阿らない、いまを伝える、本物を語る
来週の水曜日(5月19日)から、ITソリューション塾・第37期が開講する。2008年の第1期から数えれば、もう13年も続けてきたことになる。第1期に参加してくれたのは数名だったが、大半の人たちとはいまも付き合いがある。
いまふり返れば、稚拙な内容であったが、そういうことも含めて、私の新しい取り組みを鷹揚に受け入れ、励ましてくれた。そんな連中だからこそ、いまも付き合いが続いているのだと思う。
13年の歳月を経て、いまでは毎回100名ほどの受講者を迎えている。自社の研修プログラムの一環に組み入れて頂いている企業も何社かある。個人で年に1回は、自分のアップデートのために参加するという人もいる。たぶんその数は、のべ3000名ほどになるのではないかと思う。
こうやって、多くの皆さんにご参加頂けているのは、たぶん次の3つのことを心がけてきたからかもしれない。
一つ目は、「阿(おもね)らない」ことだ。「阿る」とは、「人の気に入るように振る舞う」という意味だが、企業からのスポンサードはないので、製品の説明や売り込みなど、まったく気にする必要ない。いかなる技術や製品/サービスについても、あるいは、企業の戦略についても、常に中立でいられる。
例えば、自分がある商品やサービス、技術に関わっているとする。当然ながら、これについては誰よりも詳しいに違いない。しかし、大きな世の中の大きな流れや全体を俯瞰したとき、それがどこに位置し、今後どうなってゆくのかを広い視野で客観視できないでいる人たちがいる。売り込まなくてはならないから、どうしても自社の優位性を伝えたいと考え対と思う。
しかし、お客様の立場に立てば、そこは知りたいところではない。他社との比較、あるいは、世の中の全体の中での位置付け、どこが優れているか、劣っているかの客観的な評価であろう。その上で、その企業の優位をどのように活かし、不足をどうやって補うのかと言った、第三者的視点を知りたいはずだ。
このようなことを知ることが、この塾が、心がけていることだ。どこかの企業に「阿る」必要がないので、素直に事実を語ることができる。だからこそ、あらためて、自分たちの商品やサービス、あるいは、自分自身のことを冷静に問うことができる。
「お客様に行きっぱなしで、自分が何をやっているのか、世の中がどうなっているのか、分からずにいました。自分なりに勉強はしていたつもりです。でも、断片的な知識や理解に陥りがちでした。塾に参加して、それらが繫がり、全体が見渡せたし、自分が何をやっているのかもよく分かりました。自分のこれからを考える機会になったことが、ほんとうに良かったと思います。」
このような感想を頂いたことがあるが、まさにこの塾の一番のウリであると思っている。
二つ目は、「いま」の常識を徹底して意識していることだ。「いま」てばなく「これから」ではないのかと、思われる人もいるかも知れない。しかし、私が講義で心がけているのは、未来ではなく、「いま」である。
多くの企業は、「過去」の技術や考え方、ビジネスモデルを生業にしている。それが、収益の大半を占めている。しかし、そんななかにも、これからの時代を切り拓こうともがいている人たちは少なくない。そういう人たち、あるいは、そういう人たちを支える技術やサービスを体系的にわかりやすく伝えることに心がけている。
想像の世界の未来を語っても、現実味はない。それよりも、いまを実践し、成果をあげている人たち、あるいはそのための技術やサービスのほうが、遥かに現実味がある。そして、それが遠い未来の話しではなく、まさにいまやっている人たちがいるのだから、やる意志と努力があれば、手の届くところにある。
そういう「いま」を体系的に分かりやすく伝えることや、これを実践している人たちの生々しい体験やノウハウを教えてもらうことに力を入れている。
未来は、そんな「いま」を知ることで自ずと見えてくると思っている。それよりももっと先、あるいは、いまの延長では見えないものは、アカデミアの役割であろう。それよりも、「いま」に取り組む企業や人、技術を学ぶことで、自分たちがやっている「過去」とのギャップを知ることで、あらためて自分たちが取り組むべき現実的なテーマが見えてくるわけだ。
三つ目は、「本物」を追求することだ。世間では、いろいろな技術やサービスが、日々沸き起こっている。しかし、それが見せかけだけなのか、これからにつながるものなのかを目利きし、これからにとって重要な「本物」を伝えるようにしている。「枝葉」と「幹」の幹、あるいは本質という言葉に置き換えても良いかもしれない。
例えば、DXが喧伝されているが、いまだ「デジタル技術を使って業務を効率化すること」や「新しい技術を使ったビジネス・モデルによる新規事業」と解釈する向きも多い。間違えとは言わないが、これらはDXの「枝葉」であって、「幹」すなわち本質ではない。
DXの本質は何かを知らなければ、「DX事業」だとか、「お客様のDXパートナーになる」だとか言ってもむなしいだけではないか。
本物、幹、本質が理解できれば、応用範囲は一気に広がるし、ビジネスの筋道が開けるはずだ。だからこそ、この点を大切にしている。
では、どうやってそれを目利きするのかだが、それにはコツがある。歴史を知ることだ。例えば、世間ではAIが大騒ぎだが、なぜいまAIが大騒ぎなのかは、AI研究における2つの冬を乗り越えた歴史や、データの歴史、脳科学の歴史を知れば、ディープラーニングの登場がこの大騒ぎの原因であることに行き着く。
もちろん、歴史だけを長々と語ることはない。ただ、そういう歴史的な系譜を知っているからこそ、言葉が説得力を持って伝わる。これは、もう何年も話しているので実感としてよく分かる。
阿らない、いまを伝える、本物を語る
そんなITソリューション塾が、また来週から始まる。もう、ワクワクである。
【募集開始】第37期 ITソリューション塾 5月19日・開講
5月から始まる第37期では、DXの実践にフォーカスし、さらに内容をブラッシュアップします。実践の当事者たちを講師に招き、そのノウハウを教えて頂こうと思います。
そんな特別講師は、次の皆さんです。
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戸田孝一郎氏/お客様のDXの実践の支援やSI事業者のDX実践
吉田雄哉氏/日本マイクロソフトで、お客様のDXの実践を支援す
河野省二氏/日本マイクロソフトで、セキュリティの次世代化をリ
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DXの実践に取り組む事業会社の皆さん、ITベンダーやSI事業者で、お客様のDXの実践に貢献しようとしている皆さんに、教養を越えた実践を学ぶ機会にして頂ければと準備しています。
デジタルを使う時代から、デジタルを前提とする時代へと大きく変わりつつあるいま、デジタルの常識をアップデートする機会として、是非ともご参加下さい。
詳しくはこちらをご覧下さい。
- 日程 :初回2021年5月19日(水)~最終回7月28日(水) 毎週18:30~20:30
- 回数 :全10回+特別補講
- 定員 :120名
- 会場 :オンライン(ライブと録画)
- 料金 :¥90,000- (税込み¥99,000)
*オンラインによるライブ配信、および録画で受講頂けます。
詳細 ITソリューション塾 第37期 スケジュールは、こちらよりご確認いただけます。
詳しくは、上記バナーをクリックしてください。
今年は、例年開催していました「最新ITトレンド・1日研修」に加え、「ソリューション営業の基本と実践・1日研修」を追加しました。
また、新入社員以外の方についても、参加費用を大幅に引き下げ(41,800円->20,000円・共に税込み)、参加しやすくしました。
どうぞ、ご検討ください。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー
【4月度のコンテンツを更新しました】
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・「AIとロボット」を「AIとデータ」に変更し、データについてのプレゼンテーションを充実させました。
・戦略編をDXとそれ以外の内容に分割しました。
・開発と運用に、新しいコンテンツを追加しました
・テクノロジー・トピックスのRPA/ローコード開発、量子コンピュータ、ブロックチェーンを刷新しました。
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研修パッケージ
・総集編 2021年4月版・最新の資料を反映
・DX基礎編 改訂
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ビジネス戦略編・DX
- 【新規】データとUXとサービス p.17
- 【新規】デジタル×データ×AI が支える存続と成長のプロセス p.68
- 【新規】DXとは圧倒的なスピードを手に入れること p.72
- 【新規】IT企業とデジタル企業 p.155
サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
- 【新規】データの価値 p.129
- 【新規】情報とビジネスインテリジェンス・プロセス p.130
- 【新規】アナリティクス・プロセス p.131
- 【新規】データ尺度の統計学的分類 p.135
- 【新規】機械学習とデータサイエンス p.136
- 【新規】アナリティクスとビジネス・インテリジェンス p.137
- 【新規】ビジネス・インテリジェンスの適用とツール p.138
- 【新規】アナリティクスのプロセス p.139
- 【新規】ETL p.140
- 【新規】データウェアハウス DWH Data Warehouse p.141
- 【新規】データウェアハウス(DWH)とデータマート(DM) p.142
*「AIとロボット」から「AIとデータ」に変更しました。
開発と運用編
- 【新規】クラウドの普及による責任区分の変化 p.25
- 【新規】開発と運用 現状 p.26
- 【新規】開発と運用 これから p.27
- 【新規】DevOpsの全体像 p.28
- 【新規】気付きからプロダクトに至る全体プロセス p.29
- 【新規】アジャイル開発のプロセス p.37
- 【新規】アジャイル開発の進め方 p.39
*ローコード開発については、RPAの資料と合わせてひとつにまとめました。
テクノロジー・トピックス編
- 【改訂】ブロックチェーン、量子コンピュータの資料を刷新しました。
- 【改訂】RPAとローコード開発を組合せた新たな資料を作りました。
下記につきましては、変更はありません。
- ITインフラとプラットフォーム編
- クラウド・コンピューティング編
- ITの歴史と最新のトレンド編
- サービス&アプリケーション・基本編
- サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT