【図解】コレ1枚でわかる大きく変わってしまった競争原理
昨日のブログで述べた、「デジタルが前提の社会に適応する」ことについて、もう少し掘り下げておきましょう。
あらゆるものがネットにつながる時代になりました。それは、コンピューターやスマートフォンだけではありません。自動車や家電製品、建物や設備など、あらゆるものが、ネットにつながっています。スマートウォッチを腕にはめれば、それを介して、私たちの身体までつながってしまいます。
現実世界のあらゆる「ものごと」や「できごと」が、リアルタイムにデータとして把握できる時代になったわけです。「現実世界のデジタル・コピー」が、リアルタイムに生みだされ、ネットに送り出される時代になったと言い換えることもできます。この「現実世界のデジタル・コピー」のことを、「デジタルな双子の兄弟」という意味で、「デジタル・ツイン(Digital Twin)」と呼んでいます。
例えば、自動車を運転するとしましょう。自動車メーカーは、その自動車に不具合はないか、どのような運転の仕方をしているのか、どんな操作に手間取っているのかなどを、ネットを介してデータとして手に入れることができます。運転手に話しを聞かなくても、分かってしまいます。
不具合が見つかれば、運転手やオーナーにそれを知らせ、GPSのデータからその自動車の位置を知り、近くのサービス・ステーションに立ち寄るように案内することができます。やがては、自動運転に切り替えて、サービス・ステーションに向かわせることもできるようになるでしょう。
そのクルマの運転手のクセを把握して、安全で省エネな運転をするためのアドバイスを音声で知らせることもできます。あるいは、ミスの多い操作、手間のかかる操作を見つけ、改善策を見つけ、クルマの操作を制御するソフトウエアを改修して、ネットを介してアップデートすることもできます。
このような自動車は、スマートフォンやパソコンと同様に、「ネットにつながるコンピューター」です。コンピューターは、ソフトウェアによっていろいろな機能を実現します。自動車もまた同じで、ソフトウェアによって、その機能や操作性を実現しています。もちろん、人を乗せて走るためのハードウェアは必要ですが、いまの自動車は、ソフトウエアが機能や操作性を実現するのに大きな役割を果たしています。
自動車のデジタル・ツインは、自動車の走行や操作に関わるあらゆるデータの集積です。それを分析すれば、もっと快適・安全・省エネに自動車に乗るためには、どの機能を改善すればいいかが分かります。これに基づきソフトウエアを改修し、ネットを介してアップデートすることで、あなたの自動車は、購入した後でも、あなたに合わせて、さらに快適な乗り物に進化します。
ソフトウェアをアップデートすることで、「運転がしやすくなった」、「安全性が高まった」、「燃費が良くなった」などの運転者の体験が向上すれば、「この自動車に、乗り続けたい」あるいは、「買い換えるときには、また同じメーカーのクルマを買おう」となるでしょう。こんな利用者の体験を「UX(User eXperience)」と呼び、これを向上させ続けることが、ビジネス成功の要件となります。
一昔前ならば、そんなことは夢物語でした。しかし、あらゆるモノがネットにつながることで、デジタル・ツインを手に入れ、お客様ごとに最適化されたUXを実現し、向上させ続けることができるようになったのです。
ビジネスの価値=
ネット接続 × ソフトウェアによる機能の実装 × 高速にアップデートを繰り返すことができる能力
ビジネスの価値はUXで決まる時代を迎えたのです。そうなると、魅力的なハードウェアを作るだけではなく、「ネットにつながる」や「ソフトウェアで機能や操作性を実現する」といった仕組みを土台に、「ソフトウェアをアップデートしてUXを向上させ続ける能力」が、ビジネスの成否を決めることになります。
スマートフォンやWebのサービスでは、このような仕組みは、既に常識となっています。これをモノのビジネスにまで拡げてゆこうとの動きが、広がりつつあります。これを「モノのサービス化」と呼びます。
「ビジネスの主役がモノからサービスへ」と大きく移ろうとしています。その土台は、ネット、コンピューター、ソフトウエアなどのデジタルです。これに対処することが、事業の存続や成長には、欠かせなくなりました。
「デジタルが前提の社会に、企業が適応する」
それができるかできないかが、企業の競争力を左右する時代になったのです。
高品質のモノ(ハードウェア)をリーズナブルな金額で提供するだけでは、もはや企業の競争力を維持することはできません。顧客の状況をいち早くデータで捉え、高速にUXを改善、向上させ続けることが、競争優位を維持する重要な要件となったのです。
これは、「ビジネスの前提が変わった」ということであり、過去の経験に基づく「成功の方程式」は、通用しないということでもあります。顧客が期待する、あるいは求める価値も変わってしまったのです。また、これまでのやり方ではコストがかかりすぎる、市場規模が小さくてビジネスにならないといった過去の経験に基づく「想定」や「思いこみ」も捨てるべきです。
この状況に対処しようと、既存の「成功の方程式」を改善してもうまくいきません。デジタルを前提に、これまで誰もやらなかったやり方で、新しい「成功の方程式」を生みださなくてはなりません。そんな「イノベーション」もまた、新しい競争原理に対処するには、避けることはできません。
次期・ITソリューション塾・第41期(2022年10月5日 開講)の募集を始めました。
DX疲れにうんざりしている。Web3の胡散臭さが鼻につく。
このような方も多いかも知れません。では、DXとはこれまでのデジタル化と何が違うのかと問われて、それを説明できるでしょうか。Web3の金融サービス(DeFi)で取引される金額はおよそ10兆円、国家が通貨として発行していないデジタル通貨は500兆円にも達し、日本のGDPと同じくらいの規模にまで膨らんでいることをご存知でしょうか。
言葉の背景や本質、ビジネスとの関係を理解しないままに、言葉だけで議論しようとするから、うんざりしたり、胡散臭く感じたりするのではないですか。
ITがもたらす社会の動き、ビジネスの変化、それらとテクノロジーの関係を繋げて理解することが大切です。
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