オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

事業企画・事業開発をすすめるための基本の「き」 1/3

»

コロナ禍に向きあい、新たなビジネスの可能性を模索する企業も増えているようです。どうすれば、この取り組みを成功に導くことができるのでしょうか。3回に分けて、整理していこうと思います。

  • 第1回 3つの原則
  • 2回 3つのステップ
  • 3回 3つの狙い目

第1回 3つの原則

事業開発の原点は実感にある

「サンフランシスコであまりにもタクシーがつかまらない。この場で乗りたいのに、手をあげてもタクシーは止まってくれない。」

ライドシェア・サービスの代名詞ともなった「Uber」は、そんな創業者の実体験がきっかけだったそうです。

「タクシーが利用者のニーズに応えてくれないのなら、自分たちでつくってしまおう。」

そうやって20093月にこの会社は設立されました。

いつでも、どこからでも、誰もが、すぐにスマートフォンでタクシーを呼び出すことができ、しかも既存のタクシーに比べて安い料金で利用できる。そんなUberは瞬く間に世界に拡がってゆきました。そして11年後の202010月現在、世界19カ国、1万都市にサービスを展開し、売上高も1.5兆円を超えようとしています。

Uberの創業者は自分が感じたことを「それが普通だから仕方がない」とは考えず、「もっといいやり方があるはずだ」と考えたのでしよう。そして、それを実現するために「いまできるベストなやり方は何か」を考え抜いたのです。そのとき「ベストなやり方」の選択肢として、その当時としてはまだ目新しいクラウドやスマートフォンに目を付け、その可能性を信じ試行錯誤を繰り返しながら作り上げたのがUberだったのではないでしょうか。事業開発の原点は、ここにあると言ってもいいでしょう。

  • 「困った」を解決したい。
  • もっと便利に使いたい。
  • もっといいやり方があるはずだ。

そんな想いが新しいビジネスを生みだすきっかけとなりました。決して、新しいデジタル技術でビジネスをやることが目的だったわけではありません。目の前にある課題を解決するには、最新のデジタル技術を駆使することが一番いいやり方だったのです。そんな原点を突き詰めていった人たちが、結果として既存の業界秩序を破壊するまでの力を持つ、誰もが注目するような新しいビジネスを生みだしてきたのです。

しかし、身近な現実に目を向けると、かならずしもそうではないようです。

「人工知能を使って、うちでも何かできないのか?!」

こんな話しが経営者かふってきて、さてどうしたものかと現場が頭を抱えています。「世間で人工知能が話題になっているので、うちも乗り遅れてはいけない」ということなのでしょう。「人工知能を使うこと」が目的ではないはずです。目の前の課題を解決したい、もっといいやり方で効率を上げたい。それが目的のはずです。その目的に向き合うことなく、手段を使うことを目的にビジネスを考えるという本末転倒な話しは後を絶ちません。

人々に受け入れられるビジネスは、直面する課題やニーズに気付き、真摯に向き合うことからはじまります。その解決策として「デジタル技術がもたらす新しい常識=思想としてのデジタル技術」にも目を向け、その可能性を最大限に活かそうという考え方が、これまでにない革新的なビジネスを生みだしているのです。

795316b92fc766b0181f6fef074f03fa.png

事業を開発するための3つの原則

第1原則:課題の実感

  • 誰かがそんなことを言っていた。
  • 世間で話題になっている。
  • 偉い先生がそんな話をしていた。

こんな話しは、既に誰かが手を付けています。そんな「誰か」のことではなく、仕事や生活の中に課題を実感することが最初です。自分が実感していることもあるでしょう。あるいは、「工場の現場が困っているらしい」や「お客様が何とかしたいと言っていた」のであれば、それを現場で確かめて、自分の実感として受けとめることです。

「三現主義」ということばがあります。

「現場に出向いて現物に触れ現実を見なければ、ものごとの本質を見極めることができない」

そのことを仕事の現場に息づかせる言葉で「ものづくり」の現場で大切にされてきました。例えば、工場の生産現場で不良品が見つかったとき、現場の状況だけを聞いて机上で判断しても的確な判断はできません。不良品が作られる工程(現場)に出向き、不良品(現物)に触れ、不良が起きている状況(現実)を見るという三現主義を実践すれば、より正しい判断に近づくことできるというわけです。

「三現主義」で生々しい現場の課題やニーズを実感として捉えることができてこそ、それを何とかしたいという本物の意欲や動機が与えられるのだと思います。

また、「実感」する課題が解決できれば、そこには必ず需要が生まれます。それは、そこに必要としている具体的な「誰か」が見えているからです。「誰かが言っていた」類のことは、この「誰か」がはっきりしません。それではビジネスの見通しは得られず、机上の空論になってしまいます。そうならないためにも課題を実感しなければならないのです。

第2原則:トレンドの風を読む

デジタル技術は世の中の常識を大きく、そして急速に変えてゆきます。その変化にアンテナを張り、向かう方向を読み解く努力を怠らないようにしたいものです。

それには2つの意味があります。ひとつは、「ニーズの変化」を知るためであり、もうひとつは「いまできる最適な手立て」を見過ごさないためです。

「ニーズの変化」とは、これから社会が何を求めて動くのかを知ることです。

「人間が経験で現場を理解し、人間が行うことを前提に最適化された仕組み」を、「データで現場を捉えデジタル技術が最も活躍できるように最適化された仕組み」に変えてゆこうという大変革にこそ、新たな変化を読み解く鍵が隠されています。デジタル・トランスフォーメーションとは、これを実現するための前提です。

もうひとつの「いまできる最適な手立て」とは、次のようなことです。

  • かつてできなかったことが、容易にできるようになった。
  • かつて高額でとても手を出せなかったものが、とても安価に手に入るようになった。
  • デジタル技術を身近なものとして受け入れ使いこなすことに抵抗のない世代が増えた。

かつての常識はすぐに置き換えられてしまいます。その事実に目を背けないことです。「かつてはこのやり方が最善の手段だった」は、いまも通用するとは限りません。「最善の手段」はいつの時代も新しいのです。過去の経験や成功体験を「いま」に押しつけるのではなく、時代に応じた「最善の手段」を見逃さないことです。

第3原則:試行錯誤

デジタル技術がもたらす変化のスピードは数年先を予測することさえ難しい状況です。それに加えてビジネス環境も世界がネットで緊密につながったことで、遠い国や地域の出来事が瞬く間に世界を大きく動かします。絶対の正解はなく、何が最適かを判断することは容易なことではありません。ですから最後まで見通した完璧な計画など作れません。だから第1の原則で現場を感じたなら、第2の原則でその時の最適な手立てを駆使してさっと成果をあげ、変化に応じて試行錯誤を積み重ねてゆくことが大切です。

そのときに大切にすべきは、「当事者」としての責任です。例えば、新しく家を建てるとき、「なんでもいいから、格安で住み心地のいい家を作ってくれ」と建築会社に頼み、出来上がった家を見て「こんな家を頼んだつもりはない」と文句を言っても後の祭りです。どんな家を建てたいかは施主が考えるべきことです。自分のライフスタイルや家族構成、予算などを考え、建築会社に相談するはずです。

建築関係の書籍や雑誌などを読んで、最新のデザインや工法、設備についての知識を得て、こんな家にしたい、こんな家具を置きたいとこちらの想いを伝えるでしょう。建築会社は、そんなあなたの意向を請けて、専門家として提案してくれるはずです。そして、ああしよう、こうしようとやり取りを繰り返しながら、待望の家が完成します。

出来あがった家は、施主に引き渡されます。施主は、必要に応じて設備の追加や改修を専門家に頼みながら、自分たちの生活になじませ、より快適な生活ができるようにしてゆくものです。

どうしたいのかは施主の責任です。デジタル技術をビジネスに活かそうとする場合も同じ話です。ビジネスの「当事者」としての責任を自覚し、I専門家に相談する必要があります。そのとき、デジタル技術についてはなにも知らないでは、「なんでもいいから、儲かるシステムを作ってくれ」というしかありません。

いつの時代にも変化はありましたが、変化のスピードがこれほど速い時代は、希なことのように思います。将来にわたって安心確実なビジネス・モデルや手段を見出すことは大変難しい時代となったのです。

クラウドやインターネット、さらにはテクノロジーの進化のおかげで失敗のコストは大きく下がりました。そんな時代の後押しをフルに活かし、当事者としての責任を自覚し、「試行錯誤」を繰り返すことが、ビジネスを成功させる要件として大切になるのです。

次回は、第2回・3つのステップです。

【募集開始】ITソリューション塾・第36期 2月10日開講

2月から始まる第36では、DXの実践にフォーカスし、さらに内容をブラッシュアップします。実践の当事者たちを講師に招き、そのノウハウを教えて頂こうと思います。

そんな特別講師は、次の皆さんです。
===
戸田孝一郎氏/お客様のDXの実践の支援やSI事業者のDX実践のプロフェッショナルを育成する戦略スタッフサービスの代表
吉田雄哉氏/日本マイクロソフトで、お客様のDXの実践を支援するテクノロジーセンター長
河野省二氏/日本マイクロソフトで、セキュリティの次世代化をリードするCSO(チーフ・セキュリティ・オフィサー)
===
また、特別補講の講師には、事業現場の最前線でDXの実践を主導され、「DXグランプリ2020」を受賞されたトラスコ中山の数見篤氏(取締役・経営管理本部長兼デジタル戦略本部長)にも、その実践のノウハウを語っていただきます。

DXの実践に取り組む事業会社の皆さん、ITベンダーやSI事業者で、お客様のDXの実践に貢献しようとしている皆さんに、教養を越えた実践を学ぶ機会にして頂ければと準備しています。

コロナ禍の終息が見込めない状況の中、オンラインのみでの開催となりますが、オンラインならではの工夫もこらしながら、全国からご参加頂けるように、準備しています。

デジタルを使う時代から、デジタルを前提とする時代へと大きく変わりつつあるいま、デジタルの常識をアップデートする機会として、是非ともご参加下さい。

詳しくはこちらをご覧下さい。

  • 日程 :初回2021210()~最終回428() 毎週18:3020:30
  • 回数 :全10回+特別補講
  • 定員 :120
  • 会場 :オンライン(ライブと録画)
  • 料金 :¥90,000- (税込み¥99,000

全期間の参加費と資料・教材を含む

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

【1月度のコンテンツを更新しました】
======
・DXについてのプレゼンを充実しました
・ゼロトラスト・ネットワークについてのプレゼンを改訂しました
・コンテナとKubernetesについてのプレゼンを分かりやすくしました
======
研修パッケージ
・総集編 2021年1月版・最新の資料を反映
・DXの基礎を最新版に改訂
======
ビジネス戦略編
【新規】クラウド・サービスなどで使われる料金制度 p.17
【新規】プラットフォーマーと言われる企業の略称 p.18
【改訂】時計の速さと時代の変化 p.78
【新規】ソフトウエア・ファーストの必然性 p.79
【新規】DXとイノベーション p.84
【新規】デジタル・トランスフォーメーションのBefore/After p.194
【新規】共創の実践サイクル p.195
【新規】「共創」の目的 p.196
【新規】コロナ禍後を見据えた3つの変革施策 p.216
【新規】お客様のDXに貢献するためにやるべきこと p.217
【新規】DXを実践するとはどういうことか p.218
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】AIマップ・AI研究は多様 フロンティアは広大 p.21
【新規】AIマップ・AI研究の現在 p.22
開発と運用編
【新規】ウォーターフォールとアジャイル についてのパッケージを追加 p.55-61
ITインフラとプラットフォーム編
【改訂】サーバー仮想化 p.106
【改訂】サーバー仮想化とコンテナ p.107
【改訂】仮想マシンとコンテナの稼働効率 p.108
【改訂】コンテナのモビリティ p.109
【新規】コンテナ・オーケストレーションとは p.110
【新規】Dockerとkubernetes p.111
【新規】モビリティの高いコンテナ p.112
【新規】セキュリティの考え方の変化・境界防衛モデルp.120
【新規】セキュリティの考え方の変化・境界防衛モデルの破堤 p.121
【新規】セキュリティの考え方の変化・ゼロトラストモデル p.122
【新規】境界防衛モデルとゼロトラスト・モデル p.123
【新規】セキュリティの考え方の変化・ゼロトラストモデル p.124
【新規】ゼロトラストによる安全なシステム設計 p.126
【新規】ゼロトラスト・アーキテクチャーの7原則 p.127
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】向上でのデジタル・ツイン p.27
【新規】データの種類と取得方法 p.60
【新規】データ取得のためのプロセス設計 p.61
【新規】データ活用の前提はData Virtuous Cycle を実装すること p.62
クラウド・コンピューティング編
【新規】政府共通プラットフォーム/政府共通ネットワーク p.35
下記につきましては、変更はありません。
・ITの歴史と最新のトレンド編
・テクノロジー・トピックス編
・サービス&アプリケーション・基本編
Comment(0)