いまだからこそ見えてくる「本質的魅力」

「売上は落ち込んでいます。でも、テイクアウトもなかなかの売上になるし、時短とは言え、常連さんは、いつもより頻繁に顔を出してくれますので、何とかなっています。」

吉祥寺にある居酒屋の店主からこんな話しを聞いた。この店は食材にこだわり、いつもアッと言わせてくれる料理を出してくれる。テイクアウトの弁当も決して安くはないが、なくなると困るのでと、早くから注文してまとめ買いをする人も少なくないという。

「一旦店を閉めようと思いました。でも、思いのほか、お客様は来て下さるので、取りあえず、これでやってみようと思っています。」

八ヶ岳南麓にある蕎麦屋で、普段なら観光客が押し寄せている。いまは、観光客はまったく来ないが、この時とばかりに地元の人たちが来てくれるというのだ。

「ほんとうにどうなるかと思いましたが、店に来られないお客様からの、通販での注文が増えていて、売上はそれほど落ちずにすんでいます。」

八ヶ岳南麓にあるコーヒー豆の自家焙煎をやっているお店の店主が話してくれた。徹底したこだわりと丁寧な仕事に、私も常連のひとりとなっている。

マーケットは間違えなく縮小している。それでも、こうやって売上を維持できる店に共通しているのは、「本質的な魅力」を輝かせていることだろう。徹底したこだわりによって、自分たちの仕事の本質を極めつづけている人たちだ。経済の原理だけではなく、食材へのこだわりや磨き上げた技を通じて、お客様に最高の体験を届けようとしている。「ここしかない」と思わせてくれる何かがある。そういう、「本質的な魅力」があるからこそ、ありがとうと思えるし、また来ようと思う。その想いは、いまのような状況になって何もかわらない。

こういう時期だからこそ、お客様は厳選して店を選ぶ。その基準が、「本質的な魅力」ということなのだろう。

店内で食べようが、弁当であろうが、この「本質的な魅力」は、輝いている。考え方によっては、店だけではない、新しい魅力の見せ方が、弁当というカタチで加わったともいえる。

この状況で、廃業してしまった店もたくさんあるわけだが、こうやって、むしろその魅力を際立たせている店もある。その事情は様々で、一般化するにはむりがあるだろう。しかし、「本質的な魅力」を磨き、輝かせ続けている店が、こうやってなんとかなっているという事実は、１つの教訓にはなるだろう。

さて、自分の「本質的な魅力」は磨いているだろうか、輝いているのだろうか。「あなたしかいない」と言ってもらえるだけの何かを提供し続けているだろうか。飲食業にかぎらず、この原理原則は、通用するはずだ。こういうときだからこそ、考えてみたい。

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