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「AI恐慌」への備えはできているか?

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  • もっと業務の上流からお客様に関わらなければならない。
  • 「共創」をすすめお客様と一緒に新たな価値を産み出してゆかなければならない。
  • イノベーションを生みだすことに取り組んでゆかなければならない。

そのためにどのような具体的な取り組みをしているだろうか。

「若い連中には話しているのですが、現場は動こうとしてくれません。意識が低いのでしょうか。いくら話をしても危機感を持ってくれません。どうすれば、彼らを変えてゆくことができるでしょうか。」

経営者や幹部の皆さんを相手にした講演や研修で、こんなご質問を頂くことがある。これに対して、私は次のように答えている。

「業績評価の基準を変え、組織を作り替えることです。もし、売上や利益を業績評価の唯一の基準にしているなら改めるべきです。経済が成長している時代であれば、それでも業績は伸びてゆきます。もはやそういう時代ではありません。多様な取り組みにチャレンジし、失敗も許容されるように、業績評価基準を多様化することです。それこそが経営者や幹部の役割ではありませんか。そういうこともせずに現場の自助努力に委ねてはいないでしょうか。」

経営者や幹部がやるべきことは、自分たちの未来について明確なビジョンを示すことだ。それを実現するために業績評価の基準を変え、組織や体制を作り替えることだ。言葉で危機感を煽るのではなく、カタチを作り、それに従えば自分も評価されるというような、現場が自律的に動く仕組みを作ることが経営者の行うべきことであろう。自分の役割を棚に上げ、現場の自助努力に頼っているとすれば、経営者や幹部は猛省すべきだろう。

だからと言って、そういうことができない経営者や幹部を評論家のように批判し、自分は何も行動しないというのも如何なものかと思う。与えられた自分の職責の中で、知恵や工夫を凝らして業績目標を達成するための努力を怠るべきではない。そのための知識やスキルを身につけるのに、会社に頼る必要はない。

テクノロジーの価値や意味を理解し、お客様の経営者と話をし、業務について学び、知恵ある人たちと交流して新しい知恵や気付きを手にすることはAIではできない。そして、お客様と一緒になって、お客様の未来を描き、イノベーションを加速することは、経営者に頼らなくてもできる。

ひとつの会社がビジネスに必要な資源を全て自前で揃えられる時代ではない。テクノロジーは多様化し、その適用範囲も広範に及ぶ。新しい知識は会社だけで学ぶことはできず独学で学ばなくてはならない。自社だけではできないことは増え、専門スキルを持った企業とのパートナーシップがなければ、お客様のニーズを満たすことはできない。そのための人脈作りに取り組んでいるだろうか。社外のコミュニティや勉強会で新しい知識や気付きを得ること、あるいは新しい人のつながりを積極的に創り出すことに取り組んでいるだろうか。これはAIにできることではなく、経営者に頼る話しでもない。

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「企業は人手不足で頭を抱えているのに、社会には失業者があふれている」

"東ロボくん"プロジェクトを主導した国立情報学研究所の新井紀子教授が、自著「AI vs. 教科書が読めない子どもたち(東洋経済新報社・2018)」にて、こんな未来を予測している。

「せっかく新しい産業が起こっても、その担い手となる、AIにはできない仕事ができる人材が不足するため、新しい産業は経済成長のエンジンとはならない。一方、AIで仕事を失った人は、誰にでもできる低賃金の仕事に就職するか、失業するかの二者択一を迫られる。」

新井教授は、その先には「AI恐慌」とも呼ぶべき事態が起こると述べている。

AI恐慌」が起こるかどうかはともかくとしても、人材の選別淘汰が進んでゆくことは間違えないだろう。パターンの決まったシステム・テストや運用管理、与えられた機能を実現するプログラミングなどの"知的力仕事"は、早晩人間がやるよりも機械にやらせた方が、コスト・パフォーマンスは高くなる。既にインフラの構築や運用は、AIに頼らなくてもクラウドや自動化ツールに頼った方が生産性の高い時代となった。

一方で、ビジネスのデジタル化が進めばシステムの開発テーマは劇的に拡大する。処理すべきデータ量も指数関数的に増えてゆく。この状況に対応するためには、AIや自動化に頼らなくてはならない。そのためには、何をするかのテーマを設定し、どのようにAIや自動化の仕組みを駆使すれば、この状況に対応できるかを考える人材が必要となる。また、どのようにテクノロジーを駆使すれば、ビジネスの付加価値を高め、競争優位を実現できるかを考える人材もこれまでにも増して求められる。

そんなAI時代にも必要とされる存在になる備えはできているだろうか。

スマホが世の中に登場して10年ほどで、ビジネスの常識は大きく変わった。たぶん来たるべき10年で、テクノロジーはもっと大きな変化を社会に強いるだろう。私たちは、そこから逃れることはできない。ならば、やるべきことは、分かっているはずだ。

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ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

【2月度のコンテンツを更新しました】
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・DX関連のプレゼンテーションを大幅に拡充
・セキュリティと5Gについても新たなプレゼンテーションを追加
・講演資料「デジタル・トランスフォーメーションの本質とプラットフォーム戦略」を追加
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総集編
【改訂】総集編 2019年2月版・最新の資料を反映しました。
パッケージ編
講演資料「デジタル・トランスフォーメーションの本質とプラットフォーム戦略」
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ビジネス戦略編
【新規】デジタル化:デジタイゼーションとデジタライゼーション p.4
【改訂】デジタル・トランスフォーメーションとCPS p.18
【新規】デジタルトランスフォーメーション 2つの解釈 p.19
【新規】DXとPurpose p.20
【新規】DXの基本構造 p.30
【新規】DX実践のステージ p.35
【新規】デジタイゼーションとデジタライゼーションとDXの関係 p.36
【新規】オープン・イノベーション事例:MONET Technologies p.52
【新規】オープン・イノベーション事例:TOYOTA WOVEN CITY p.53
【改訂】改善・最適化戦略/変革戦略とDX p.72
【新規】エコシステム(生態系)とは何か p.84
【新規】プラットフォーム・ビジネスを成功させる3つの要件 p.85
【新規】共創とプラットフォーム p.86
【新規】プラットフォームの事例:エーザイ・認知症エコシステム p.87
【新規】プラットフォームの事例:エムスリー株式会社 p.88
【新規】DXとは(まとめ)p.87
【新規】共創ビジネスの実践 p.185
【新規】内製化の事例:クレディセゾンのサービス「お月玉」 p.186
【新規】内製化の事例:株式会社フジテレビジョン p.187
【新規】共創の事例:トラスコ中山 MROストッカー p.188
【新規】「営業力」は「大好き力」 p.249
【新規】営業目標達成を支える2つの要件 p.250
【新規】「活動生活」の3部類 p.251

ITインフラとプラットフォーム編
【新規】シングル・サインオン(SSO)・システム 1/2 p.111
【新規】シングル・サインオン(SSO)・システム 2/2 p.112
【新規】Microsoftのセキュリティ・プラットフォーム p.119
【新規】移動体通信システムの歴史 p.255
【新規】5Gのビジネスの適用領域 p.256
【新規】5Gの普及段階 p.261
【新規】5GによるIT/SIビジネスへの影響 p.267

サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】スマート・スピーカー p.53
【新規】新しい学習方法 p.106

クラウド・コンピューティング編
【新規】オンプレとパブリック・クラウドの関係の推移 p.106

テクノロジー・トピックス編
【新規】ニューロモーフィック・コンピュータ p.62

下記につきましては、変更はありません。
 開発と運用編
 サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
 サービス&アプリケーション・基本編
 ITの歴史と最新のトレンド編

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