営業は売り込みもお願いも必要ない 1/2
コロナ禍にあって、営業の役割が改めて問われている。営業とは、どのような仕事なのかを、2回に分けて考えてみようと思う。
第1回(本日)
- お客様のIT投資は事業部門にシフトする
- テクノロジーの説明ではなく、お客様の価値を説明する
第2回(明日)
- 営業は売り込みもお願いも必要ない
- 新しい技術と蓄積されたノウハウの融合が求められている
お客様のIT投資は事業部門にシフトする
ITあるいはデジタル・テクノロジーの積極的な活用が、事業戦略上不可避であるとの認識は、もはや広く行き渡っている。しかし、何をすればいいのか、どのように取り組めばいいのか、お客様もまた答えを持っていない。そんなお客様にしてみれば「何をしたいか教えてもらえれば、その方法を提案します」では困ってしまう。
また、自分たちにできること、あるいは自社のサービスや製品の範疇でしか語れないとすれば、それが最適な解決策なのかは分からない。お客様が知りたいのは「自分たちは何をすべきか」であり、「貴方たちに何ができるか」ではない。
お客様は、経営や事業に踏み込んで、何をどのように変えてゆけばいいのかを一緒に考え、テクノロジーやビジネスのトレンドから助言を与えてくれることを期待している。主導権をお客様に委ね、自分たちはただサポート役として助言する立場を越えようとしなのであれば、イノベーティブな解決策など描けない。自らもリスクを共有し、お客様と一緒になって新しいビジネスを作ってゆく覚悟が求められる。
営業は、こんなお客様の想いを支えなくてはならない。合理化や生産性向上のためのシステム開発でもなければ、インターネットやAIを駆使した新しいデジタル・ビジネスを作ることでもない。テクノロジーを活かして、経営や事業のあり方を根本的に変えてしまおうという想いに応えなくてはいけない。
ITを含むデジタル化投資は事業の成果に責任を持つ事業部門にシフトしてゆく。これからのビジネスのチャンスは、ここに関わってゆけるかどうかにかかっている。
テクノロジーの説明ではなく、お客様の価値を説明する
事業部門へのシフトが進むのであれば、私たちは、テクノロジーには詳しくない経営者や事業部門の人たちに、その価値とビジネスへの貢献について説明できなくてはならない。
例えば、IoTの大切さを伝えたいのであれば、モノがネットワークで「高速」かつ「確実」につながることではなく、それがどのような顧客価値を産み出せるかについて説明できなくてはならないだろう。例えば次のようなユースケースを描き説明することだ。
誰かが自宅で心臓発作を起こした。発作の前にその人が付けているウェアラブル・デバイスがその予兆を検知して、本人に注意を促し予防措置をとるよう喚起する。同時にヘルスケア・サービスのサポートセンターに連絡が入り、音声応答システムが起動し自動で様子を尋ねてくれる。
本人が返事できないことが確認され、倒れていること、脈や呼吸が乱れていることがウェアラブルのデータから判別できたので、直ちに救急車の出動が要請される。ところが、患者宅への最短のルートは工事のため通行止めだ。そこでカーナビには工事現場を迂回する最短ルートが表示する。信号は救急車の移動に合わせて自動で制御され、渋滞を回避する。
同時に病院への手配も行われ、カーナビにはどの病院に運べばいいかの指示が出される。病院の医師にも患者の状態や既往歴などのデータが送られ、対処方法についてのアドバイスが示される。そして、必要な準備するように通知される。
家の鍵は緊急事態であることから自動的に開錠され、救急隊が直ちに患者を運び出し病院に搬送する。患者は発作から10分もかからず病院に運ばれ大事には至らなかった。
データをつなぐ技術がどれほど優れていても、それだけでは顧客価値は生まれない。データをつないだ先に人の命が救われることが顧客価値ということになる。そのための物語を描き、お客様に伝えなくてはいけない。
テクノロジーを駆使し新しいビジネス・プロセスやビジネス・モデルを創ってもそれが、とのような顧客価値をもたらすのかを見失ってはいけない。そのための取り組みを「ソリューション」というが、どのような「価値」を実現するためなのかという目的を曖昧にしたままで、IoTやAIなどの手段を使うことが目的となってしまったソリューションでは、そこに投資する価値はないし、当然、お客様に受け入れてもらえないだろう。
お客様がテクノロジーを使うのは、実現すべき顧客価値が明確であり、それを生みだす物語があってこそだ。従って提案活動とは、次のような手順を踏むことになる。
- お客様とともに顧客価値、つまりお客様の「あるべき姿」を探し、この実現を合意する。
- 顧客価値を実現するための手順、すなわち物語を描く。ソリューションやサービス、製品や体制などは、ここに含まれる。
- これをわかりやすく伝え、受け入れてもらい、共にすすめることを合意する。
テクノロジーの発展は、これまでには考えられなかった新しい手段を提供し、新たな物語を描くチャンスを増やしてくれる。そう考えれば、テクノロジーの進化は、沢山のビジネス・チャンスを生みだしてくれることになるだろう。
*** 明日に続く
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