なぜ、君たちはITトレンドを学ぶのか(1)学びの4段階
新入社員研修の冒頭、こんなテーマで話をしている。受講者は、ITベンダー/SI事業者に採用された人たちだ。
3ヶ月前のことを思い出して下さい。新入社員研修を、いまこうして、オンラインで受講するなんて、想像できたでしょうか。繁華街からは人がいなくなり、世界経済は、壊滅的ダメージを受けることになりました。この状況を予測できていた人など、ほとんどいなかったでしょう。
歴史を遡れば、パンデミックは何度も起きているし、何も珍しいことではありません。ただ、100年前といまとで大きく異なるのは、情報の伝わるスピードです。そのことが、世界の常識をあっという間に変えてしまいました。つまり、ウイルスが肺に感染するよりも、ネガティブな情報が、速く、広範に、深く、人間の意識に感染し、人々の行動を大きく変えてしまったのです。
このことは、ウイルス以上の被害を私たちにもたらすかも知れません。例えば、お店を開けられなければ、お客様は来ない、お客様が来なければ、売上はありません。商品を納めていた問屋さん、それを作っていた工場や農家などの生産者も収入を得られなくなります。社員やバイトは解雇しなくてはなりません。資金繰りに行き詰まり、店を閉める、倒産してしまうところもあるでしょう。そういうひとたちの中には、過労や心労で体調を壊す人もいるかも知れません。中には、自ら命を絶ってしまう人もいるでしょう。
その被害の大きさは、ウイルスそのものが人を殺すよりも、たくさんの人を死に追いやってしまうかも知れません。私たちは、いま、そんな事態の只中に居るのです。
一方で宅配事業者や運送会社は、仕事が増えて、捌ききれません。医療従事者の疲労は極限に達し、検査機材や検査に関わる人たちもまた、仕事量が劇的に増えています。その人たちの健康もまた、厳しい状況に晒されています。
想像力を働かせてください。何が、どこにつながり、どのような関係を創り出しているのか。それが、私たちの日常や社会、ビジネスに、どのような影響を与えるのかを。ものごとを「理解する」とは、このような考えを頭の中に張り巡らせることができるかどうかです。
「学ぶとはどういうことか」(著・佐々木 毅)」に、「学びの4段階」として、次のことが、書かれています。
知る:事実ないし確実とされている知識や情報を「知る」こと、記憶すること。
「クラウド」を知らない人はいないでしょう。では、それをあなたは説明できますか。どのような仕組みなのか、どのような整理分類の仕方があるのか、どのような技術があるのか、なぜいま世の中はクラウドに夢中なのかを、あなたは説明できますか。「知る」とは、これができることです。
理解する:個々バラバラな事象がお互いに一定の関係を持つものとして見えてくる、あるいは、見えるようにすること。
クラウドは世の中を大きく変えました。先ほど紹介した「意識のパンデミック」もクラウドが多分に関わっています。AIやIoTもクラウドなくして使いものにはなりません。ビジネスのあり方、そしてこれから皆さんがこれから関わる、開発や運用、システム提案もクラウドが前提になります。なぜ、そうなるのでしょうか。お互いの役割分担や関係はどうなっているのか、説明できるでしょうか。「理解する」とは、これができることです。
疑う:既存の分析を「疑う」ことから新しい「問いかけ」が生じ、それが「新しい」事実の発掘につながる。
その「理解」は本当に正しいのでしょうか?これまでの解釈には、合理性があるかもしれません。でも、本当に正しいのでしょうか。そもそも、まだ気付いてないことがあるのではないでしょうか。なぜ?どうして?と感じられるでしょうか。講義を聴いて、講義の内容に質問を持つことができるでしょうか。「疑う」とは、これができることです。
超える:「疑う」という段階を超えて、事実や現実に対置される新たな「適切な」可能性を追求し、時には新しい境地に帰依すること。
「疑う」ことで終わってはいけません。新しい関係を見つけ出すことです。それを説明できるようになることです。「超える」とは、これができることです。
世の中はめまぐるしく変化し、進化してゆきます。昨日までの常識、今日の常識、明日の常識は違います。そして、この変化のスピードは、ますます速くなって行きます。私たちは、そんな時代に生きているのです。
生きるだけなら、そんなにしゃにむにならなくてもいいかもしれません。でももし、自分の可能性を最大限に発揮したい。成功のチャンスをつかみたいと思うなら、「学びの4段階」を自分の生活の習慣にすることです。
「学びたくない、だけど成功したい」は、都合が良すぎる気がします。そんなことは、当たり前だと思うでしょうが、意外とそうではない人たちが、世の中には、たくさんいます。特に、仕事がある程度こなせるようになり、一人前に稼げるようになると、「もうこれで十分」あるいは「仕事に役立ちそうなことだけ学ぼう」と、学びの意欲をなくしたり、自分の評価や仕事に役立つかどうかで、学びを選択したりする人たちがたくさんいます。ほんとうに残念なことです。
変化の速い時代です。自分が学んだ知識やスキルは、あっという間に陳腐化し、不良債権化します。不良債権は、どんどんと捨て去って、新しい知識やスキルを身につけ、アップデートし続けなければ、チャンスを手にすることは、難しくなるでしょう。
何を学べば、待遇が良くなるのか、仕事に有利なのかで学びを選別すべきではありません。基本や基礎、原理原則を学ぶことです。ITであれば、数学やコンピュータサイエンスであり、経済や経営、政治なども原理原則です。芸術も人や社会の基本と言えるでしょう。いまのはやりで、学びを選択すべきではありません。
もうひとつ大切なことは、自分が面白いと感じること、あるいは、少しは得意かも知れないと感じることに、取り組むことです。
基本や基礎と面白いと感じることのかけ算を見つけられたら、それは本当に幸せなことです。ただ、それに出逢うためには、とにかく学びの機会を、努力して増やすしかありません。
いま、ここに居る皆さんの寿命は、100年です。残りの80年は、これまでとはまったく違う変化が訪れるはずです。常識なんて、あっという間に陳腐化してしまいます。
だからこそ、学び続けなくてはならないのです。「学びの4段階」とは、そんなあなたの人生をよりよく生きるための、原理原則の1つになると思います。
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- 河野省二 氏/日本マイクロソフト CSO
- 日本のIT産業のマーケティングの現状と"近"未来
- 庭山一郎 氏/シンフォニーマーケティング 代表取締役
お願い
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実施要領
- 日程 初回2020年5月13日(水)~最終回7月22日(水)
- 毎週 18:30~20:30
- 回数 全10回+特別補講
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ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー
【4月度のコンテンツを更新しました】
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・以下のプレゼンテーション・パッケージを新規公開致しました。
> 2020年度・新入社員のための最新ITトレンドとこれからのビジネス と事前課題
>デジタル・トランスフォーメーション 基本の「き」
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>これからの開発と運用
新規プレゼンテーション・パッケージ ======
【新規】2020年度・新入社員のための最新ITトレンドとこれからのビジネス
【新規】上記研修の事前課題
【新規】デジタル・トランスフォーメーション 基本の「き」
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【改訂】総集編 2020年4月版・最新の資料を反映しました。
【改訂】ITソリューション塾・プレゼンテーションと講義動画
>これからの開発と運用
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ビジネス戦略編
【改訂】DXとPurpose p.21
【改訂】Purpose:不確実な社会でもぶれることのない価値の根源 p.22
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは何か p.29
【新規】「何を?」変革するのか p.30
【新規】「"デジタル"を駆使する」とは、何をすることか p.31
【新規】「共創」とは、何をすることか p.32
【新規】NTTとトヨタ 「スマートシティプラットフォーム」を共同構築 p.62
【新規】「両利きの経営」とDX戦略(1) P.82
【新規】「両利きの経営」とDX戦略(2) P.83
【新規】学ぶべき領域 p.272
ITインフラとプラットフォーム編
【新規】サイバー・セキュリティ対策とは p.132
【新規】サイバー・セキュリティ対策の目的 p.133
【新規】サイバーセキュリティ対策の構造 p.134
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】機械学習の仕組み p.61
【新規】モデルとは何か p.62
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下記につきましては、変更はありません。
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