「ソフトウエア・ファースト」が必要なのは時計が早くなったから〜
マサちゃん、XX歳なのにそんなことよく知ってるねぇ?
私は5歳のチコちゃんよりも、すこしだけ年上ですから、それくらい、知っています。
及川卓也さんの著書「ソフトウェア・ファースト」は、見事にいまの時代を切り取ってくれました。では、なぜ、いま「ソフトウェア・ファースト」なのかということですが、私なりの視点で、改めて整理してみました。それは時間感覚の変化が背景にあるからです。表現を変えれば、「社会的時計の回転速度が速くなった」からです。
1990年代の初頭に登場したインターネットの登場によって、情報伝達のスピードは一気に加速しました。その後のwebやソーシャルメディアの登場は、意志決定や行動変容のスピードを速めました。
この時計の回転をさらに加速したのが、2007年に登場したiPhone、すなわち、スマートフォンの登場です。肌身離さず持ち歩く常時ネット接続のスマートフォンは、社会と人を1つの有機体に統合し、社会の脈動と人の行動を一体化させました。この変化が、時計の回転を一層速めたと言えるでしょう。
この状況にビジネスが対処する唯一の方法は、圧倒的なビジネス・スピードの獲得です。予測できない、そして高速な変化に対して、俊敏に対処できる能力が、ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)となったわけです。
つまり、顧客やビジネスの最前線の状況を高速にデータとして捉え、高速に顧客や現場がいま必要とする機能や性能を改善し、優れた体験価値(UX)とともに高速に現場にサービスとして提供できることが、ビジネスの価値を実現する前提となったのです。
サービスとは、ECや情報提供といったWebやアプリという手段によるものばかりではありません。モノもまたサービスを提供する手段です。
私たちは、何らかの意図や目的を満たすために手段を必要としますが、それがWebで提供されることもあれば、自動車や家電製品を介して、提供されることもあります。そして、私たちは、それぞれの手段を介して、機能や性能を体験価値として享受します。その価値体験、すなわちUXこそが、私たちの意図や目的を満たしてくれるのです。
時計が早くなるとは、私たちの求める意図や目的が、高速で変わり続けることを意味します。この変化に対応し続けなければ、ユーザーは、あるいは顧客は離反します。ですから、ものづくりにあっても価値の実現に必要な機能や性能、UXは、固定的なハードウェアに頼らず、柔軟なソフトウェアに頼るやり方が、ふさわしいのです。
つまり、作ったら変更できないハードウェアに機能や性能、UXを固定的に作り込むのではなく、ハードウェアをできるだけ汎用的かつ柔軟性の高い標準的な部品あるいはモジュールの組合せにして、ソフトウェアで機能や性能、UXを実装すれば、いいわけです。そうすれば、ハードウェアの調達や製造が容易かつ低コストでできることに加え、新しい製品を高速に開発でき、販売した後にもネットを介して高速に機能や性能を改善できます。加えて、属人性を廃してどこででも作ることができ、複雑性を低減することで、開発や生産、保守のコストを下げることができるのです。
この考え方を推し進めれば、モノを販売して収益を得るビジネスではなく、モノをサービスとして提供するビジネスになるわけです。日産とDeNAによるEasy Ride、トヨタとソフトバンクによるMonet/e-Paletteなどは、そんな変化への対応であるといえるでしょう。
このように考えれば、アジャイル開発やDevOps、クラウドが注目され、広く社会に受け入れられることは、必然となります。つまり、ますます速さを増す社会的時計に対処するには、その速さにふさわしい、ソフトウエアの実装に関わる考え方や手段が必要となるからです。
ソフトウエア・ファーストが必要なのは時計が早くなったから〜
この意味をご理解頂けたでしょうか?