルタリングを書ければ、誹謗中傷や合成写真を張られる、成りすましの心配がなくなって安心」
と、子どもやお父さん、お母さんに教えるのは少々危険のではないか。
<それでもフィルタリングは効果がある>
少し話は変るが、フィルタリングに関しては、残念ながら、と言うか、幸いにも、最近、フィルタリングは、一定の成果が出てきているようだ。
特に携帯電話(ケータイ)専用サイトに関してだ。
以前は誹謗中傷だらけだった、ケータイ用掲示板サイト、コミュニティの、誹謗中傷記事は目に見て減少し、健全になってきている。
長期で見た場合には、社会全体でのフィルタリングの役割、効果は非常に大きいものがあったようだ。
フィルタリングは「子どもを相手にしたネットワークサービス業界の健全化」を促進しているのだ。
①子どもたちがフィルタリングをかけることで、フィルタリング対象のサイトへのアクセス減少
②掲示板やコンテンツ提供している業者は、フィルタリングの対象外になるために、健全化の努力を開始 (違法・有害コンテンツ、誹謗中傷コメントの削除など)
という形で浄化されてきている。
これらの誹謗中傷コメントなどを探し出すサービスを行う業者も登場し、おおいに活躍している。
実は、私は「子どもへの強制的なフィルタリング適用」に反対だった。しかし、考えが浅かったようだ。私の負けです。正しかったと言わざる終えない。
しかし、それでも、自治体による「携帯電話を子どもに持たせない運動」には反対だ。
それは親子の関係の中で決めていくべきものだからだ。