業績とは業績評価基準の巧拙の結果に過ぎない
「クラウドで案件を獲れる提案力を身につけさせたい。だからそのための研修をお願いしたい。」
こんなご相談を頂くことがあるが、もしあなたが経営者や営業の責任者であるならば、この考え方は間違っていることを肝に銘じておくべきだ。
例えば、AWSやAzureなどでの構築や開発、運用の仕事は売上や利益が減少させる。開発ツールは充実し生産性は高く、運用も自動化されるからだ。5年毎のリース更改に伴う需要も消滅する。一方で、業績評価基準が売上と利益のままでは、彼らの努力は報われない。クラウドを売るほどに自分の業績の評価が下がり査定が下がってしまう。これでは、提案力を身につけたいというモチベーションは生まれない。
経営者はあるべき論を語り檄を飛ばすが、業績評価基準は旧態依然のままというダブルスタンダードでは現場の不信を増長することになるだろう。このような状況で提案力など身につくはずはない。
会社というのは、そこで働く人たちが幸せになるための虚構である。それがあるから、その会社で働き続けている。それにもかかわらず働く社員を不幸にする虚構を持ち続けることに意味があるのか。世の中が大きく変わってしまったいま、過去の虚構に基づく業績評価基準のままでは社員を不幸にしてしまう。
提案力を強化するためには、自らの提案力を伸ばさなくては「ヤバイ」という現場の状況を作り出すことだ。それは、ITの新しい常識を前提に事業構造を転換し、それに合わせた業績評価基準を作り、言行一致を実現しなければならない。これは、経営者の役割だ。
デジタル・トランスフォーメーションも同じこと。それが何をすることなのかを正しく理解し、ふさわしい業績評価基準を丁寧に作るべきだろう。
「営業の意識が足りない。スキルも不足している。」
だから業績が伸びない、だから提案力を強化したいというのは、経営者や管理者の怠慢だ。これでは、優秀な人材は会社を離れてゆく。これまでの業績評価基準が過去にあっては成果をあげたとしても、これからも通用すると考えるのは愚かな思いこみでしかない。
事業施策に最適化された業績評価基準を持てば、現場は自ずとそれにふさわしい行動をとり、必要な能力を自らが磨いてゆき、結果として、業績が達成される。業績とは業績評価基準の巧拙の結果に過ぎないのだ。
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