営業力は「世界観の広さ」に比例する
営業に求められる大切な能力のひとつとして、「世界観の広さ」がある。能力と言うべきなのか、生き方と言うべきなのかはともかくとして、世界観が広くなければ、営業として、評価され、大きな仕事を成し遂げることは難しい。
何を売るかにもよるが、ITの仕事であれば、お客様の事業だとか経営だとかに影響を及ぼす。それは機能や性能、仕組みを知っているから、それでいいと言うことではない。お客様の内面、つまり、業務の現場や経営の悩みに寄り添うことが必要だ。寄り添うとは、お客様の発する言葉、あるいはもっと具体的に、こんなことをしたい、あんな課題を解決したいといった言葉の向こうにあるものを感じ、想像することであろう。
彼は、いろいろと言ってはいるけれど、本音はどこにあるのだろう。彼は何を求めているのだろうか。彼の立場を考えれば、何をすることが彼の評価を高めることになるのか。この経営者は、この会社をどうしたいのだろうか。彼は、いまどのようなことに悩み苦しんでいるのか。何をすることが、彼の幸せに結びつくのだろうか。
そういうことに思いを巡らせることが、相手に寄り添うことだ。そして、何をすればどうなるかを徹底して考え抜き、何度もシミュレーションして、彼が幸せになる物語を紡ぐ。それが提案であろう。
彼の「こうしてくれ」といったTo Doに応えることではなく、こうなれば彼が幸せになれるはずというTo Beに近づくことであり、それが彼の幸せになるための物語、すなわちロジックで裏付けられているなら、彼の「こうしてくれ」と異なっていても、何の問題もない。
もっと言えば、彼の「こうしてくれ」の裏には、何があるのだろう。それは、彼の経験や知恵の範囲での方法論であり、To Beを実現するためのひとつのTo Doを示している場合がほとんどだ。
例えば、「ここに橋を架けたい」と彼は言う、しかし、橋を架けるという行為は手段/To Doであり、かれの目的/To Beは、「楽に向こう岸へ渡りたい」ということだ。ならば、橋よりももっと良い方法があるのではないかと考える。例えば、あちらとこちらを隔てている川を埋めてしまうという方法もある。川の流れが滞ることがないように地下水路をつくればいい。あるいは、地下にトンネルを掘ってそこを移動すれば、景観を変えることなく向こう岸に渡ることができる。
もっと発想を広げれば、街を全て向こう岸に移転させ、こちら側は公園にして、ロープウェイで景色を眺めながら渡れるようにしてはどうだろう。新しい都市が生まれ、そこに住む人たちのQOLが向上するかも知れない。
奇抜であろうか?突飛で非常識であろうか?
もちろん、予算だとか、現実という制約に阻まれるから、これら発想が全て現実的であるなどと言うつもりはない。しかし、相手は、その話しを聞いて、自分の考えの狭さに気付くかも知れない。なるほど、もっと選択肢を拡げれば、もっといい違うやり方があるかも知れないと、驚き気付くだろう。そこら、彼との対話が始まる。
このようにTo Beを実現するためにいちばんいいTo Doは何かと選択肢を拡げることで、「こうしてくれ」以上のやり方が見つかるかも知れないし、もしそれが見つかれば、彼のTo Beは、より高い次元で満たされる。
営業という仕事の醍醐味は、まさにこの点にある。つまり、顧客の期待を、良い意味で裏切り、ハッとさせてびっくりさせ、よくぞそこまで考え抜いてくれたと感動させることだ。
営業に対する信頼とは、相談したら期待以上の答えを与えてくれる知恵袋であり、何かあったらまずは最初に相談しようと思われる存在になることだ。そうなれば、もはや競合などいない。
だからこそ、「世界観の広さ」が必要だ。直接の仕事に関わる知識だけではなく、広範な知識、例えば、政治や経済、芸術など、ジャンルを問わない雑多な知識がなくてはできないだろう。それは雑学を持てと言うことではない。少しばかりでも自分の意見をもとるようになるということだ。もちろん、さらに深めることに制約などない。
しかし、知識だけでは不十分だ。もうひとつ大切なのが、多くの人とのつながりである。多様な価値観、ロールモデル、生き様に触れて、感じることであろう。そうすればものの見方も拡がり、もっと彼に寄り添うことができる。あるいは、彼が困っているときに、あるいは自分だけでは対処できないときに、適材適所で直ぐに助けを得られる。
とても残念なことだが、日本人の営業感は、まだまだ狭い。例えば、こんなことを書くと、それは「コンサルの仕事ではないか」と言い出す始末だ。そんな肩書きなどで、自分を縛ってどうする。
営業の仕事は、与えられた数字を達成することだ。それ以外にないと言ってもいいだろう。どんなに「いいひと」でも、気働きする人でも、数字の達成できない営業の評価は低い。頑張っているとか、やるだけのことはやっていると言ったところで、数字が伴わなければ、営業としての評価は低い。単純で分かりやすい。
そのための手段として、お客様を幸せにして、その幸せの対価をもらう。その数字を積み上げることで、何としてでも数字を達成する執念こそが必要なのだ。数字が足りなければ、もっと沢山のお客様を幸せにすればいい。あるいは、担当者ではなく、大きな予算を握っている人、例えば経営者を幸せにすれば良い。そのためにも、沢山の選択肢を提供できる「世界観の広さ」が必要だ。
このようなことができるようになるのは、簡単なことではない。だからこそ、目指すべき価値がある。成長の喜びが数字で示されるのでるから、こんなに分かりやすい仕事はない。だから、営業は面白い。いつまでも、やるべきことがなくならない。
そんな営業の面白さに気付いて欲しいと思う。営業力とは、その面白さを極めることで磨かれる。
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ビジネス戦略編・DX
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サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
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- 【新規】情報とビジネスインテリジェンス・プロセス p.130
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- 【新規】データ尺度の統計学的分類 p.135
- 【新規】機械学習とデータサイエンス p.136
- 【新規】アナリティクスとビジネス・インテリジェンス p.137
- 【新規】ビジネス・インテリジェンスの適用とツール p.138
- 【新規】アナリティクスのプロセス p.139
- 【新規】ETL p.140
- 【新規】データウェアハウス DWH Data Warehouse p.141
- 【新規】データウェアハウス(DWH)とデータマート(DM) p.142
*「AIとロボット」から「AIとデータ」に変更しました。
開発と運用編
- 【新規】クラウドの普及による責任区分の変化 p.25
- 【新規】開発と運用 現状 p.26
- 【新規】開発と運用 これから p.27
- 【新規】DevOpsの全体像 p.28
- 【新規】気付きからプロダクトに至る全体プロセス p.29
- 【新規】アジャイル開発のプロセス p.37
- 【新規】アジャイル開発の進め方 p.39
*ローコード開発については、RPAの資料と合わせてひとつにまとめました。
テクノロジー・トピックス編
- 【改訂】ブロックチェーン、量子コンピュータの資料を刷新しました。
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下記につきましては、変更はありません。
- ITインフラとプラットフォーム編
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- サービス&アプリケーション・基本編
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