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素人・一人前・プロ

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新入社員研修に関わるようになり、もう10年くらいになるだろうか。今年は、どこもオンラインでの講義となってしまったが、それでも彼らの熱気はディスプレイ越しに伝わってくる。むしろ、オンラインであるが故に、講師である私と、全ての受講者がフラットな距離になり、インタラクティブなコミュニケーションが取りやすくなった。チャットはまわりに目立ちにくい質問手段であり、ソーシャルメディア・ネイティブな彼らにしてみれば、気軽な質問手段となっていて、質問も活発だ

リアルな会場であれば、まわりの目が気になり、発言を控える人たちも少なくない。自宅とは違う緊張感の中で、余計なストレスを感じ、必ずしも、講義の環境としては、ベストとは言えない。もちろん、オンラインは、生々しい彼らの表情やリアクションが感じられないので、講師の側で、彼らの姿を想像して、意識して、無理して、テンションを高めなくてはならないところもあり、それはそれで疲れるのだが、受講者にしてみれば、むしろ学習環境としては、いいんじゃないかと思うことさえある。

そんな彼らは、総じて学習意欲が高い。その一番の理由は、「素人」であるということの自覚だろう。

現場体験はなく、仕事のなんたるかは想像の域を出ない。一方で、早く現場で仕事をしたいと思うが、不安でいっぱいだ。安全のために、とにかく、想像の世界で役に立ちそうだと思う知識を手に入れることに貪欲になる。なかには、「こんな時にはどうすればいいのでしょうか?」との質問もあるが、現場を知らない想像の質問であり、現実感のない状況であったりする。それでも知りたいのだ。

無知な素人であることの自覚が、学ぶことへの貪欲さを生みだしている。加えて、想像の世界でしかない仕事への漠然とした不安、現場に出て恥を掻きたくないという思い、直ぐに役に立ち活躍したいという情熱が学習意欲を高めている。

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そんな彼らも、23年も経てば、現場感覚を身につけ、一通りの仕事は、誰かに聞くこともなく自分でこなせるようになる。仕事の現場の8割はルーチンワークであり、企業の収益は、このルーチンワークで基本的なところは支えられているから、それができる自分は「一人前」として、独り立ちできるようになったと思えるようになる。

そうなると、新人の時のような学ぶことへの貪欲さを失ってしまう人たちも出てくる。もう少し正確に言えば、実際の仕事の現場で必要な知識は、それがなければ仕事にならないので、頑張って、無理してでも知ろうとする。しかし、もはや想像の世界はなくなり、忙しい中で学ばなくてはならないわけだから、結果として、効率を重視し学ぶ範囲を自ら狭めてしまう。そして、やがては、そんなことさえも、意識しなくても経験と勘でこなせるようになり、学ぶことへの意欲を失ってしまう人たちも出てくるようだ。

ルーチンワークができるようになれば、もはや意識しなくてもよくなるから、つぎの新しいことを意識する余裕が生まれ、新たな学びの機会を増やしてゆけるわけだが、残念なことに、多くの人たちは、その学びの機会をその応用の範囲で熟練することに傾けてしまい、基本やその応用の範囲を超えて、新たな学びを意識することをやめてしまう。それでも、給与分の働きができているので、とりあえずは問題にはならない。また、応用も意識することなくこなせるので、仕事の要領もいい。そうやって、ルーチンワークとその応用を確実にこなせる「一人前」となり、そのまま歳を重ねてゆく人もいる。

やがてそういう人たちは、「役に立たないおじさん」や「働かないおじさん」になってゆく。給与が高い割には業績や成果があがらず、社会的な価値も低く、外に出ても通用しない人たちだ。そういう人たちは、「一人前」の段階に甘んじてしまい、自ら「学び止め」をしてしまった人たちだ。

世の中の変化に関心を持たず、自分のやってきた世界でのみ熟練の度を極めてきた人たちは、世の中の変化に対応しようとする取り組みに抵抗を示す。たとえ言葉では、「変わらなくてはいけない」と言っても、どう変わらなければならないかを学んでいないので、行動に起こせない。変化の早い時代にあっては、ルーチンワークなどあっという間に陳腐化する。だから、「役に立たないおじさん」や「働かないおじさん」になってしまう。

そういう人は、従来からの仕事をしてもらうには重宝であり任せて安心な存在だが、新しいことや例外的なことに対処する能力は磨かれていない。だから、新しいことや大切なことを任せることができない。また、新たな学びを怠っているので、古いやり方で何とかこなそうとするので、時にお荷物になってしまう。変化の速い時代になると、残念ながら、そういう人たちが目立ってしまう。

「一人前」は確実にルーチンワークをこなしているので、そこで働いた期間が長いほどに会社への貢献は大きいから、それはそれで評価されるべきだ。しかし、そのことが若い人たちがモノを申せない理由となり、変革を求められると抵抗勢力となってしまうことがある。これがやっかいだ。抵抗しなければ、自分のできることがなくなってしまう。自分の存在意義がなくなってしまうからだ。それが怖いし、辛いのだ。せめて、前に進もうとする彼らの、足かせにはならないで欲しいと思うのだが、「新しいコトにチャレンジしろ」と言う割には、自分の常識から逸脱させようとしないわけで、ここがやっかいなところだ。

そんな「一人前」の先にあるのが「プロ」の段階なのかもしれない。

「プロ」の人たちは、例え「一人前」として仕事をこなせるようになっても、つねに自分の不足や未熟を見つけ出し、「意識」して学び続ける人たちだ。学び続けることで、世の中の常識や変化を知り、常に自分や会社の不足や未熟を意識しつづけようとしている。とても謙虚である。

こういう人たちは、会社や自分に対して批判的である。だからといって会社の悪口を公然と言ったり、評論家然として会社の悪口を言ったりはしない。悪口や評論家は、学び続けてこなかった歳を重ねた「役に立たないおじさん」や「働かないおじさん」に見られ傾向がある。文句を言うならば自分で何とかすればいいではないかと思うのだが、学んでいないので表面的な情報しかなく、考察も浅く、批判や評論家以上のことはできない。

こういう人たちに共通する特徴は、「質問をしない」ことだ。「質問をしない」かわりに、いろいろと話そうとする。新たな知識を求めることより、知識の浅さを隠すことに気が向いてしまうのかも知れない。

「プロ」は、批判的に状況を捉え、見つけ出した課題を自分の与えられた職責の範囲で、あるいはそれを拡張して解決しようと試みる。そうやって、企業や組織の改革を推し進めてゆく。例え文句は言っても行動が伴っている。だからそういう文句は人の心を動かす力を持っている。

また、人のつながりが豊富な人が多い。それは社内に留まらず、社外に人的なネットワークを広く持っている。こういうつながりが、その人に広い視野を与え、自分を冷静に評価できる目線を与えるのだろう。それが、不足感や未熟感を常に生みだし学ぶことへのモチベーションとなる。だから、もっと知りたいという衝動に駆られ、とにかくよく質問する。また、他人は自分とは違う常識や知恵を与えてくれる。時にして助けてくれる。それもまたその人の能力として評価される。

こういう人を企業は必要としているので、評価は上がり、出世もする。例え他の会社へ移っても、独立しても、基本的な「プロ」としての行動様式は変わらないので、成果をあげ続けることができる。

「一人前」を自覚した人の中には、「自分をもっと成長させたい」、「いまの自分の殻を破り新しいことに挑戦したい」、「自分の可能性を確かめたい」などの想いで転職しようとする人たちがいる。そのことは、悪いことではないし、その志は素晴らしい。

しかし、「一人前」だから他でも通用するだろうと考えるのは甘い。例えいまは「一人前」でも、「プロ」としての行動パターンを会得できていない人が職場を変えても、自動的に自分の思いを達成できるわけではない。

他の会社に入れば、まずは「素人」の段階からはじめなくてはならない。もちろん新入社員と違い基本的な仕事の常識はわきまえているので、「一人前」にステージアップするのにさほど時間はかからないだろう。しかし、そこでもし「仕事ができるようになった」と満足してしまい、新しいことを学ぶことを怠れば、そこでもしょせんは「一人前」止まりであり、自分をさらに高いステージにあげることはできない。

ITの世界に身を置いていれば分かることだが、その変化は加速度的であり、ITの社会的価値は、これまでにも増して大きくなっている。過去のやり方があっという間に変わってしまう業界にあって、過去の大プロジェクトの実績や特定の言語や旧態依然の開発スキルや経験があるといった「過去」で評価されることもない。

  • 激しい業界の変化のメカニズムを理解し将来に対して明確な展望を持っている。
  • 時代の変化に合わせて自らのスキルを変え続けている。
  • 社外に広い人的なネットワークを持っている。

すなわち「未来」への可能性を持っている人こそが評価される。

いまの自分の段階はどこか、「一人前」に満足して「学び止め」はしていないか。時代の変化は加速度を増している。過去の経験や実績が、いまどれだけ通用するのか。そんなことを問いかけてみてはどうだろう。

問いかけるとは、ただ考えることではない。考えたことを行動に移してみることだ。頭の中で考えているだけで、具体的なアウトプットがなければ、客観的に自分を「見える化」はできないから事実を冷静に評価できまい。

フランスの小説家・ポール・ブールジェ (Paul Bourget)は次のような言葉を書き残している。

「自分の考えたとおりに生きなければならない。そうでないと、自分が生きたとおりに考えてしまう」

日々の雑事に流され気がつけばそこにそんな自分がいる。それを自分の人生であると受け入れるしかなくなってしまう。それでいいのだろうか。学び、考え、行動する生き方をしなければ、いくら考えても考えたとおりの生き方などできないということだ。

100年人生の時代を迎え、テクノロジーの進化は過去の常識をどんどんと上書きしている。そんな時代に学び、考え、行動することの大切さは、これまでにも増して高まっている。AIの時代になっても、意志を持ってそんなことができるのは人間しかできない。そういう人が求められ、それが「自分の考えたとおりの生き方」を自分で創ってゆくことになる。

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新規プレゼンテーション・パッケージを充実させました!
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【新規】デジタル・トランスフォーメーション時代の最新ITトレンドと「共創」戦略(241ページ)*講義時間:6時間程度
>DXの本質と「共創」戦略を解説するとともに、それを支えるテクノロジーであるクラウド、AI、IoT、アジャイル開発、人材の育成などについて、広範に解説します。
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