DXを理解するために読むべき3冊
DXについての講義や講演をすると、よく聞かれるのが「どんな本を読めばいいでしょうか?」と言う質問だ。もちろん、拙著をお読み頂くのが一番いいわけだが(笑)、それでは公平を欠くことになる。だからといって、これがいいと申し上げられるほど、網羅して読んでいるわけでもない。
そこで、独断と偏見ではあるが、限られた読んだ本の中で、DXを理解するためにおすすめしたい「(自分の)3冊」をリストアップしてみた。
「3冊」とはいうものの、全部で「3冊」というのでは、物足りない。そこで、思いつくままに「DXを理解するために役立ちそうな本」をリストアップし、さらにそれをまた独断と偏見でグループ分けして、グループ毎に「3冊」を並べてみた。
なお、このリストを紹介する相手は、「ITの仕事に直接関わっていない人たち」だ。従って、システム技術や開発、運用などのITの専門的な本は含まれていない。
この分け方は、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)の原則には従ってはいるものの、グループの意味的境目が曖昧であることは否めない。まあ、それでも、なんとなく分かってもらえるかなぁと言うレベルで整理をしてみた。
よろしければ、参考にしてください。
来たるべき未来を知るための3冊
デジタル技術の発展の先にある未来は、どのような世界になるのかを知るためのきっかけを与えてくれる本。特に「限界費用ゼロ社会」は、DXというか、デジタル技術の発展の行き着くところを教えてくれる。WTF経済はかなり分厚く難解でした。
競争原理の本質を理解するための3冊
ビジネスにおける競争とは何かを考えるヒントを与えてくれる本。特に、「競争の終焉」で述べられているハイパーコンペティションは、DXに取り組む必然をうまく説明してくれる。
イノベーションを知るための3冊
イノベーションと言えば、クリステンセンの定番の三冊。他にもイノベーションも本はいろいろあるが、まあ基本とも言えるでしょう。
新規事業の実践を知るための3冊
新規事業とは何かと言うより、どうすれば成功できるかを考えるための原理原則を教えてくれる本。単なるハウツー本ではない。
これからの経営を考えるための3冊
経営者に是非とも読んでいただきたい。特に「稲盛和夫の実学」は、DXとは無縁と思われるかも知れないが、結局のところDXも彼の言う「実学」のリアルタイム制を実現しようと言うことなのだと思う。また、「両利きの経営」は、新規事業を生みだすための経営の基本とでも言うべきことを教えてくれる。
組織変革の実践を学ぶための3冊
組織変革を実践するためのノウハウが詰まっている。特に「その仕事、全部やめてみよう」は、著者の体験に裏打ちされていて、なかなか生々しい。Team Geekは、エンジニアに絶賛だが、DXの前提であるデジタル技術を活かすためには、エンジニアでなくても知っておくべきことが満載だ。
日本と西欧の組織文化や思想を考える3冊
古典的名著。DXに取り組むためには、日本と西欧の組織文明や思想についても知っておくべきと言うのが、私の持論。アーロン収容所や肉食の思想は、デジタルとかITとか語られることのなかった大昔の本ではあるが、ITやDXがこれほどまでに注目されるようになった背景にある西欧思想の本質を、日本人の目線で紹介してくれている名著だと思っている。
歴史からいまと未来を知るための3冊
ユバァル・ノア・ハラリの本はやはり外せない。「来たるべき未来を知るための3冊」で紹介した本とはまた違う切り口で、未来を考える材料を与えてくれる。結局、未来は、過去の延長にあるわけで、この流れを無視してDXを考えることはできないだろう。
ITのトレンドを味方にするための3冊
申し訳ないのですが、拙著を2冊入れさせてもらいました。特に「未来を味方にする技術」は、テクノロジーのトレンドをITに詳しくない人にもわかりやすく伝えたいとの想いで上梓したもの。「ソフトウエア・ファースト」ということばは、もはや一人歩きしているバズワード。その本質を語る本書は、ITの専門家でなくても知っておく必要がある。DXとはソフトウエア・ファーストだということがきっと理解できる。
VUCA時代の思考法を考えるための3冊
まさに私たちがいま置かれているこのような状況を「VUCA(ブーカ)」と呼ぶ。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉だ。DXとは、このVUCAに対処する知恵である。企業ばかりでなく、個人もまたVUCAの時代を生き抜くための思考法を手に入れるべきだろう。
これからのマーケティングを考える3冊
これはなかなか悩ましい選択だった。ただ、私にとってはやはりコトラーの言葉が分かりやすかった。そして、現代の日本のBtoBマーケティングの実践者であれば、庭山一郎氏の右に出る人はいない。そんな彼の新著は、とても分かりやすい。福田康隆さんのThe Modelもデジタル時代にふさわしい考え方を教えてくれる名著。
DXの実践を考えるための3冊
DXについての本は数あれども、実践なら、やはりマイケル・ウェイドは外せないだろう。日本の実情に合わせわかりやすく実践を解説しているのが、内山悟志氏の一冊。とても分かりやすく、日本の組織の実情をくみ取った内容は、直ぐに使える一冊だ。
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まだまだ、紹介したい本はあるが、3冊縛りで選ぶというのは、なかなか難しい。選外とは言え、紹介しておきたいのは、ジェフ・サザーランドの「スクラム 仕事が4倍速くなる"世界標準"のチーム戦術」だ。これは決して技術の話しではない。タイトルにもあるように、最少の時間と労力で最大の成果を出すチームの作り方を伝授する一冊。文明論では、ジャレット・ダイヤモンドやマルクス・ガブリエルも読んでおきたい本である。
ああ、もうキリがないのでこのあたりにしておく。ぜひ、皆さんも自分の3冊を見つけられてはどうだろう。