ビジネスの変化は時間感覚の変化と同期する
不確実性が常態化する世の中にあって「長期計画的にPDCAサイクルを回す」といった従来のやり方では、成長はおろか、生き残ることさえできなくなりました。ビジネス・チャンスは長居することはなく、激しく変化する時代にあってチャンスを掴むにはタイミングを逃さないスピードが必要です。顧客ニーズもどんどん変わり、状況に応じ変化する顧客やニーズへの対応スピードが企業の価値を左右します。競合もまた入れ代わり立ち代わりやって来ます。決断と行動が遅れると致命的な結果を招きかねません。
時間感覚の変化がビジネスを変えようとしている
- 3年間の中長期計画
- 1年に一度の年度計画
- 半年に一度の設備投資
- 月例の定例役員会
- 週次の部門会議
多くの企業は、階層的な組織構造を前提に、このような時間軸で、意思決定をしてきました。確かに、中長期的な見通しを持たなければならない経営・財務・投資計画などでは、このような大枠での意志決定はいまも必要です。しかし、新規事業開発・共創・トラブル対応などの現場の最前線での活動では、高速な試行錯誤と意志決定が求められ、同じ時間軸で動いていていては、うまくいきません。
明確なミッションの提示と大幅な権限委譲を前提に、現場の判断力を信じて、その時々の最善を直ちに見極め迅速に意志決定を下し、行動を変化させなくてはなりません。つまり「圧倒的なビジネス・スピード」を手に入れるしかないのです。
そのためには、ビジネス・プロセスをデジタル化して現場をリアルタイムに「見える化」し、データに基づいて的確、迅速に「判断」し、直ちに「行動」できる仕組みを持つことです。
- 設備を投資から経費へ変更(クラウドなど)
- リアルタイムかつオープンなデータ共有(ERPなど)
- リアルタイムかつオープンなコミュニケーション(チャットなど)
このようなデジタル化されたビジネス・プロセスを前提に、現場の行動を変えなくてはなりません。
- 戦略を動かし続ける
- 現場に権限委譲する
- 現場での判断を重視
- 結果を迅速に事後報告
対話の頻度を増やす
事前に十分に準備し、根回しをして全員の合意を取り付けてから行動するというかつての時間感覚では、いまのビジネス環境に対処することなどできません。
そんないまの時代の時間感覚にビジネスも合わせなくてはなりません。ビジネス・モデルやお客様との関係、働き方は当然ですが、これらを支える情報システムの開発や運用もまた変革が求められます。
VUCAへ対処するには圧倒的スピードを獲得するしかない
社会環境が複雑性を増し将来の予測が困難な状況
まさに私たちが置かれているこのような状況を「VUCA(ブーカ)」と呼びます。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、2016年のダボス会議(世界経済フォーラム)で使われ、注目されるようになりました。昨今は、ビジネスシーンでも一般的に使用されており、コロナ禍によって我々は身をもって体験していると言えるでしょう。いまや働き方や組織のあり方、経営などの方針に関わる考え方の前提にもなっています。
Volatility(変動性)
テクノロジーの進化や社会常識の変化など、価値観や社会の仕組みなどが猛烈なスピードで変化し、先の見通しを立てることが困難。変化の度合いや割合も大きく、変動性を予想するのは難しくなっている。
Uncertainty(不確実性)
イギリスのEU離脱、米中貿易戦、民族間紛争など、現代を取り巻く情勢は、予断を許さなない状況であって、さまざまなリスクに対応しなければならない状況に置かれている。
Complexity(複雑性)
一つの企業、一つの国で解決できる問題が極端に少なくなった。地球規模でパラメータが複雑に絡み合っているため、問題解決は単純ではなく、より一層困難なものになりつつある。
Ambiguity(曖昧性)
変動性、不確実性、複雑性がり、因果関係が不明、かつ前例のない出来事が増え、過去の実績や成功例に基づいた方法が通用しない時代となりつつある。
見通すことのできない未来に対して、あるいは、理解できない現状に対して、事業を継続していくには、古き良き時代の時間感覚では対処できません。予測不可能な変化に俊敏に対処できる圧倒的スピードを獲得するしかないのです。
ITビジネスもまた時間感覚の変化に向きあわなくてはならない
ITビジネスもまた、このような時間感覚の変化と不可分ではありません。サーバーレスやコンテナ、アジャイル開発やDevOpsなどが語られることが多くったが、これは、この時間感覚の変化が背景にあります。
では、このような時代に、どのようなスキルを身につければいいのか、どのような技術を知っておけばいいのかということになりますが、求められるスキルや技術も、直ぐに変わってしまうことを前提にしなければなりません。
- 戦略を動かし続ける
- 現場に権限委譲する
- 現場での判断を重視
- 結果を迅速に事後報告
- 対話の頻度を増やす
先に述べた5つの項目を実践することです。そんな時間感覚を持とうとすれば、スキルや技術は、そのための最適・最善を必要とします。結果として、時代のニーズにふさわしいビジネスが展開できるはずです。何よりも、そのような現場で働く人たちは、自律的に育つでしょう。そして、そういうことができる企業には、優秀な人材も集まってくるはずです。