講義や講演に集中させるにはどうすればいいかを教えよう
「講義や講演に集中させたい。だから、わかりやすい事例を中心に話をして欲しい。」
このようなご依頼を頂くことがある。私は、このようなご依頼を頂く度に残念に思う。
研修を担当する部門にとっては、「分かりにくく、つまらない研修だった」と受講者に評価されることは、自分たちの評価を下げることになるから、それは避けたい。ならば、難しい理屈ではなく、事例であれば、理解しやすいから、集中が途切れず、聞いてもらえるだろうと言うわけだ。
そもそも、講義や講演に於いて、「集中させること」は目的ではない。本来、講義や講演には、なんらかの「達成目標」あるいは「あるべき姿」があるはずだ。例えば、製品やサービスについてのイベントで、基調講演を頼まれたときには、それらに関心を持ってもらことが、「あるべき姿」だ。
例えば、「ローコード開発ツール」のイベントであれば、加速するビジネス・スピード、変化する顧客のニーズへの即応力、拡大するシステム内製化などの話をする。「ローコード開発ツール」そのものについて話をしなくても、そういう手段が、これからは重要になってゆくのだということが、なんとなく分かる。そんな心のお膳立てをするのが「あるべき姿」だ。これに続いて、製品についての話しをすれば、これはちゃんと聞いておこうと言うことになり、案件を増やす可能性を高めるだろう。
ユーザー企業の「デジタル・リテラシー研修」であれば、なぜアナログではなくデジタルでなければならないのか、それを自分たちのビジネスで使うと、どれだけいいことがあるのか、そのために自分たちはどのようなことを学び、どのように取り組めばいいのかと言った話しをする。
技術の詳細を語る必要ない。受講者がデジタルに関心を持ち、デジタルをうまく使うことをひとつの手段として頭の片隅に置きながら、課題解決のための議論を始めたり、新規事業の立ち上げを検討したりといった行動を起こさせることが「あるべき姿」だ。
受講者の関心に徹底して迫ることだ。これは是非とも聞いておきたいという気持ちにすれば、結果として、講義に集中できる。そのために「事例」は必ずしも必須の手段ではない。むしろ、事例を使うことで、「凄いですねぇ。でも、ウチとは違いますから、同じようなことはできませんよ」となり、その後の話についての集中力を欠いてしまうかも知れないし、上記のような、本来の目的達成を難しくしてしまうことすらある。
なにも、「事例」を悪者にするつもりはない。ただ、もし事例を使うのであれば、単にそれを紹介するのではなく、受講者の関心事に結びつけて、なぜこれがうまくいったのかを論理分解し、抽象化して、自分のことに照らし合わせて考えられるようにしてあげることだ。あるいは、失敗した事例を示し、その理由を説明することだ。そのほうが、骨身にしみる。
そんな話は、多くの人たちにとって役に立ち、関心のある話になるから、結果として、集中できる。
「分かりやすい」は、受講者の知っていること、身近なことと対比させて話の内容を組み立てることだ。そして、本質に迫り、自分のこととして捉えてもらうことだ。また、対話するように問いかけ、自分の身近なことと結びつけて考えるように促し、それがなぜ大切なのかをじわっと感じてもらうことだ。そうすれば、結果として「集中させること」ができる。
この程度のことは、講師を生業にしているのであれば、当たり前に考えているから、「集中させるため」の手段まで、指定する必要はない。
結果として、どのような「あるべき姿」、すなわち、「意識の変化」や「行動」を期待するのかを明確にして、それを講師に伝えるだけでいい。そうすれば、「あるべき姿」を達成するための最善の手段を講師は考えてくれる。そういう依頼に応えてくれる講師を選ぶことが、まずは大切だろう。
「実施すること」を目的にせず、「あるべき姿」を目的にする。それが、講義や講演を成功させる基本だ。
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