オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

「その仕事、全部やめてみよう」は何を教えてくれるのか

»

HRT

この言葉をご存知だろうか。『Team GeekGoogleのギークたちはいかにしてチームを作るのか』という本で紹介されている「Humility(謙虚)」、「Respect(尊敬)」、「Trust(信頼)」を示す言葉だ。

"あらゆる人間関係の衝突は、謙虚・尊敬・信頼の欠如によるものだ"

Googleのエンジニアたちが、最高のチームをつくるために実践したことが記されている。

謙虚(Humility)

世界の中心は君ではない。君は全知全能ではないし、絶対に正しいわけでもない。常に自分を改善していこう。

尊敬(Respect)

一緒に働く人のことを心から思いやろう。相手を1人の人間として扱い、その能力や功績を高く評価しよう。

信頼(Trust)

自分以外の人は有能であり、正しいことをすると信じよう。そうすれば、仕事を任せることができる。

IMG_5833.jpg

『その仕事、全部やめてみよう』

私は、この本を書いた小野和俊さん(クレディセゾン・常務執行役員CTO)が、アプレッソの社長を務めていたころ、自分の本を書くための取材で伺ったときに、彼にHRTという言葉を教えてもらったことを記憶している。その後、何度かお目にかかっているし、一緒にパネルディスカッションに登壇したこともあるが、彼の話には、常にこのHRTの土台がしっかりと根を張っていた。

彼がセゾン情報システムズのCTOを務めていたとき、私は、「SIerなんてクソである」ぐらいのことを申し上げると(もちろん、そんなストレートには言わないw)、「斎藤さん、企業にはバイモーダルが必要なんです。この会社に来て、そのことが、とてもよく分かりました。」

バイモーダルとは、ガートナーが作った言葉で、「モード1:失敗が許されない領域に適した安定性重視」と「モード2:時代の変化にいち早く対応するスピード重視」が、情報システムには共に必要であり、トラディショナルなSIerだからこそ、それができるということだ。セゾン情報での実体験、たぶん銀行や製造業でデファクトとなっている圧倒的な品質を誇る転送ソフトHULFTを例えに話してくれたことを記憶している。

それぞれの違いを真摯に受けとめHRTの精神で、どうすれば異なるものを組み合わせればいいのか。それぞれがそこに存在することの必然は何かを考え、その「1%の本質」を見抜き、最高の組合せを目指そうとする。本書では、その実践を、様々な自らの体験に重ね合わせながら、語ってくれている。 特に第5章「職場は猛獣園である」を読むと、そのことがとてもよく分かる。

HRTという言葉が、何度も出てくるわけではないが、この本を貫いている大切なテーマと言えるだろう。

Practice over Theory(理論よりも実践)

この言葉も彼から教えてもらった。MITメディアラボ所長の伊藤穰一さんの言葉で、理屈や理論ではなく、実践、体験すればわかることは多い。そこで技術のエッセンスや可能性を感覚的に理解することができれば、理解は一気に深まる。

この言葉は、本書には出てこないが、この本のもうひとつのテーマかも知れない。セゾン情報システムズでの「ビットコイン」、クレディセゾンでの「お月玉」のはなしは、以前にも聞いていたが、本書でも紹介されているとおり、やってみて、初めてその意味や価値がわかり、まわりもまた、それを見て感じて動き出すことの醍醐味を語っている。

エンジニアであるなしにかかわらず、やってみなければ分からない。やってみることを通じて、気付き、学び、磨かれてゆく。特に正解の分からない新しい取り組みに於いては、なおさらのことだ。

DXだ、デジタル化だ、新規事業だといろいろと世間は賑やかだが、いろいろと調査し、企画し、議論しても何も見えてこない。とにかくやってみようが、一番の調査であり、最高の企画のネタを与えてくれて、成功のためのノウハウが磨かれる。その実践の大切さを本書の中では、幾度となく語られている。

彼は、言葉の職人だ。この本には、「うまいこと言うなぁ」がたくさん登場するし、本書に限らず、私は何度も見聞きしている(ここだけの話ではあるが、私も彼の言葉をいろいろと拝借しているが、これは小野さんには秘密にしているので、黙っていて欲しい)。

実にタイミング良く、適切な言葉を引き出し、すぽっとはまる言葉を紡ぎ出す。その語彙の豊富さと表現力は、圧倒的だ。そこから垣間見られる、彼の明晰さが、HRTの精神と結びつき、さらにはPractice over Theoryでやって見せるからこそ、人は彼に惹き付けられるのだろう。そうやって、彼の言葉は、人を巻き込んでゆく。

本書は、そんな彼の働き方、いや生き方を、彼自身の言葉で活き活きと語っている。そこについつい引き込まれ、あっという間に読み切ってしまった。そして、働くこと、生きることの楽しみ方が、いつのまにか脳みそに染み込んでいることにニヤリとする。

そんな小野さんにも、1つだけ改めて欲しいことがある。私も意外と喋りたがりだ。だから、もし次にパネルディスカッションを一緒にすることがあれば、もうすこし私に話す時間を頂けないだろうか(笑)。まあ、無理だろうなぁ。

【募集開始】第35期 ITソリューション塾

オンライン(ライブと録画)でもご参加いただけます。

ITソリューション塾・第35期(10月7日開講)の募集を開始しました。

新型コロナ・ウイルスは、肺に感染するよりも多くの人の意識に感染し、私たちの考え方や行動を変えつつあります。パンデミックが終息しても、元には戻ることはありません。私たちの日常は大きく変わり、働き方もビジネスも変わってしまうでしょう。これまでの正解は、これからの正解と同じではありません。ならば、事業戦略も求められるスキルも変わらざるを得えません。

本塾では、そんな「これから」のITやビジネスのトレンドを考え、分かりやすく整理してゆこうと思います。

特別講師

この塾では、知識だけではなく実践ノウハウについても学んで頂くために、現場の実践者である下記の特別講師をお招きしています。

=====

  • アジャイル開発とDevOpsの実践
    • 戦略スタッフ・サービス 代表取締役 戸田孝一郎 氏
  • 日本のIT産業のマーケティングの現状と"近"未来
    • シンフォニーマーケティング 代表取締役 庭山一郎 氏
  • ゼロトラスト・ネットワーク・セキュリティとビジネス戦略
    • 日本マイクロソフト CSO  河野省二

=====

  • 日程 初回・2020年10月7日(水)~最終回・12月16日(水)
  • 毎週18:30~20:30
  • 回数 全10回+特別補講
  • 定員 100名
  • 会場 オンライン(ライブと録画)および、会場(東京・市ヶ谷)
  • 料金 ¥90,000- (税込み¥99,000)
    • PCやスマホからオンラインでライブ&動画にて、ご参加頂けます。
    • 資料・教材(パワーポイント)はロイヤリティフリーにて差し上げます。

詳しくは、こちらをご覧下さい。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

【8月度のコンテンツを更新しました】
======
新規プレゼンテーション・パッケージを充実させました!
・「新入社員研修のための最新ITトレンド研修」の改訂
・そのまま使えるDXに関連した事業会社向け講義パッケージを追加 
・ローコード開発についてのプレゼンテーションを充実
・ITソリューション塾・第34期のプレゼンテーションと講義動画を改訂
======
新入社員研修
【改訂】新入社員のための最新ITトレンドとこれからのビジネス・8月版
講義・研修パッケージ
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとこれからのビジネス*講義時間:2時間程度
> 自動車関連製造業向けの研修パッケージ
======
【改訂】総集編 2020年8月版・最新の資料を反映(2部構成)。
【改訂】ITソリューション塾・プレゼンテーションと講義動画 第34期版に差し替え
>これからのビジネス戦略
======
ビジネス戦略編
【改訂】デジタルとフィジカル p.9
【改訂】イノベーションとインベンションの違い p.10
【新規】DXを支えるテクノロジー p.18
【改訂】DXはどんな世界を目指すのか p.19
【新規】「モノのサービス化」の構造 p.46
【改訂】ビジネス価値の比較
【新規】ビジネス価値のシフト p.48
【新規】自動車/移動ビジネスの3つの戦略 p.49
【新規】ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用 p.137
【新規】ナレッジワーカーの本質は創造的な仕事と主体性 p.138
【新規】コンテクスト文化から考えるリモートワーク p.139
【新規】リモートワーク成功の3要件 p.140

サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【改訂】IoTの定義とビジネス p.15

サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】ニューラル・ネットワークの仕組み p.68

クラウド・コンピューティング編
【改訂】クラウドに吸収されるITビジネス p.106
【新規】クラウド・ネイティブへのシフトが加速する p.107

開発と運用編
【改訂】開発の自動化とは p.94
【新規】ノー・コード/ロー・コード/プロ・コード p.95
【新規】ローコード開発ツール p.96
【新規】ローコード開発ツール p.97
【新規】ローコード開発ツールの 基本的な構造 p.98

下記につきましては、変更はありません。
 ITの歴史と最新のトレンド編
 テクノロジー・トピックス編
 ITインフラとプラットフォーム編
 サービス&アプリケーション・基本編

Comment(0)