営業の仕事は「それ以外全部」
エンジニアにしろ、経理にしろ、肩書きのある仕事には、何をするかが、予め決まっている。しかし、営業には、「予め決まっている」仕事がない。
営業に与えられるのは、数字目標の達成というミッションだ。それを行う上で、エンジニアのやること、サポートスタッフのやること、経理のやることなど、「予め決まっている」ことを引き受けてくれる人たちの仕事を引き算する。その結果、残った仕事の全部が営業の仕事だ。
いや、そんなことはない。営業にも「予め決まった仕事がある」と言われる人もいるかもしれないが、まさにその通りで、営業にも予め決まった仕事はある。しかし、誰がやるのかはっきりしないような曖昧なゾーンは、限りなくある。それは、案件ごとに仕事の内容が変わるからであり、個々の事情に合わせて個別に対応しなければならないからだ。案件の規模が大きくなればなるほど、「それ以外」が膨らんでゆく。そして、この「それ以外」を確実にこなさなければ、数字目標が達成できない。
数字目標を達成できない営業の評価は低い。給与もボーナスも昇進も期待することは難しい。ならば、数字のために「予め決まった仕事」も「それ以外」も「全部」やらなくてはならない。だから、「それ以外全部」となる。その覚悟があるか、それを躊躇せず実践できるかが、営業の力量だ。
営業には、どんなスキルが必要なんだと、お悩みの方もいるだろう。プレゼンテーション、ドキュメンテーション、技術や製品の知識などなど、そりゃあいっぱいある。しかし、結局は、「それ以外全部」を引き受ける覚悟ができるかどうかだ。そうすると、必要な営業のスキルというのは、「図々しさ」と「がむしゃらさ」であり、「人を巻き込むスキル」と言うことになるのだろう。特に「人を巻き込むスキル」は、営業の「それ以外全部」をこなすために必須だ。しょせん、一人の人間できることなんて限られている。だから、それぞれに能力のある人を巻き込んで、助けてもらって、それ以外の効率や品質を高めていかなければ、仕事にならない。大きな案件になればなるほど、その必要性は高まる。
それができなきゃ、数字目標を達成することなどできない。
数字に執着を持ち、どのような状況にあっても約束した数字は、絶対に達成する。それが営業の評価と直結しているわけだが、だからといって、ぶらしてはいけない絶対的な基準がある。それは、「お客様の幸せ」である。
お客様に代金を支払わせることではなく、本当にありがとうと、感謝の言葉とともに、お支払い頂くことである。お客様の事業の成果に貢献でき、そのことで感謝され、その感謝の気持ちとともに代金を頂戴することができなくては、いけない。
時には、自分たちの製品やサービスで、対処できないこともあるだろう。他社の製品やサービスを使った方が、間違えなく「お客様の幸せになれる」と確信したら、それをすすめるべきだ。そうやって、お客様の幸せを基準に仕事をすれば、その時は、お客様から代金は頂けないが、感謝の気持ちは頂けるだろう。そういう関係を築くことができれば、また次のチャンスが訪れる。そういうお客様との関係をたくさん作れば、案件に困ることはないし、数字も自ずと着いてくる。
きれい事である。そんなにうまくいくわけがい。その通りだと思う。だからこそ、こういう基本をぶらさないことが大切なのだと思う。
数字の先のお客様の幸せは、1つの道でつながっている。その道を外さないコトを心がければ、数字は向こうからやってくる。
大変なことだ。時間もかかる。だから営業という仕事は面白い。。