【図解】コレ1枚でわかるDXを支えるテクノロジートライアングル 2/2
前回に続き、DXとテクノロジーの完成について解説を続けます。
IoTは、モノやモバイル機器に組み込まれたセンサーで、現実世界のアナログな「ものごと」や「できごと」をデータに変換して、ネットに送り出す仕組みです。現実世界のデジタル・コピーである「デジタル・ツイン」を作る仕組みとも言えます。また、機器の自律化や自動化も、IoTに位置付けられます。
そのデジタル・ツインを解析し、これから起こることの予測や最適解を見つけるのが、AI/機械学習の役割です。
そこで導かれた最適解を使いビジネスの最適化を図る仕組みは、計算能力やデータの保管容量に制約がなく、必要な機能や性能を俊敏に調達できるクラウドの上で動かします。
そんなクラウドは、計算処理やデータ保管のための手段に留まらず、次のような役割も担います。
- システムの構築や運用など、重要ではあるけれど、ビジネスとしての付加価値を生みださない手間や負担を軽減すること
- システムを資産として「所有する」から、経費として「使用する」へと変え、コンピューティング資源、すなわち計算能力やデータ容量、業務機能などを変化に俊敏に対応できるようにすること
- 他のクラウド・サービスと連係し、単独では生みだすことのできないビジネス価値を実現すること
このようなクラウドは、「圧倒的スピード」を手に入れる有効な手段となります。
これらを効率よくつなぎ、お互いを連携させるのが5Gです。また、ケーブルによる物理的接続やWiFiなどのような場所の制約を受ける接続から解放され、大容量で高速なデータのやり取りができることも大きな魅力です。
さらには、この一連の取り組みを当たり前として行動する習慣を組織に根付かせなくてはなりません。ここで大切になるのが組織の「心理的安全性」です。「対人関係においてリスクのある発言や行動をしてもこのチームでは安全である」という、メンバー全員に共有された信念のことです。単なる仲良しクラブではありません。自分の確固たる主張や意見を持ち、それをお互いにぶつけ合うことができるプロフェッショナルとしての信頼があり、お互いに相手の多様性を認め、敬意を払い、建設的な意見を交わせる人間関係のことです。
組織の全てのメンバーが「心理的安全性」に支えられ、自律的に仕事に取り組み、多様な考えを許容できるからこそ、圧倒的なスピードが生まれるのです。
そんな組織で働く人たちは、自律的、自発的に改善して、より付加価値の高い仕事へと時間も意識もシフトするでしょう。また、徹底して議論を交わし、失敗を繰り返しながらも高速で試行錯誤を繰り返すことが許容される雰囲気の中であればこそ、「新規事業」がどんどんと生みだされます。
さらには、ビジネスの最前線にいる人たちが、環境の変化を敏感に感じ取り、主体的にビジネス・モデルを転換していくことができるようにもなります。
「高速に変化し続けることができるビジネス基盤」を実現することです。そのためには、デジタル技術を使うだけではなく、このような「心理的安全性」に支えられた組織の文化や風土へと変革することも欠かせません。
2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー