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ヤバイIT企業を見分ける3つの踏み絵

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「セキュリティ対策」とは、ITを使いこなし、その価値を最大限享受しても安全・安心を維持する対策である。ユーザーに意識させ、負担させる「セキュリティ対策」、パスワードを何度も入力し、申請や承認のための手続きがやたらあって、業務を滞らせる「セキュリティ対策」も、ITの価値を毀損し、仕事の生産性を低下させるようでは、ITの価値を活かせないどころか、毀損している。

セキュリティのためにと様々な制約を課し、仕事の生産性を低下させている企業が、お客様の業務の生産性の向上に貢献できるわけがない。そんなIT企業に、仕事の依頼を続けることが、どれほどリスクが高いかを真剣に考えた方がいいだろう。

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「ヤバイIT企業」は、次の3つの踏み絵で判断できる。

PPAPを使っている会社

PPAPとは、添付ファイルを暗号化し、zip圧縮して添付ファイルにして送信し、その後、平文でパスワードを送付する手順のことだ。これはセキュリティを強化するどころか、セキャリティ・リスクを高めている。まず容易に理解できるのは、同じメールアドレスで暗号化もせず平文でパスワードを送る行為だ。添付ファイルを暗号化しておいて、パスワードは平文では意味がないことなど直ぐ分かる。また、zip暗号化されたファイルは、ウイルス・スキャンができない。メールアドレスをなりすましされた社長から、「今年度の事業方針」なるPPAPメールが送られてきたら、きっと多くの人が開いてしまうだろう。そこにマルウェアが埋め込まれていたら、社内にマルウェアが蔓延してしまう。

そもそも、ファイルとパスワードを相手に渡してしまうわけだから、ガバナンスを放棄したことになる。あとは、どうぞご自由にお願いしますとなるわけで、もはやそのファイルは送信者の管理の外に置かれる。ならば、PPAPなどしなくても同じではないか。

「いや、誤送信対策になる」という人もいるが、添付ファイルを送ると自動でPPAPにしてくれるツールを導入していては意味がない。

PPAPが使われるようになった経緯やなぜ意味がないかの詳細については、こちらが参考になるだろう。

こんなことは、少し考えれば分かることだが、ITに関わる仕事をしているにもかかわらず、そのことに気付かず、あるいは考えることもなく、PPAPを使っているというのは、無神経にもほどがある。

一事が万事である。PPAPITの当たり前にセンシティビティが低い証拠である。だとすれば、そういう企業にITについて相談しても、時代遅れの当たり前を前提に、意見を述べるだけの話しだ。もちろん、何でも新しければいいなんて思わないが、新しい常識を踏まえた現実解など出せるはずはないと、心得ておくべきだろう。そんなIT企業から、時代を先取りするような提案ができるはずがない。

自分のPCを仕事で使えない会社

VPNを介してVDIで業務をすることが、どれほど業務の生産性を低下させているかを実感している人は多いだろう。日常業務の生産性が、これで何割か低下するわけだが、そういうことを疑問に思わず、当たり前に使っている企業に、お客様の業務の生産性を語る資格はない。

特にエンジニアにとっては、生産性だけではなく、集中力も低下させ、モチベーションも下げるだろう。成果に結びつかない時間が積み上がっても、それは工数としてお客様に請求されるから、彼らにとっては、損失にはならない。むしろ時間がかかった分、売上が増えることになるので、有り難い話だ。

そもそもの話しだが、もはやVPNVDIでセキュリティが守れる時代ではない。IDやパスワードは容易に盗まれる。また、業務の付加価値を高め生産性を高める手段として、クラウド・サービスがあるわけだが、ファイヤーウォールに邪魔されて、試してみることもかなわない。こんな企業が、いまどきのITを使いこなせるわけがない。

生産性も低く、何年も前の常識で仕事をする会社に高いカネを払うのは、いかがなものかと思う。

使い勝手が良く、高速で高性能なPCを会社が使わせるのが基本であろう。それがかなわなければ、せめて納得できるスペックの自分のPCを使わせるべきだろう。そうでもしなければ、いまの当たり前をサクサクと使いこなすことはできないので、仕事は捗らない。

もはや時代は、VPNやファイヤーウォールに頼らないセキュリティが常識の時代になった。それが何か、どうすればいいかも知らないIT企業に仕事を任せるのは、あまりにもコストパフォーマンスが悪すぎる。

Zoomを使えない会社

Zoomはエンド・ツー・エンドの暗号化ができていないから危険なので使えません。」

そんなIT企業がPPAPで添付ファイルを送ってくることは多い。仕事の現場ではマスクを義務づけても、上司に誘われ呑み会に行って、マスクを外して大騒ぎしているのと、あまり変わらない。セキュリティの本質を知らず、過去の情報をアップデートしないで、思考停止に陥っている企業の典型だ。

Zoomを手放しで擁護するつもりなど毛頭ない。当然、Zoomにはぜい弱性も制約もある。しかし、Teamsにも、Meetにもぜい弱性も制約もある。完全無欠のサービスなど、世の中にはない。そんなZoomには3億人を超えるユーザーがいて、その数を増やしているのは、使いやすさと安定性に、他にはない魅力があるからだ。そんな事実に目をそらし、情報をアップデートしないIT企業が、ITの価値を活かせる道理はない。

Zoomが使えないことをどうこういいたいわけではない。問題があることを冷静かつ分析的に捉え、使う目的に応じて使い分ければいいわけだ。しかし、「zoomはダメ」が宗教となっているような企業では、そんな冷静さもなく、ITの価値を毀損してしまっているわけで、他についてもどう同様であろうことは、推して知るべしだ。

誰かが決めた、「決まり」を無批判に、あるいは無意識にしか踏襲できないIT企業は、その「決まり」を守るために必死だろう。それをなんとかしようとしても、例外に対処するための交渉や承認に多大な時間と労力を要するはずだ。そんなIT企業に、お客様の業績の向上や幸せなどを考える、心のゆとりはないだろう。DXだの、新しいIT活用を相談しても、自分たちにとって都合が良い時代に巻き戻されるだけの話しだから、そんなITベンダーに仕事を任せるのは、辞めた方がいい。

世は、DXに向けてまっしぐらだ。そのためのパートナーとして、どのIT企業を選ぶかを考える時、この3つを踏み絵にしてはどうだろう。コロナ禍を機に、このような現実を変えて行こうと動き出したIT企業も少なからずあるが、それができないIT企業も多い。それを見極めるためにも、この踏み絵は使えるはずだ。

後悔しないために、未来を確かなものにするために、確認することをお勧めする。

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