マンサクが咲き蕗の薹がやってきた
拙宅のある八ヶ岳南麓、標高1000mのこの週末は、とても暖かかった。土曜日の朝こそ氷点下7度まで下がったが、昼間には12度になっていた。日曜日には、17度まで気温、おいおい、春になるのを急ぎすぎているのではと言いたいほどである。
マンサクが花盛りだ。花の匂いと温かさに誘われて、ミツバチが群がっていた。去年は蜂が少ない年だった。蜂がいないと花粉の媒介ができず生態系は崩壊するという。とても心配をしていたが、今年は幸先がいいようだ。
特に昨日の午後は気持ちが良かった。風こそ強かったが、森の木々が風を和らげてくれる。そんな木々に囲まれた陽だまりにコットを出して、野口悠紀雄氏の著書「リープフロッグ」を読み始めた。本を読みつつ、日本の未来を憂いていたら、いつの間にか精神世界が肉体を呑み込んでしまったようだ。世間からは、居眠りと見えるのかも知れないが、世間がどう言おうと、私は精神世界を堪能していたのだ。
森の散歩にでかけた。いまでこそ木々に被われているが、所々に石垣が積み上げられ、平地になっているところがある。昔は田んぼだったのだ。この辺りは、八ヶ岳南麓湧水群と呼ばれる地域であり、森の中には、泉や小川が至る所にある。山の南麓の日当たりと豊かな水が、田んぼには最適だったのかも知れない。しかし、いまはそんな田んぼに実生の木々が生え、豊かな森へと変わってしまった。
水の湧いているところには、必ずと言っていいほど、水神さまがまつられている。この写真は、慶応二年に建立されたものだ。森の中にひっそりと佇む姿は、なんとも神々しい。慶応二年の建立とある。つまり1866年、幕府による長州征伐の年、徳川慶喜、第十五代将軍に就任した年である。そんな時代に建てられた石仏に、いまでもしめ縄が張られ、ワンカップ大関が置かれている。155年もの間、地元の人たちが受け継いできたのかと思うと、自然と手を合わせてしまう。
さらに森の奥へと進むと既に廃墟となったニジマスの養魚場がある。谷間の開けた空間は、南に開け陽が降り注いでいる。もう、魚を育てているわけではないけど、引き込まれた用水は、水しぶきを上げて大きな音を立てている。
ここは、この辺りでは、毎年最初に蕗の薹が出てくる場所だ。適度な湿地と南面に開けた日当たりの良さが、そうさせるのだろう。流石に未だ早いとは思って、何気なく探してみると、なんともう出ているではないか。
また今週は寒さが戻るらしい。雪が降るとの予報もある。しかし、確実に春は近づいている。