ソーシャルネットワークの最新研究成果(アンカートラックバックとアクティビティ・スレッド表示)
先日、企業SNS,ブログで人の関係を可視化するソリューションを紹介したが、あらたにIBMのソーシャルネットワーク研究コミュニティ内(KM研究コミュニティとも一部重複)で行われた成果発表を聞いたので、公開の許可が得られているもの(USのカンファレンスなどで公開済)を順次ご紹介したい。
今回はアンカートラックバック(仮称)とアクティビティ・スレッド表示(一般名称)を簡単に紹介する。 それぞれの機能(規格)が生まれた背景と活用例に関しても説明があったが、文書量の関係から今回は割愛する。
①アンカートラックバック(アンカーリンク)
これは、リンクとトラックバックのメリットを組み合わせたようなものだ。
・自分のページにどこからリンクが張られているか知りたい
・自分の文書からどこにトラックバックしているかを表示したい
・Webページ(文書)単位ではなく、リンク先もリンク元も文字列単位でリンク/トラックバックを送信、表示したい
・ブログの投稿だけでなく、日々利用するメール、チャット、オフィス文書、プロセス(承認時のやり取り)も関連付けて利用したい
というニーズに対応したものだ。
これをブログの文書だけでなく、様々なWebページ、電子メールの文章、チャットの保存履歴、NotesDB、オフィス文書(ワープロ、表計算、プロジェクト管理など)、ワークフローのフォーム、に対応させることで、Contextualにコラボレーション、ナレッジマネジメントが推進できるものと期待している。
<一般的なリンクの特性>
文書中の任意の文字列に、関係するWebページのURLを付けるもの。特長は以下である。
・文章の文字列単位に、文章の作成者が自由に付けられる。
・文書を読んだ人は、それぞれの文字列に関係するページに飛べる。
・リンク先の文書を呼んでいる人には、どこからリンクを張られているかは、わからない。
<一般的なトラックバックの特性>
任意のWebページ(主にブログの投稿文書全体)に、自分が書いた文書が関係していることを一覧形式で表示してもらうもの。
・リンクのように文字列単位ではなく、文書(ページ)単位でのリンクである
・自分の文書にリンクをつけるのではなく、他人の文書(ページ)に自分のページのリンクをつけさせられる。(一般に相手の承認が必要)
・トラックバックを送った先の文章を読んでいる方には、トラックバック送信元の文章はわかるが、トラックバックを送った元文書を読んでいる方には、どこにトラックバックを送っているかがわからないのが一般的。
<アンカートラックバック(仮称)とは>
文書中の任意の”文字列または文章中の範囲”(XMLのタグ単位)から、関係ある別な文書の”文字列”に対してリンクを付けられる。 リンクを付けられた側には「アンカートラックバック」として送信されるものだ。
・アンカートラックバックを送った側の文章にはアンカーリンク(文書単位のリンク)または、アンカートラックバックとして表示される。
・アンカートラックバックを受け取った相手が、トラックバックを承認しなかった場合は、トラックバック送信元ではリンク扱いになり、相手が承認した場合はトラックバック扱いとなるのだ。
・トラックバックを承認した場合には、トラック送信元に付けられたタグも「関連タグ」「Small タグ」として自分の文書に取り込まれる。
実際にパイロットで利用してみたが、非常に面白い。 画面を紹介できないのが残念だが、マイクロソフト ワードの「変更履歴表示」のイメージに近い。
ちなみに、このような機能を利用し始めると、トラックバックの承認、削除作業に追われるため、承認を自動化するためのルール、新しい概念のブラック・ホワイトリストも試行されているようだ。
②アクティビティ・スレッド表示
見ている文章に対する関連文書、ページ、メール、チャットなどををディスカッション形式で一覧表示するものだ。
例えば、あるブログの投稿を見ているときに、この投稿へのコメント、この投稿にリンクを張っている他の投稿、トラックバックを送ってきた他のブログの投稿、自分がこのブログのリンクを張って送ったメール、そのメールへの返信メール、この投稿に関して行われたチャット、この投稿に関するSNSのメッセージ、この投稿にリンクを張っているNotesDBの文書などが階層型の一覧で表示される。
時間の関係で詳細は別途紹介するが、NotesのディスカッションDBの一覧表示をイメージしていただけると良いだろう。 NotesのディスカッションDBではNotes文書だけが並ぶが、このスレッド表示では、メール、チャット、ブログの文書、メッセージ、オフィス製品のファイル、PDFファイル、XML Formなど異なる媒体が関連付けて表示され、さらに、それぞれでの関係者も表示されるようになっている。
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これらは、機能としては極めてシンプルであるから、製品機能に入れていくことは極めて簡単だが、これらをエンドユーザーが有効に利用するためには、オープンソース団体などと協力してスタンダードあるいはDefact Standardにしていくことが重要だ。
IBMに限らず、様々な製品(オープンソース含む)に組み込まれて気軽に利用できるようになる日を楽しみにして待ちたい。