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「ウソをウソと感じさせない能力」こそがLLMの危険性

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ChatGPTに人生について相談してみました。

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涙が出るほどありがたいアドバイスです。この言葉を励みに、前向きに生きていこうと思います。

さらに、私の仕事に関わることを質問してみました。

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なるほどと感心します。しかし、このままでは、近い将来、ITトレンドに関する講義は、ChatGPTが、代わりにやってくれるかも知れません。動画生成AIと組み合わせれば、そのうち講師もやってくれるようになり、そうなれば人間である私の出る幕はなくなります。その時はまた、その後の人生について、ChatGPTに相談してみようと思います。

考えてみれば、意味や一般常識、文法などとは無関係に、言葉の出現確率に基づく言葉のつなぎ合わせだけで、これだけ流暢な表現を実現するというのは、驚くべきことです。

さて、次の文章は、2022年の東京大学の世界史の試験問題で、これをChatGPTで解かせてみました。これをやってみたのは、国立情報学研究所・社会共有知研究センター長・教授 新井紀子氏です。

8世紀から19世紀までの時期におけるトルキスタンの歴史的展開について記述せよ。ただし、次のキーワードを使うこと。アンカラの戦い、カラハン朝、乾隆帝、宋、トルコ=イスラーム文化、バーブル、ブハラ・ヒヴァ両ハン国、ホラズム朝」

ChatGPTは、この問題について、次のように回答しました。

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なんと素晴らしい文章でしょうか。私のような世界史の常識に疎い人間にとっては、「なるほど、そういうことなのか、流石ChatGPT!」と感心します。

この回答を新井紀子氏が、世界史の先生に採点してもらったところ、「0点」だったそうです。「部分点を与えられる箇所がまったくないので驚いた」とのことでした。

ChatGPTをはじめとしたLLMの危険性は、まさにこの点にあるのだと、指摘されています。つまり、例え、回答が間違っていたとしても、その流暢な言葉遣いに、「なるほど」と納得してしまう人も多いということです。

この危険性の構図は、LLMだけのことではありません。SNSやネットに、フェイク・ニュースや根拠のない陰謀論が、流暢な文章表現で、もっともらしい根拠とともに流布されています。それらを疑うことなく信じている人たちが、沢山いるという現実です。

昨日のブログでも指摘しましたが、人間は結局のところ「言葉」に支配されているということなのでしょう。私たちは、言葉によって情報を得て、これを自分の知識の構造に言葉として組み入れています。言葉のつながりが論理的であり、ありがちな言葉のつながりがあれば、「違和感」という心理的抵抗を受けずに、すんなりと入り込んできます。

もし、この時に「意味」や「常識」を持っていれば、これが強力な違和感になって、受け入れを拒否するのでしょう。しかし、上記の「世界史の回答」のように、「意味」や「常識」がない者にとっては、これを「正しい」あるいは「正しそう」と受け入れてしまうわけです。そんな、「ウソをウソと感じさせない能力」こそが、LLMの危険性というわけです。

この危険性を回避するには、「安易に鵜呑みにしない」という、ありきたりの答えに行き着いてしまいます。これは、フェイク・ニュースや陰謀論についてもいえることで、結局のところ解決できない問題なのかも知れません。そうなると、人間側が知識を積み上げ、知性を磨く以外にないという、これまたありきたりの答えになるわけです。

ただ、これを別の視点で考えてみると、LLMをはじめとした生成AIの発展に右往左往して、危機だ、危険だと大騒ぎすることもないのだということになります。昔から言われていたこと、例えば、本を読みなさい、学び続けなさい、知識を積み上げ、知性を磨きなさいというという歴史的な規範に従って、粛々とやり続ければいいと言うことなのでしょう。

AI効果(AI effect)」と言う言葉があります。AIの技術が浸透し、一般に広く受け入れられて、日常的に使われるようなると、もはやそれを「AI」とは呼ばれなくなる現象のことです。これは、AIだけのことではなく、かつて大騒ぎした「Big Data」もそうですし、そろそろ旬の時期を過ぎた「DX」も同様の運命をたどるのだと思います。当たり前になってしまえば、そんなことは、意識しなくなるということです。そして、それなりに使いこなしてしまうわけです。

ChatGPTが登場したのは、2022年の11月であり、1年も経っていないわけですし、DALL-E2Stable Diffusionなどの画像生成AIもこれほど注目されるようになったのは、ここ1年ほどに過ぎません。まだまだ当たり前でもなければ、常識にもなっていないので、AI効果が働いていないというわけです。

私たちは、いまこんな時期にいるのだという自覚こそが、この現実を冷静に受け止め、ここに述べたような危険性を回避する方法を見出すうえで、大切になるのでしょう。

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【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

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  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
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  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
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神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。

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