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地方移住は本物?待ち受ける課題

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「物件がなくなってきています。」

山梨県北杜市の不動産を扱う人からこんな話を伺った。ちなみに北杜市とは、山梨県の北部に位置し長野県と隣接し、都心からは車でも、電車でも2時間程度のところだ。八ヶ岳の南麓にあり、森と水と農地と牧場が広がる清里、大泉、小淵沢、武川、白州、須玉などがあり、この連休も観光客で賑わっていた。別荘の多い場所でもある。

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4月の緊急事態宣言のとき以降、問い合わせは増えてはいたのですが、物件はまったく動きませんでした。移動制限がなんとなく緩和されて以降、一気に動きはじめましたね。特にこの1ヶ月は、これまでに無い動きです。1000坪を越えるような大きな物件が動くことなど先ずないのですが、それがいまは直ぐ買い手が付いてしまいます。」

コロナ禍で在宅が増え、毎日通わなくてもいい人たちが増えた。ならばいっそのこと、生活の基盤を地方に移し、必要な時に東京に通えばいいという人が増えたのかも知れない。

私は、あいかわらず東京には住んでいるが、週末や休日は、山梨県北杜市に帰ってくる生活を4年続けている。金曜日に仕事を終えて、そのまま車で移動し、週末をこちらで過ごし、月曜日の早朝に東京へ戻る。渋滞もなく、ストレスのない移動のためにこんなやり方になったが、朝9時には東京にいるので、何の問題はない。長い休日や執筆などで籠もりたいときは、こちらに長逗留することもある。

もともと、リモートワークみたいな生活をしていたので、そんなライフスタイルもいいのではないかと、以前から申し上げていた。しかし、いいですね、理想です、うらやましいと言った言葉しか返ってこなかった。しかし、コロナ禍を機にそれが特別なことはなくなろうとしているように思う。

コロナ禍以前は「夢」、コロナ禍が始まり「憧れ」、コロナ禍が日常になって「現実」へと、世の中が変わりはじめたのかも知れない。

生活が変われば、働き方が変わり、社会が変わり、国家かが変わる。デジタル庁設立の動きもそんな変化の1つなのかも知れない。

あきらかに時代のベクトルが「デジタル前提」に変わろうとしているようだ。デジタル技術を前提に、生活や働き方、ビジネスや社会が変わる。この視点は、「これまでの常識を前提に、デジタル技術で便利にする」ということとは、根本的に違う。地方への移住や生活拠点の分散は、Web会議やペーパーレス化、オンラインショッピングなどのデジタル技術の発展と普及があるからこそできる選択である。

また、ビジネスの主役がモノからサービスへとシフトし、ビジネスに必要な資産が、肉体的労働から知的労働へ変わった。肉体的労働にしろ知的労働にしろ、デジダル技術が未熟だった時代は、集まって、あるいはその場所に行って仕事をしなければならなかった。しかし、デジタル技術の発展と普及は、知的労働については、そんな物理的、地理的制約をなくしてくれた。むしろ、移動のための時間やコストを考えれば、これまでのやり方のほうが、効率が悪いのは明らかだ。そのことが、この度のコロナ禍によって、多くの人たちが気付くことになったわけだ。

ただ、地方移住のムーブメントが本当に定着するのかどうかは、疑問の余地がある。

都会に拠点を置いて、セカンドハウス的に使うのであれば、まだしも、完全に定住となると地域のコミュニティに入っていけるかがポイントになるだろう。総じて、田舎は閉鎖的だ。そこの仲間に入れてもらうためには、地域の行事や習慣に合わせなくてはいけないし、それができなければいつまで経ってもよそ者扱いになる。それができなければ、何かあったときの救援やゴミ出しなどで生活に支障をきたすこともあるだろう。これには相当の覚悟と努力がいる。

また、田舎は土地が安いので広い庭も手に入るが、雑草の威力はハンパない。放置しておくと人の背丈ほどある雑草をくぐり抜けて玄関にたどり着かなくてはならない。我が家などは、森に隣接しているので、整地した土地の一部が4年にして雑木林化している。まあ、それも趣があっていいのだが、それをゆるせるかどうかだ。虫も多いし猪や鹿も出る。そういう連中とつき合うことができなくてはならない。

まあ、そんな不便を楽しめるかどうかだが、幸いにも私たち家族は楽しめているし、むしろはまっているのでいいのだが、そうはいかない人も少なくはないだろう。

もうひとつ、大切になるのは、「働く」ということについての価値観の転換であろう。会社のために働いて、その見返りに報酬を得るということではうまくいかない。自分にしかできない価値を生みだすために働いて、会社にその価値を買ってもらうという考え方だ。そう考えると、売る相手を増やした方がリスク分散できるし、高収入も期待できる。兼業や副業というのは、そういうものだろうと思う。

定期的な収入を得られる仕事がなくなると不安であるという人は多いだろう。しかし、不確実性の高まる世の中になり、そして、コロナ禍で未曽有の不況が訪れるかも知れないわけで、定期的収入を得られる会社がいつ潰れてもおかしくない状況にある。そうなれば、定期的収入を得られる会社に100パーセント依存している方が、遥かにリスクが高い。むしろ、リスク分散のためにも、独立するとか、兼業や副業を増やして、自律できる自分を磨くことが、現実的だろう。

地方への移住もそんなこととセットで考えてみてはどうだろう。たぶんその方が、遥かに豊かな暮らしができるように思う。

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