質問力=知的好奇心×言語力
人間が、AIを味方に付けるのか、AIに支配されるのかは、「質問力」の有無にかかっていると昨日のブログに書きました。では、「質問力」とは何かについて、考えてみましょう。
そもそも、「質問力」と「質問する能力」とは同義ではありません。例えば、講義や講演、授業の中で、「質問する」のは、「質問する能力」があるということです。他人が見ている、あるいは、聞いている中で、あえて手を挙げて質問することに抵抗を感じる人は少なくありません。それは、「"まともな質問"をしなくてはいけない」という意識や「自分に対する他人からの評価が気になる」などの理由から、例え質問したいことがあっても、質問することとに抵抗を感じるからです。このような心の抵抗を乗り越えてでも、「質問する」のは、ひとつの能力です。
「質問力」とは、このような心の抵抗を乗り越えてでも何とでも知りたいという「知的好奇心」が、この能力の源泉です。
「知的好奇心」とは、さまざまなものごとやできごとを「知りたい」と思う衝動や「知識や理解を深めたい」という意欲のことです。
本来このような知的好奇心は、子どもの頃に養われるもので、多くの子どもは、この能力を生得的に持っています。例えば、子どもたちの行動を見ていると、次のような行動を目にすることがあります。
- 興味のあるものをじっと見る
- 興味のあるものに近寄ろうとする
- 「どうして?」や「なんで?」を連発する
このような知的好奇心は、子どもの知的成長を育む原動力です。そして、知的成長によって、社会に適応するための次のような能力を高めることができます。
- 行動力:自分で理解を深めたいという探求心が生まれるため、自ら積極的に行動する力が身につきます。例えば、大人でも難しいと感じられることでも、知的好奇心が原動力となり、図書館へ参考書を探しに行く、インターネットで調べる、実際にやってみるなどを自発的に行うようになります。
- 学習能力:自分が知らないことを知りたいという気持ちが高まれば、「知る」ことができたと時の喜びはひとしおです。「学ぶこと」が楽しくなり、とことん調べ解決することで得られる喜びやひらめきが、「もっと学びたい」という意欲を書き立て、さらに知的好奇心を高めます。学ぶことが、日常の一部となり、知的成長を自律的に育むサイクルが身体の一部に埋め込まれていきます。
- 客観力:知識の裾野が広がることで、自分やまわり、世の中を見る視野が広がります。自分には知らないことがまだたくさんあること、自分が決して世界の中心ではないことを知り、他者との関わりの中で、自分が相対的な存在であることを知るようになります。感情や主観にとらわれず、冷静かつ客観的に、物事を捉える能力が磨かれます。
このような知的好奇心があればこそ、質問したいという衝動や意欲が生まれます。ただ、それだけでは、大人の「質問力」にはなりません。「興味のあるものをじっと見る、興味のあるものに近寄ろうとする、"どうして?"や"なんで?"を連発する」という言葉が稚拙な子どもレベルに留まっている限り、大人の社会では通用しません。このような「知的好奇心」に「言語力」が加わって、大人の「質問力」となります。
「言語力」とは、「考えていることを文章で表現する能力」です。例えば、「考えていること」を単語の羅列や箇条書きにすることは簡便ですが、言葉の要素や概念のあいだに「論理」をつくれません。論理なき言葉の羅列では、ものごとの本質を整理して捉えることができません。文章にすると、自分の理解の度合い、つまり論理を伴う理解の程度が「見える化」されます。これによって、自分の理解の度合いが客観視され、何を知らないのか、何を知るべきなのかも「見える化」されます。
ここからも分かるように「言語力」とは、次の3つの能力のことです。
- 知りたいことや解決したいことを言葉にして、第三者(講師や生成AI)に伝える能力
- 自分の捉えた世界を客観的かつ論理的に整理する能力
- 自分の知らないこと、あるいは、何を知らないのか、何を知るべきなのかを「見える化」する能力
これまでのことを整理すると次のようになります。
質問力=知的好奇心×言語力
「質問する能力」は「質問力」を磨けば自ずと高まる能力です。知的好奇心がまわりを意識する心の抵抗を越えるほどの高まりを持ち、これに加えて言葉にして伝える能力が高まれば、それに自信が加わって、質問することへの抵抗を凌駕してしまうことになるからです。
「知的好奇心」のかなりの部分は、子どもの頃にどのように育てられたかに大きく依存します。ただ、「知的好奇心」が、社会人として大切な能力であることを意識して、学びの機会を絶やさない努力をすることで、補える部分は大きいと思います。
また、「言語力」は、「文章化」する習慣を身につけることだと思います。頭の中に思いついたことを、言葉で表現すること、さらには、これを絵や図表にして、それをまた文章にすること。そんな繰り返しによって能力は磨かれます。
「AIにどう対処するか」以前の話しとして、人間ならではの「質問力」を磨くことは、AI時代を生き抜く上でとても大切なことなのです。
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