デジタルとは何か? 1/4
デジタル・ビジネス、デジタル戦略、デジタル・トランスフォーメーションなど、「デジタル」という言葉を目にしない日はありません。しかし、「デジタル」とはいったい何でしょうか。そもそも、デジタルであることに、どんな価値があるのでしょうか。なぜこれほどまでに、デジタルという言葉が注目されているのでしょうか。
デジタルとは何かをテーマに4回に分けて解説します。
デジタルとフィジカル
「デジタル(digital)」とは、本来「離散量(とびとびの値しかない量)」を意味する言葉で、連続量(区切りなく続く値をもつ量)を表すアナログと対をなす概念です。ラテン語の「指 (digitus)」を表す言葉が語源で、「指でかぞえる」といった意味から派生して、離散的な数、あるいは数字という意味で使われています。
一方、現実世界(フィジカル世界/Physical Worldとも言う)の「ものごと」や「できごと」は、全て「アナログ」です。例えば、時間や温度、明るさや音の大きさなどの物理現象、モノを運ぶ、誰かと会話するなどの人間の行為もまたアナログです。しかし、アナログのままではコンピュータで扱うことはできません。そこで、コンピュータで扱えるデジタル、すなわち0と1の数字の組み合わせに変換する必要があります。
現実世界のアナログな「ものごと」や「できごと」は、デジタルに変換することで、コンピュータで処理できるカタチに変わります。つまり、センサー、あるいはWebやモバイル・デバイスなど、様々なデジタル世界との接点を介して、現実世界の「ものごと」や「できごと」が、デジタル・データに変換され、コンピューターに受け渡されます。そのための一連の仕組みをIoT(Internet of Things/モノのインターネット)と呼んでいます。
こうして、コンピュータの中に、「アナログな現実世界のデジタル・コピー」が作られます。これを「デジタルな双子の兄弟」、すなわち「デジタル・ツイン(Digital Twin)」と呼んでいます。
つまり、「デジタル」とは、現実世界の「ものごと」や「できごと」を「コンピュータで扱えるカタチ」に置き換えた姿と言い換えることもできるでしょう。
デジタル化
アナログな現実世界の現実世界の「ものごと」や「できごと」を「コンピュータで扱えるカタチ」すなわち、デジタルで表現し直すことが、「デジタル化」です。
では、なぜ「デジタル化」するのでしょうか。
「人間のやっていたことをコンピュータでできるようにすること」
このように説明するとわかりやすいかも知れません。例えば次のようなことができるようになります。
- これまで1週間かかっていた申し込み手続きを5分で終わらせる
- 顧客の行動(いま、どこで、何をしているのか)が分かる
- 他のデジタル・サービスと一瞬にして連係できる
- 膨大なデータの中にビジネスに役立つ規則や関係を見つけることができる
- 業務の進捗、人の動き、ビジネスの状態が、リアルタイムに「見える化」される など
では、なぜ、こうすることが必要なのでしょうか。大切なことは、次のような価値を手に入れるためです。
- 顧客満足が向上する
- 業績が改善する
- 社員が幸せになる など
いかなる価値の実現をもたらすのかを見据えて、「デジタル化」にとりくむことが、大切なのです。
「これまで1週間かかっていた申し込み手続きを5分で終わらせる」ことができれば、顧客はその便利さに感動するでしょう。そうすれば、そのうわさは拡がり、さらにお客様が増えるでしょう。その結果、業績も向上します。
「顧客の行動(いま、どこで、何をしているのか)」が分かれば、その状況にふさわしい、サービスを提供できるでしょう。例えば、スタジアムでサッカーを観戦していて、お気に入りのチームが勝ったなら、そのチームのログの入った「いまだけ限定」のプレミアム・グッズをスマホで紹介すれば、喜んで勝ってくれるかも知れません。そうすれば、売上も向上します。
結果として、生みだされる価値を定めないままに、デジタル化することを目的にしても、それはただの自己満足であり、ビジネスに貢献することはないのです。
***明日に続く