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デジタル戦略の3つの公理 3/3

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昨日に続き、「デジタル戦略の3つの公理」の最後について解説する。

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公理3:テクノロジーのイノベーションが社会実装されるためには、社会システム(法律、規制、制度など)のイノベーションが前提となる。

  • 特定プロセスを改善できても、全体のプロセスの改善に貢献できなければ、社会に受け入れられない。
  • 既得権益と業法(タクシー業法や旅館業法、著作権法など)は、政治的に強固であり、社会的変化に対応することを拒む傾向にある。
  • テクノロジーの価値を訴求するのではなく、社会の価値、あるいは、あるべき姿を訴求し、その実現を目指して、大衆を巻き込む。

公理2で示したように、いくら優れたテクノロジーであっても、それを受容する「受け皿」が、整っていなければ、広く使われ、社会に貢献することはない。「受け皿」とは、公理2で示した、社会的なインフラや常識、価値観などだけではなく、法律や規制、制度なども含む、社会システム全体に及ぶ。

例えば、FinTech(金融/Financeと技術/Technologyを組み合わせた造語)が、注目を集めた頃、新しいサービスのアイデアや米国での成功事例はいくつもあり、それを実現する実績ある技術的方法も分かっていた。また、この取り組みを進めようとするスタートアップも生まれていた。しかし、銀行が、預金者の口座とのやり取りのためのAPIApplication Programing Interface)を公開していなかったために、この取り組みがうまく進まなかった時期がある。その背景にあるのは金融に関わる広範かつ厳格な法律や規制が敷かれているためであった。もちろん、その目的は消費者の保護にあるわけだが、テクノロジーの進化に追いついていないところもあり、それが、APIの公開を妨げる要因になっていた。

そんな状況を改善しようと、FinTechのスタートアップが中心になって発足した、FinTech協会が、政府関係者や政治家をも巻き込んで法律の改正を提言し、法制度も含めた金融取引環境の整備に積極的に関わっていった。

その結果として、銀行のAPIの公開やそれらを利用することへの法律や制度が整うことになり、利便性の高い金融サービスが、ひろく普及することになった。

新しい取り組みについては、時にして既得権益を持つ企業や団体が、抵抗勢力となることもある。これまでの政府機関や政治家との繫がりを活かして、制度や規制を既存のままに維持したいと活動することになると、例えテクノロジーが、既存の課題を解消し、利便性やコストを改善できるとしても、それを広く社会に普及させることができない。この状況を改善できなければ、例えそれが優れたテクノロジーやビジネス・モデルであったとしても、新しい価値を社会にもたらすことは難しい。

このような状況を打開することは容易なことではないが、できないことではない。上記に例示したFinTech協会がそうしたように、テクノロジーの価値を訴求するのではなく、社会の価値、あるいは、あるべき姿を訴求し、その実現を目指して、大衆を巻き込むことで、政府機関や政治家を動かし、テクノロジーの利用を促す環境を整えることもできるはずだ。

ここでいう「社会システム」とは、法律や規制、制度ばかりではない。企業におけるルールや規範、あるいは、暗黙の了解事項も同様であろう。テクノロジーが、例え優れた価値をもたらすことが分かっていても、自分の経験値が活かせなくなってしまうことや、仕事を奪われてしまうのではないかという不安、あるいは、既存のやり方が変わってしまう事への漠然とした不安も含め、「受け皿」が整っていなければ、受け入れられることは難しい。これもまた、広い意味での「社会システム」であろう。

テクノロジーの機能や性能について、それが優れているからと、それを訴求しても、社会や企業が、受け入れてくれるとは限らない。むしろ、受け皿となる「社会システム」をイノベーションすることに取り組まなければ、価値をもたらすことはできない。

デジタル戦略を成功させるためには、テクノロジーのイノベーションにのみ着目し、それを訴求することだけではなく、その利用や普及を阻害する社会システムの存在を理解し、積極的に関わっていかなければ、うまくはいかないだろう。

昨今、DXという言葉が、巷にあふれているが、その多くが「デジタルを使うこと」によって、もたらされる価値を語るものが多いように感じる。また、それができないことへの批判や嘆きも語られている。しかし、ならばどうすればいいかへの、積極的な解決策を示されていない。確かに、大変だからこそ「嘆き節」になるのだが、嘆くばかりではなく、どうすれば、デジタルを拒む社会システムをイノベーションするかについても、デジタルの価値を訴求すると同様に、関心を向けて取り組む必要があるように思う。

新入社員のための 「最新ITトレンド・1日研修」

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ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

4月度のコンテンツを更新しました】

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・「AIとロボット」を「AIとデータ」に変更し、データについてのプレゼンテーションを充実させました。

・戦略編をDXとそれ以外の内容に分割しました。

・開発と運用に、新しいコンテンツを追加しました

・テクノロジー・トピックスのRPA/ローコード開発、量子コンピュータ、ブロックチェーンを刷新しました。

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研修パッケージ

・総集編 20214月版・最新の資料を反映

DX基礎編 改訂

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ビジネス戦略編・DX

  • 【新規】データとUXとサービス p.17
  • 【新規】デジタル×データ×AI が支える存続と成長のプロセス p.68
  • 【新規】DXとは圧倒的なスピードを手に入れること p.72
  • 【新規】IT企業とデジタル企業 p.155

サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ

  • 【新規】データの価値 p.129
  • 【新規】情報とビジネスインテリジェンス・プロセス p.130
  • 【新規】アナリティクス・プロセス p.131
  • 【新規】データ尺度の統計学的分類 p.135
  • 【新規】機械学習とデータサイエンス p.136
  • 【新規】アナリティクスとビジネス・インテリジェンス p.137
  • 【新規】ビジネス・インテリジェンスの適用とツール p.138
  • 【新規】アナリティクスのプロセス p.139
  • 【新規】ETL p.140
  • 【新規】データウェアハウス DWH Data Warehouse p.141
  • 【新規】データウェアハウス(DWH)とデータマート(DM) p.142

*「AIとロボット」から「AIとデータ」に変更しました。

開発と運用編

  • 【新規】クラウドの普及による責任区分の変化 p.25
  • 【新規】開発と運用 現状 p.26
  • 【新規】開発と運用 これから p.27
  • 【新規】DevOpsの全体像 p.28
  • 【新規】気付きからプロダクトに至る全体プロセス p.29
  • 【新規】アジャイル開発のプロセス p.37
  • 【新規】アジャイル開発の進め方 p.39

*ローコード開発については、RPAの資料と合わせてひとつにまとめました。

テクノロジー・トピックス編

  • 【改訂】ブロックチェーン、量子コンピュータの資料を刷新しました。
  • 【改訂】RPAとローコード開発を組合せた新たな資料を作りました。

下記につきましては、変更はありません。

  • ITインフラとプラットフォーム編
  • クラウド・コンピューティング編
  • ITの歴史と最新のトレンド編
  • サービス&アプリケーション・基本編
  • サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT

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