あなたはこの問いに答えることができるだろうか
「いまあなたが書いているプログラム・コードは、何をするためのものですか?」
あなたはこの問いに答えることができるだろうか。
人間は問いを発し、機械は答えを作る
機能のことを訊いているわけではない、お客様の業務でどのように使われ、どのような役割を果たし、それがいかなる業務上の価値を生みだしているかという質問だ。
コーディングやテストは自動化され、インフラやプラットフォームも要件さえ指定すれば、構築や運用はクラウドに任せることができる時代になった。そんな時代でも、人間にしかできないことがある。それは、何のためにこのシステムを作る必要があるのかという問いを発することだ。
お客様のビジネスは何か。そのビジネスを成功させるための要件は何か。それを実現するためには、なにができなければならないのか。人間の役割は、この問いを発することであり、答えを作るのは機械に任せようという時代になる。
もうその兆しは現れている。フレームワークやプラットフォームの充実により、少しのコードを書くだけで目的とするアプリケーションを実現してくれるようになった。超高速開発ツールを使えば、入力画面や帳票、アウトプットを定義するだけで、プロセスやデータベースを作ってくれる。サーバーレスあるいはFaaSは、インフラやプラットフォームの構築や運用を不要にした。このようなトレンドの先を見据えると、自ずと行き着く先は見えてくる。
迫り来るビジネスのデジタル化
そうしなければならない理由がある。それは、ビジネスのデジタル化がすすむためだ。ビジネスのデジタル化とは、業務のあらゆるプロセスを人手に頼ることなく、入口から出口まで一貫してソフトウエアに任せようという取り組みだ。
ビジネスの不確実性が高まり、変化に即応できるかどうかが企業の生き残りにとって決定的な要件となる。だから人間がビジネス・プロセスに関わることはスピードに於いて致命的なボトルネックになる。そこで、ビジネス・プロセスに人間が関わることを極力排除し、システムに任せてしまうことで、変化への即応力、つまりビジネス・スピードを手に入れようというわけだ。これが、ビジネスのデジタル化だ。
アマゾンはそんなビジネスのデジタル化の最先端を走り、流通や運輸、金融など、様々な業種にとって脅威の対象となっている。アマゾンの子会社であるAWSのクラウド事業もまたITビジネスのデジタル化と捉えることができるが、これもまたITビジネスに大きな変革を迫っている。ビジネスのデジタル化は、企業の生き残りと成長をかけた取り組みになろうとしている。
このようなビジネスのデジタル化を実現するには、沢山のプログラム・コードが必要となる。その開発や変更、それに伴うインフラやプラットフォームの構築や変更、そのテストや運用を人手に任せていては、対応しきれるものではない。だから機械に任せようというわけだ。
しかし、「なぜ」あるいは「なんのために」という問いを機械が発することはない。例えば、昼食の時間になり、今日はカレーが食べたくなったとしよう。あなたは、Googleで「近所の美味しいカレー」と入力し検索するだろう。すると、Googleはお店の一覧とランキングを教えてくれる。しかし、「何を聞きたいのか教えて欲しい」あるいは「自分は何をしたいのか教えて欲しい」とGoogleで検索しても答えは返ってこないだろう。これと同じで、何をしたいのか、何を実現したいのかは、人間の知識や常識、それに裏打ちされた意志によって決めなければならない。
誰かが決めたことをコードにする仕事はやがて機械に置き換えられる。それよりも、お客様のビジネスの成功のために何をすべきかを問い、どのようなシステムを実現すればいいのかをお客様に提案し、お客様との対話を通じて最適解を見つけ出してゆくことしか残された道はない。
難しいのは新しい考えになじむことではなく、古い考えから抜け出すことだ
「いまあなたが書いているプログラム・コードは、何をするためのものですか?」
この問いに答えられないとすれば、お客様の業務が何を実現したいのかを理解していない証拠だ。まずは、この問いに答えようとする感性とお客様の業務についての知識を持つことだ。それが、自らを次のステージへと成長させるきっかけとなる。
テクノロジーの進化のスピードは驚くほど早い。そして、その速さは変化の過程ではなかなか気がつかないものだが、振り返るとあっという間であることに驚かされる。
例えば、2008年7月11日、iPhone 3Gの国内販売が始まった。それ以前にスマートフォンなど存在していなかった。あれからわずか10年ほどで、スマートフォンは日本国民の9割近くが保有するまでになった。電話やメール、チャットなどのコミュニケーション、情報検索や地図、ゲームや動画・音楽の視聴などに手放せない存在となっている。また、交通系カードやクレジット・カード、さらにはマイナンバーカードとしても使えるようになるという記事もつい先日ニュースになっていた。
10年とは、その程度の時間でしかない。そして、冒頭に申し上げたような変化もまたそんな時間間隔で当たり前になっているだろう。
あなたは、そんな変化を実感しているだろうか。そのための備えをしているだろうか。自分のスキルをそんな時代にふさわしいステージに引き上げるための努力をしているだろうか。
- そんなに急には変わらない。
- そんなことは夢物語だ。
- 根拠なんかない。
難しいのは、新しい考えになじむことではなく、古い考えから抜け出すことだ。これが一番難しい。なぜなら、自らの世界観を改めるよりも、現実を調整し自分に都合のいいように変えてしまうほうが楽だからだ。しかし、いくら目や耳を閉ざしても、時代はスピードを増して進んでゆく。
まずは冒頭の問いに答えられる程度のお客様の業務への関心を持つことから始めてみてはどうだろう。そして、お客様の未来のために、お客様の業務のあるべき姿を描き、お客様にあなたの問いをぶつけてみてはどうだろう。そんな取り組みの積み重ねが、あなたを次の時代に求められる存在へと成長させてくれる。
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