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オンラインで相手に伝えることの難しさ、それを克服する方法

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昨日のブログで「ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化」について解説した。

【図解】コレ1枚でわかるハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化

日本は、典型的な「ハイコンテクスト文化」であり、欧米は「ローコンテクスト文化」であるといわれている。

私は、年に100回を越える講義や講演をこなしているが、日本もまた、「ローコンテクスト文化」になりつつあることを実感する。例えば、受講者は、同じ会社であっても役職も違えば、やっている仕事も違う。オープンな勉強会やセミナーであれば、ますます前提となる知識も仕事への考え方も違う。DXや働き方改革など、新しい言葉が登場すると、それぞれが自分なりの解釈をして納得しているし、めまぐるしく変わる社会情勢に、多くの人たちが共通の理解に達する前に、また新たな事態に遭遇する。コンテクストを共有することが難しく、まさにお互いに理解し合えない、ローコンテクストな世界がいまの日本であり、講義や講演では、そういう人たちを相手にしなければならない。

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昨今は、オンラインの開催ばかりになった。オンラインでは、講師も受講者も共に五感を総動員することはできないので、受講者の様子や反応という、日本人であることの共通のコンテクストを読みとることもできないし、こちらがそれに合わせて、説明の流れや内容を変化させることも難しい。ますますローコンテクストであることが、際立ってくるし、そのことをこれまで以上に意識して、対処することが求められる。

こんな状況であっても、こちらのメッセージを伝え、強く印象づけることが、講師の仕事である。そのためには、これまでにも増して話す内容やチャート/図表の役割が相対的に重くなる。

勢いやノリではなく、論理的構造とそれを表現するわかりやすいチャートを描けるかどうかだ。また、声の抑揚や感情の起伏がマイクやカメラでフィルターされるため、身振り手振りを伝えにくくなる。これをカバーするためには、意識してオーバーアクションを心がけなくてはならない。そうやって、欠落する感覚の要素を代替し、伝えることではなく、伝わることをこれまでにも増して意識し、それをカタチにしなくてはならない

もうひとつ、難しいのは、共感や感動を生みだすことだ。共感や感動は、「心臓の拍動によって生みだされる電磁波が、周囲に居る人たちに伝播することで生じる」との研究があるようだが、それが事実かどうかはさておき、人がそばに居ることで、「雰囲気に呑まれる」というのは、誰もが経験していることだろう。オンラインでは、それができない。だから、言葉の表現やチャートに感情的要素、あるいは、共感や感動を生みだす要素を組み入れることで、その代替とする。

それは何も、大声を発することだとか、劇画的なタッチでチャートを描くことではない。自分の経験と結びつけて、自分がどう感じたのかを伝えることだ。つまり、自らの生々しい体験を伝え、彼らの想像力を惹起し、感情移入させることだ。あるいは、受講者が身近に感じることでの例え話、言って欲しくないタブー、初めて聞く話しなど、とにかく感情に揺さぶりをかける。そうやって講師と同じイメージを受講者に描かせ、これを共感や感動の土台とし、その土台の上で話を展開することで、共感や感動を演出することができる。

このようなことは、何もオンラインだけのことではない。リアルな場合でも同様ではあるが、そういう講義や講演の本質みたいなところが、オンラインによって一層際立たされることは間違えないし、それをリアル以上に意識してカタチにすることがオンラインでは大切になるだろう。

私たちは、ハイコンテクスト文化に生きていると錯覚しているのではないか。確かに、欧米諸国に比べれば、相対的には間違えではない。しかし、不確実性の高まりや急速なテクノロジーの進化、ビジネスのグローバル化は、人々の意識や理解をまだら模様にさせ、コンテクストの共有を難しくしている。家族であっても、お互いに理解し合うことが難しいのは、世代のギャップが、親世代と比べて大きくなっているからだろうし、夫婦共働きで異なる企業文化で日常の大半を過ごしているからであろう。

もはやローコンテクストな世界に生きていることを自覚し、それにふさわしいコミュニケーションを心がけることが大切だ。そんなローコンテクストな日常を生きているにもかかわらず、「以心伝心」や「空気を読む」、あるいは、「なんでこんなことが分からないんだ」や「分かっていて当然」といった、ハイコンテクストならではの前提に立って、行動し、うまくいかないことにイライラするのは、そろそろ考え直すべきかも知れない。

【参考】ローコンテクストなビジネス環境をハイコンテクストなやり方で乗り切ろうとする残念な人たち

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