オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

営業は「最善」ではなく「最適」を目指せ

»

営業の仕事は、今も昔も変わることはない。それは、お客様の「最適」を実現するプロデュサーであろう。

「最適」であって「最善」ではない。使える予算も違うし、これまでどのようなやり方をしてきたかの歴史も違う。世間が評する「最善」は、担当するお客様に取っても「最善」であるとは限らないからだ。

「最適」を導く基本は、自社の製品やサービスにこだわらないことだ。営業としての数字を一旦、棚上げし、お客様の過去、現在、未来に向き合うことからはじめなくてはならない。

c648c466d91921f93f0a2bca5e29a6e89233cca5.png

過去:共感と承認

いまこのような状況にあるのは、そうなった歴史があるからだ。どうしてこうなっているのかについて、まずは真摯に耳を傾けること。批判や否定をせずに、彼らに共感し、承認すること。そうすれば、お客様は心を開き、対等に話ができる関係が築ける。

現在:現状と課題

過去の結果としていまがあるとしても、そこに課題があるならば、それを正直に伝えることだ。こんなことを言っていいものか、失礼になるのではないかと言葉を濁してはいけない。率直に言葉にすることです。時には相手のタブーにも切り込まなければならないこともある。第三者の営業だからこそ、それができるという自覚を持つことだ。もちろん礼儀をわきまえることは言うまでもない。

相手がその話しを聞いて、「なんと無礼なヤツだ」と感じるか「よくぞ言ってくれた、ありがたいことだ」と感じるかの違いは、前段で申し上げた「過去への共感と承認」があることと、あなたにプロとしての威厳や見識があることが前提となる。

未来:あるべき姿と解決策

「あるべき姿」とは、結果としてこうなっていたいというゴールのイメージだ。例えば次のようなことになる。

  • この分野では世界一になる
  • 誰もが就職したい憧れの企業になる
  • お客様が絶対に手放したくない企業になる

営業は、相手の話を聞き、対話と議論を重ね、徹底して考察し、「あるべき姿」を見つけ出し、提言し、そこに至る解決策の物語を語れなくてはならない。

未来だけを訴えても、なかなか受け入れてもらうことはできない。一方、過去に共感し、現状を語ることはできても、未来を示さなければ、相手を幸せにすることはできない。過去にも現在にも未来にも、それぞれに丁寧に寄り添い、必要に応じて行き来する。営業はお客様をそんなタイム・トラベルにお連れする添乗員でなくてはならない。

そんな関係を築く中で、お客様の現状も、本音も見えてくる。それがあって、「最適」は、両者の合意として、見えてくるだろう。

ただ、「最適」は、「諦め」でも「妥協」でもない。未来の「あるべき姿」へ到る現時点での最適なルートだ。「あるべき姿」は理想であり、容易に実現できないかも知れない。だからといって、それを諦めるのではなく、どうすれば、そこに行き着くことができるかを過去、現在を考えて、いまできる最適な道を描くことである。

営業の役割は、「あるべき姿」は何かを、お客様に教える教師である。そして、そこに至る課題を解決するための方法を示すアドバイザーである。そして、自社の提供する製品やサービスを提供して、「あるべき姿」に行き着く道を共に歩み、成功に至らしめるプロデューサーである。

冒頭、自社の製品やサービスにこだわらないことだと申し上げたが、「あるべき姿」に到る最適なルートを示すときに、前提を廃止して一番のやり方を見つけるためだ。お客様が手に入れたいのは、「あるべき姿」であって、あなたの会社の製品やサービスではない。だからこそ、まずは、お客様の気持ちに寄り添うために、自社の製品やサービスのしがらみから離れる必要がある。

結果として、自社の製品やサービスが、ふさわしくなければ、その案件はナシである。あるいは、他社との組合せで、解決策を見つけられるのであれば、それも一策であろう。もちろん、自社の製品やサービスで実現できるのであれば、それを提案すればいい。

例え、その時はナシになっても気にすることはない。そこまで誠実に向きあってくれた営業には、きっとまた声がかかる。そんなお客様との関係をたくさん作っていけば、案件に困ることはない。

それでも、自社の製品やサービスが売れない、すなわち数字にならないとすれば、それはあなたの責任ではない。会社の製品やサービスの品揃えが悪いのだ。ふさわしい品揃えをするように、会社に求めるべきだろう。

もうひとつ、営業は商品やサービスを売ることを目標にしてはいけない。会社は、その数字を求めるが、それは結果である。お客様の「あるべき姿」を実現することをプロデュースし、必要な支援を提供する結果として、数字はついてくる。そういう関係をお客様と築くことができなければ、お客様からの信頼は得られず、リピートや新たな相談は、得られないだろう。

だからといって、数字への執着がなくなれば、それは営業失格だ。数字が足りなければ、お客様との良い関係を築く努力を普段から怠らないことだ。それが営業の頑張り所だ。それができれば、数字は自ずとついてくる。数字に一喜一憂することもない。

「お客様の最適を実現するプロデュサー」とは、そんな仕事なのだと思う。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

【10月度のコンテンツを更新しました】
======
・DXについてのプレゼンテーションを大幅に充実させました!
・DXについてのコンテンツを大幅拡充
・DXを説明するためのパッケージ「DXの基礎」を新規作成 
======
講義・研修パッケージ
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの基本
======
【改訂】総集編 2020年10月版・最新の資料を反映(2部構成)。
======
ビジネス戦略編
【改訂】デジタル化によって生みだされる2つのビジネス領域 p.4
【新規】ビジネス発展のサイクル/デジタル化領域の拡大 p.5
【新規】ビジネス発展のサイクル/体験・感性価値の提供 p.6
【新規】「平安好医生」からの学び p.8
【新規】デジタル技術を前提にした新しい保険ビジネスの登場 p.9
【新規】事例から戦略を読み解く p.10
【新規】UI/UXとは何か p.14
【新規】DXとは何か p.15
【新規】DXを実践するとは何をすることか p.16
【新規】2つのデジタル化:デジタイゼーションとデジタライゼーション p.25
【改訂】デジタル化と変革 p.26
【新規】デジタルとデジタル化とDXの関係 p.27
【新規】DXはどんな世界を目指すのか p.31
【改訂】DXを支えるテクノロジー・トライアングル p.32
【新規】DXとテクノロジー・トライアングルの関係 p.33
【新規】DXのまとめ p.43
【新規】DXの実現に立ちはだかる課題 p.62
【改訂】DXと企業文化とアーキテクチャ p.64
【改訂】ハイパーコンペティションに対処する2つのアプローチ p.74
【改訂】ハイパーコンペティションに対処する適応力 p.75
【改訂】ハイパーコンペティションに対処する革新力 p.76
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの定義 p.77
【新規】デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションの定義 p.78
【改訂】デジタル・トランスフォーメーションの2つの解釈 p.79
【改訂】デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションの解釈 p.81
【新規】DXの常識とDXの実現 p.82
【新規】DXと個人と組織 p.140
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTの未来 p.16
【新規】「モノのサービス化」の構造 p.49
【新規】ビジネス価値の比較 p.50
【新規】ビジネス価値のシフト p.51
【新規】自動車/移動ビジネスの3つの戦略 p.52
【新規】属性データと行動データ p.53
【新規】データとモノ/コト・ビジネスの関係 p.54
【新規】タッチポイントの役割分担 p.55
【新規】モノ・コト・体験 p.56
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】コンピュータがコンピュータを作る時代 p.16
【新規】AIの役割と人間の関係 p.17
【新規】データサイエンティストの定義 p.125
【新規】データサイエンスの適用事例 p.126
【新規】データサイエンティスト業務を整理したタスクリスト p.127
【新規】データサイエンティストの業務 p.128
クラウド・コンピューティング編
【新規】クラウド・サービスの狙い p.18
【新規】ハイブリッド・クラウドとマルチ・クラウド p.61
【新規】クラウドの3つの価値 p.89
ITインフラとプラットフォーム編
【新規】セキュリティについての考え方の変化 p.102
【新規】攻撃サービスの低価格化と攻撃機会の増加p.103
【改訂】リスク・マネージメントの考え方 p.104
【新規】サイバー・ハイジーンp.106
【新規】サイバーセキュリティ経営ガイドライン p.107
【新規】トラストとは何か p.110
【新規】共有パスワードを使った暗号化にトラストはない p.111
【新規】ゼロ トラスト ネットワークとは何か p.112
【新規】ローカルブレイクアウト - マイクロセグメンテーションの効率化 p.115
【新規】ゼロトラストとネットワーク p.116
【改訂】ユーザーに意識させない・負担をかけないセキュリティ p.119
下記につきましては、変更はありません。
・ITの歴史と最新のトレンド編
・テクノロジー・トピックス編
・サービス&アプリケーション・基本編
・開発と運用編
Comment(0)