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OSの時代は終わった? Webブラウザの裏で進む、次の「当たり前」を考える

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あなたの「仕事の土台」は、いつまで安泰か

私たちが毎日、当たり前のように使っているパソコン。その土台にはかつて「OS(オペレーティング・システム)」という絶対的な王様がいました。奇しくも私たちが「ITソリューション塾」を開講した2009年、Windows 7が登場し、当時は誰もがその存在を意識していました。

しかし、それから16年が経ち、いま、OSの存在感を以前ほど意識する人は少なくなったのではないでしょうか。その裏で、私たちの仕事の「本当の土台」は、確実に移り変わってきました。その主役こそ、あなたが今まさにこの記事を読むために使っている「Webブラウザ」です。

Google Chromeが変えた「ゲームのルール」

この地殻変動のきっかけは、2008年に登場したGoogle Chromeでした。

当時、Webブラウザの世界はInternet Explorer(IE)が支配していました。Web上でアプリケーションを動かす試みはあったものの、動作は遅く、「しょせんWebはWeb」という認識が一般的でした。

しかし、Googleは諦めませんでした。GoogleマップやGoogleドキュメントで革新的な体験を生み出した「Ajax(Asynchronous JavaScript + XML)」という技術を武器に、Webアプリケーションの可能性を追求します。それでも、当時の支配者だったIE(Microsoft Internet Explorer)の性能の壁が、その進化を阻んでいました。なぜなら、もしWebブラウザが高性能化し、誰もがWeb上で快適に作業できる世界が来れば、自社の収益の柱であるOSやOffice製品が売れなくなるからです。盤石な帝国を築いていたマイクロソフトにとって、それは自らのビジネスの根幹を揺るがしかねない、受け入れがたい未来だったのです。

この状況を打ち破るために、Googleが自ら開発したのがChromeです。リリース直後に触れたときの衝撃は、今でも忘れられません。まるでデスクトップアプリのように、Webが「サクッと」動いたのです。

結果はご存じの通り。現在、Webブラウザのシェアの7割はChromeが占め、かつての王者IE(現在のEdge、シェアは15%)も、その心臓部にはChromeと同じ技術を採用しています。まさに、Webブラウザの世界はChromeによって再定義されたのです。

「+AI」から「AI+」へ。再び変わるゲームのルール

そして今、Chromeは生成AI「Gemini」との統合を進め、Webブラウザは新たな進化の局面を迎えています。これは単なる機能追加ではありません。私たちの働き方そのものを根底から変える、大きな変化の始まりです。

例えば、Web会議をしながら、AIがリアルタイムで議事録を作成し、決定事項と担当者をリストアップしてくれる。リサーチを始めれば、開いている複数のタブの内容をAIが横断的に理解し、要約レポートを自動で作成してくれる。営業担当者が「今日の訪問先に関する最新ニュースをまとめて、提案の切り口を3つ考えて」と指示すれば、AIが即座にアウトプットを返してくれる。これらはもはや、私たちがアプリケーションを「操作」するのとは次元が異なります。目的を伝えるだけで、AIが自律的にタスクを遂行する世界です。

最近発売された書籍『生成AI時代の価値のつくりかた』に、「+AIからAI+へ」という印象的な言葉がありました。これは、「AIをどう使うか」というツールとしての視点ではなく、「AIによって世界がどう変わるか」という前提から発想することの重要性を示しています。

既存の業務をAIで効率化する「+AI」の発想だけでは、いずれ限界が来るでしょう。本当に問われているのは、AIがあることを前提に、全く新しいビジネスや仕事のやり方を創造する「AI+」の発想ができるかどうかです。

Webブラウザさえも「過去の遺物」になる未来

この大きな変化の中で、Webブラウザの重要性はますます高まっていくでしょう。しかし、それすらも過渡期の姿かもしれません。

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遠くない未来、私たちはWebブラウザを立ち上げ、アプリケーションを操作することさえしなくなる可能性があります。その代わりに登場するのが「AIエージェント」です。

「来週の大阪出張の最適なプランを立てて」とAIエージェントに伝えれば、交通手段やホテルの予約、スケジュールの調整まで、すべてを自律的に計画・実行し、結果だけを返してくれる。そんな世界が訪れようとしています。

そうなれば、人間が操作するためのUI(ユーザーインターフェース)は意味をなさなくなり、アプリケーションはAIエージェントにとって最適なインターフェースを考える必要が出てきます。Webブラウザという概念すら、過去の遺物になっているかもしれません。

大きな波を見失わないために

ここまで、Webブラウザを軸にITの大きな物語の一端をお話ししました。もちろん、これは巨大なトレンドのほんの断片にすぎません。しかし、こうした一つひとつのトレンドの波が重なり合い、干渉しながら、私たちの想像を超える大きなうねりを生み出していくのです。

目先の新しい技術やツールを追いかけるだけでは、この大きなうねりの中で自分がどこにいるのかを見失ってしまいます。大切なのは、少し引いた視点から全体像を俯瞰し、変化の潮流を読み解く「地図」を持つことではないでしょうか。

10月8日より開講する「ITソリューション塾・第50期」では、まさにそのような視点を提供したいと考えています。もし、あなたがこの変化の激しい時代を生き抜くための「地図」を手に入れたいと感じたなら、ぜひ一度、私たちの扉を叩いてみてください。

次期「ITソリューション塾・第50」は、108日(水)より開講します。

未来を見通すための学びの場で、皆様とお会いできることを楽しみにしています。

次のような皆さんには、お役に立つはずです。

SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん

・ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん

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