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プロジェクト「うてな」のデザイン・コンセプト

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「神社」あるいは「神社の杜(もり)」を基本にしましょう。

プロジェクト「うてな」のアートディレクターからそんな提案を頂いた。

彼には、以前から拙著の装丁やレイアウト、会社のロゴや名刺などで、お世話になっていている。すこし華奢なところもあり強引さはないが、それでいてしっかりとメッセージを伝えているし、なによりもキレイである。そんなセンスがとても気に入っていた。

「うてな」もその存在をわかりやすく伝えることは必要である。ただ、主役はそれを使う人たちであって、あまり主張しすぎて浮き上がってはいけない。その絶妙なところをうまく伝えてくれるのではないかと、彼に期待している。

そんな彼に、「うてな」の森にきてもらい、その周辺を歩いた。建築を頼む大工さんとも話をしてもらった。そんな彼からの提案が、「神社」をデザインのコンセプトに据えるという提案だ。

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「うてな」は、八ヶ岳南麓にある小さな集落の鎮守である「八雲神社」の森の一部につくられる。ここは、6年前にこちらに居を構えた頃から知っていた場所であった。鬱蒼と茂る森の小径沿いにあり、そこを進んでゆくと、お社のある境内が開けている。霊感などにはまったく無縁な私でさえも、神聖で霊気に満たされた空気を感じる場所であった。たぶん、それは森の力なのだろうと思う。森が癒やしの力を持ち、心を落ち着けてくれることは、いまさら言うまでもないが、だからこそ、この場所に神社が作られたのだろう。

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田畑と集落に囲まれた里山の中に小高くそびえる森の高台に佇むお社は、この土地にとっても、大切な場所である。そんな地元の人たちの大切にしていることも守りたい。

まさに「神社」をこの施設のデザインコンセプトに据えるのは、とても理にかなっているように感じた。

もちろん、「神社の森の雰囲気を大切にしたい」という漠然とした考えはあったが、ここに作られる建物、サイン、設備などに、一貫して「神社」を貫くという明確な考え方は、私にはなかった発想だ。それを示してくれたアートディレクターには、流石というしかない。

ここの建設をお願いしようとしている大工さんは、木材の地産地消にこだわり、日本の伝統的な建設技法にも精通している。例えば、日本の昔の神社仏閣などでは当たり前の「石場建て」という基礎の作り方にも取り組んでいて、まさに「神社」というコンセプトにはふさわしい。ちなみに「石場建て」とは、地面に大きな礎石を置いて、その石の上に柱を載せる工法なのだが、地震大国ニッポンに於いて、地震の揺れを建物に伝えないための工夫として、古くから使われている。

また、釘やボルトを使わずに木組みだけで構造を作ることや、漆喰や杉の皮を使った壁、こけら葺きの屋根など、もう十分に「神社」である。

「うてな(臺/台の旧字体)」という言葉には、眺望をよくするために土を盛られ作られた高台を意味し、尊い場所という含意がある。この名前にもふさわしいコンセプトだ。

森の癒やしと神社の霊気を感じながら、仕事ができる場所という明確なアイデンティティを示すことができるし、地元の人たちにも「この場所を大切に使わせてもらいます」というメッセージにもなる。

さて、どんな施設になるのか、益々楽しみになってきた。

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