「営業センス」とは何か?
「私には、営業センスが、ありません。」
- これまでエンジニアとして頑張ってきて、この度、営業を仰せつかり、さてどうしようかとブルーになっている方
- 営業という仕事を長年やってきたが、いまひとつ自分の性に合っていないのではないかと考えている方
- 営業センスを持てと言われるが、何をどう持てばいいのか悩んでいる方
そんな方は、いらっしゃいませんか?
営業センスとは、何でしょうか?そもそも今更育てて、育てられるものなのでしょうか?
センスとは、「つながりを直感できる能力」だと考えています。
例えば、同僚が、暗い顔をしていたとしましょう。彼は、先日社長から新規事業の企画を任され、来週報告するように指示されたと話していました。彼にとってはこれまでやったことのない業務領域です。いろいろと資料に当たっていたこと、これまで出たことのなかったセミナーにも頻繁に出かけ、情報収集をしていました。これぞという納得いく企画が思いつかないので、暗い顔をしているのではないかと考えられます。
「暗い顔 = 企画がまとまらない」
あなたは、きっとそのつながりに気付くことができるはずです。
こういうことは、理を尽くして考えなくても、日常彼を見ていれば、自然に気付くことです。あなたは友人として彼に関心を持っています。彼の状況を想像できます。つながりに気付くのは、必然の結果です。いうなれば、「彼を理解するセンスがある」ということです。
営業の仕事に置き換えて、考えて見ましょう。
担当するお客様の売上に占める国内店舗での比率は50%を超えています。コロナ禍で外出自粛が続く中、国内での売上高は30%減少しています。このような厳しい経営状況の中、将来に備えて検討を暖めてきた次期販売システムは、一旦は凍結されてしまいました。
しかし、ワクチン接種が始まったことで、近い将来顧客が店舗に戻ってくる期待が高まっています。また、次期販売システムは、店舗とオンラインでの販売を一元化し、顧客が店舗で商品を確認しオンラインで注文できる機能や、デジタル・マーケティングのシステムと連動させることで、より効果的かつ効率的に顧客のデマンドを喚起し、店舗でもオンラインでも顧客が容易に選択して購入できる機能など、店舗とオンラインの連携機能が、大幅に向上しています。
コロナ禍を乗り越え、今後のニューノーマルの時代に備え、新しい販売形態に移行し、オンラインでの販売比率を高めてゆくことは、経営上の課題となっています。当然、営業部も社長にそのことを具申するはずです。
誰がプロジェクト・メンバーかは分かっています。そろそろ先手を打って、プロジェクトについての情報収集をしっかりとしておいた方が良さそうです。あるいは、先行して、こちらのアイデアをインプットしておいた方がいいかもしれません。競合他社の動きも無視できません。ならば、我が社のトップ・コンサルタントをこのプロジェクトの実施オーナーである専務と実行責任者である営業部長に、早々に引き合わせておいた方が良さそうです。
「コロナ禍=オンライン販売機能の強化=トップ・アプローチ」
このつながりを直感できる力が「営業センス」といえるでしょう。
「営業センス」は、生まれ持った能力と考える必要はありません。お客様について関心を持ち、お客様に係わり、お客様に関係する情報を集めていれば、自然と身につく能力です。そして、想像力を発揮して、つながりの物語を紡ぎ出すのです。
ただ、ひとつ注意しなくてはならないことがあります。それは、「お客様の課題を解決するために」、「お客様の企業価値を高めるために」、「お客様のニーズを満たすために」といった、お客様のためにどうすればいいかという視点を持ち続けることです。それがなければ、お客様への関心など持てません。関心がなければ、情報は集まらず、結果として「営業センス」は働きません。
必ずしも特定のお客様である必要はありません。業界、製品分野、技術分野といった区分で同様の視点を持ちづけることでも、「営業センス」は発揮されます。
徹底した情報収集、お客様との会話、継続的な勉強、それは生まれながらに備わった能力などではなく、自分の意志と努力の結果です。
ところで、プレゼンテーションやドキュメンテーション、コミュニケーションなどの能力も「営業センス」なのでしょうか。わたしは、それらを「営業スキル」として、分けて考えています。「営業スキル」もまた必要な能力であることは間違えありません。ただ、ひとまとめにして考える必要はありません。
「営業センス」は、お客様への関心の深さと比例するものかもしれません。関心があれば、もっと知ろうと思うはずです。それが結果として、あなたの「営業センス」を磨くことになるのだと思います。