働き方改革の本質は価値を生みだすことに集中できるようにすること
- MS Officeを捨ててください
- 瞬時にドキュメントを共有できるGoogle AppsもしくはOffice 365 を使ってください
- 社内のファイルサーバを捨ててください
- Google Drive/BOX/Dropboxを使ってください
- メールを捨ててください
- Slackを使ってください
- Excel/MS Projectのプロジェクト管理を捨ててください
- Redmine/Atllasian Confluenceを使ってください
- 社内のソースコード管理サーバを捨てて下さい
- GitHubを使ってください
- 社内検証サーバを捨ててください
- パブリッククラウドを使ってください
- 私用のスマートフォンで"どこでも"仕事をさせてください
- これはオフィスで、といった決まり事はなくしてください
上記は、お客様の内製化を支援しているSI事業者の方から、お客様と「共創」するための条件として提言されたものだ。もちろん、ここに紹介した製品を勧めているわけではない。この前提にある彼らの常識にこそ、共創の本質がある。
「報連相」という言葉がある。報告・連絡・相談は社会人の基本であって、仕事を円滑に進めるための必須条件であると信じられているが、本当にそうなのだろうか。
例えば、報告のためには「立派な報告書」を作らなければならず、そのためには、それ相応の時間がかかる。また、ウソを書くわけにはゆかないが、あまりネガティブな内容だと報告者の能力や良識を疑われる。そこで、自分で何とかなりそうな些細なトラブルや状況の変化は報告書には書かない。進捗がはかばかしくないときは、ビジネス環境やお客様の状況が厳しいことを書き連ね、だから「自分は悪くない」と、さりげなく気付かせることができるような文学的表現に知恵を絞る。
そうやって時間をかけて文章を仕上げるので、その間に現場の「感覚」や「雰囲気」は抜け落ちてしまう。
些細なトラブル、ちょっとした状況の変化、現場の感覚が伝わらないままに、現場で何とかしようともがくほどに事態がどんどん深刻化する。そして、どうしようもならなくなり、大炎上ということはよくある話しだ。そうなってやっと「報連相」されることも多い。大企業の不正会計事件などは、そんな些細なことの連鎖が引き起こした結果なのではないか。
脚色された「報連相」をもとに会議を開き、その会議では何も決めないままに結論を先送りし、根回しと称して個別相談でものごとを決めてゆく。もし、そんなことが常態化しているとすれば、潜在的リスクを相当溜め込んでいるとみるべきだろう。また同時に、業務の生産性を阻害し、売上や利益の喪失をもたらしている。
このような無駄を取り除けば、結果として労働時間は減らすことができる。非生産的でリスクを増大させるような仕事のやり方を見直し、リスクを些細な段階で共有でき、価値を生みだすことに労働時間の大半を費やすことができるようにすることが、働き方改革の本質だ。そうすれば結果として、少ない労働時間でも付加価値を高め、営業利益を押し上げる。
「働き方改革」とは、そこで働く人たちがその能力を生産的業務に集中させること
そうすれば業務効率は高まり、経営指標を改善し、幸せな働き方ができる。
冒頭に紹介した「共創の条件」は、これを実現するためのノウハウだ。つまり、「共創」とは、スピードと高い生産性を生みだす仕事の仕方を実現してこそ、成り立つということだ。
改めて、「共創の条件」を見直してみると、次のような働き方の基本が見えてくる。
- 道具としてのクラウドを積極的に活用する。
- オフィスやお客様先に縛り付けない働き方を許容する。
- チャットを使いリアルタイムに担当や組織を超えたフラットなコミュニケーションを実現する。
不確実なビジネス環境の変化に即応することができなければ、もはや生き残ることはできない。開発や運用の自動化、あるいはローコード開発は、そんな顧客のニーズに直結している。また、そのために、管理やコミュニケーションのありかたを大きく変えなくてはならない。そのための手段は、クラウドに揃っており、常に最新の状態で提供されている。
例えば、Office365にMSアカウントでログインし、そこで仕事を行えば、行動履歴は全て記録される。報告のための資料作りなどしなくてもどのような働き方をしているかは全てデータとして把握でき、MyAnalticsを使えば、実に分かりやすく、しかも定量的に見える化される。
また、SlackやTeamsでコミュニケーションすれば、リアルな現場の感覚をいつでも確認することができる。直接話をしたければ、そこで呼び出し、直ぐにオンラインで打合せもできる。
GitHubをつかえば、作業の進捗は直ちに把握できるし、どこにどのような課題があるかも見える化される。文学的な脚色を駆使した報告書など作る必要はない。
このようなクラウドに揃った道具を使えば、場所や時間の制約はなくなり、仕事の効率や品質を落とすことなく、都合のいい場所で仕事ができるようになる。子育てや介護などで「決められた場所や時間」が難しい人たち、地方にクラス優秀な人材を戦力として活かすこともできる。さらには、組織における人間関係はフラットになるので、お互いへの敬意や協調・協力の意識が高まり、自律したチームを生みだすことに貢献してくれるだろう。
「リモートワークによる裁量労働制を認めるとサボる人間が増えるのではないか」
そんな心配をする経営者もいるが、サボる人間は何処で仕事をしてもサボる。それよりも、意欲のある人に多様な働き方の機会を与え、より大きなパフォーマンスを上げてもらう方が、よほど事業価値を高めるには効果的だ。
デジタル・トランスフォーメーションだとか、攻めのITだとかを声高に叫び、「共創」でお客様との新しい関係を築いてゆくと言うSI事業者も多い。しかし、自分たちが、時代の求めるスピードに合わせることができないままでの「共創」は、お客様の足を引っ張ることになる。まずは、「共創」するにふさわしい、時間間隔とスピードを自分たちの仕事のやり方に馴染ませることからはじめるべきだろう。
少子高齢化が進み労働力の減少は避けられない以上、工数を増やすことで収益や利益を伸ばすビジネスは、どう考えても成り立たなくなる。さらに追い打ちをかけるように「労働時間を減らす」ことへの社会的、政治的要請は高まりつつある。もはや「工数で稼ぐ」を根本的に変えなければ、企業として成長はないし、生き残れなくなることは、火を見るより明らかだ。この事態に対処するためには、少ない工数で開発と運用のサイクルを高速で回し、お客様のビジネススの現場にジャストインタイムでサービスを提供し続ける技術力を武器に新しい収益モデルを模索する必要がある。アジャイル開発×DevOps×クラウドの組合せは、このような事業価値を支える前提となるだろう。
働き方改革の圧力を「困ったこと」と後ろ向きに捉えるのではなく、むしろこれからの時代にふさわしい事業へと転換するきっかけとして、コロナ禍を機会として積極的に捉えてみてはどうだろう。