講師を目指すも仕事にならないのはなぜか・この3つができれば大丈夫
「講師を始めたのはいいが、長続きしない人がいます。どうしてなんでしょう。」
転職を支援する会社の方から、こんな質問があった。これまでの仕事の経験を活かして、第二の人生は研修講師として頑張りたいという人は多いのだが、うまくいく続けられられる人は限られているという。
「つまらないからですよ!」
素っ気ない回答だが、それに尽きると思っている。
歌を歌ってお金をもらえるプロの歌手はほんの一握りだ。しかし、歌を歌いたい人、しかもとてもうまい人であっても、大半はカラオケに行って自分でお金を払って歌っている。この違いと本質的には同じだと言える。
長年、講師という仕事をしながら、どうすればお金を稼げる講師になれるかについて、自分なりに学んだことを紹介させていただく。
受講者と対話する
講師は漫才師であり落語家である。しっかりとネタを仕込み、何度も練習を重ね万全を期すのは当然のことだ。だからといって、その通り話をすれば、観客に喜んでもらえるかとなると、そうはならない。相手によって、あるいは場所によって、時間帯によっても相手の反応は変わる。そんな観客の反応に神経を研ぎ澄ませながら、話しをその場でアレンジできなければ、観客を沸かせることは難しい。
名人と言われる芸人はそれを心得ている。だから同じネタであっても、オチが分かっていても、会場を惹き付け、笑いを引き出す事ができる。
研修講師も同じだ。自分の話のどこがつまらないのか、どこに関心を示してくれるのかは、受講者の反応を見ていれば、おおよそ察しが付く。それに合わせてネタを飛ばす、準備した以外のネタを織り込む、休憩を取る、脅す、冗談を言う、黙るなどの技を繰り出す。
大切なことは受講者が、この研修に参加してほんとうに良かったという満足を持ち帰ってもらうことだ。知識を持ち帰ってもらうことではない。知識を手に入れたいのなら本を読めばいいわけで、それとは違う体験を求めて来るわけだから、知識だけを蕩々と語るだけであれば、受講者の期待を裏切ることになる。
話の内容がどれほど素晴らしい知識の固まりであっても、それだけではつまらない。講師というのはそういうエンターテナーであることを自覚し、その技を磨かなければ、お金を稼ぐことは難しいだろう。
もちろん、無償で知識を披露するのなら、いくらでも機会はあるが、それでお金を稼ぐとなると、その覚悟と研鑽が必要だ。カラオケの名手とプロの歌手の違いと同様、自己満足をゴールとするか、相手の満足をゴールとするかの違いであり、そこがお金をもらえるかどうかの分かれ目である。
体験談や自慢話はほどほどに
長年ひとつのことに携わり積み上げたこと、修羅場をくぐり抜けたこと、他の人がやったことがないことをやり遂げたことなどは、称賛に値するし、敬意を表したい。しかし、それだけのことだ。
だから、どうなんですか、どうすればいいんですか、がなければ、それはただの自慢話になってしまう。
貴重な体験をしたことは、その人の記憶と感情に留まっている。その体験から、他の人にも適用できる教訓、すなわち法則や理論という一般化がなされると経験となる。経験を重ね、磨き上げられた知の結晶が知恵であり、それを誰もが再現できる手順として再構築できれば、メソドロジーとなる。
体験談は人を驚かせたり、感動を与えたりできるが、それ以上の何物でもない。受講者は自分のために使いたいわけだから、講師の話を聞いている訳なので、体系化された、あるいは整理された経験やメソドロジーを求める。そこまで昇華できてこそ、お金を払うに値するネタとなる。
体験談は、受講者との共感や彼らへの注意喚起のツールにはなり得るが、それ自体には、たいした商品価値がないことを心得ておくことだろう。
古くさい話をしない
例え、普遍的であり、時代を超えて変わらない知恵であったとしても、時代に合わせた表現には心がけるべきだろう。古くさい統計や事例を持ち出して、それを事例に話すのは辞めた方がいい。なぜなら、勉強していないことをさらけ出すようなものだからだ。
講師は「先生」でなくてはならない。自分よりも勉強しているからこそ、敬意を払えるわけだ。敬意があるからこそ、話しを聞いてくれるし、なるほどそうかと受け入れてもらえる。しかし、古くさい内容では、ピントこない。感性が合わないわけで、それが心の壁となって立ちはだかってしまう。
何も昔のことを話すなとか、歴史を語るなとか、言っているわけではない。「いま」を起点に過去や歴史を解釈し、なぜ「いま」なのかを伝えることは、物事の本質を理解するためには、極めて大切なことだ。しかし、「いま」から遠く離れた過去の話を過去の感性や目線で語られても、面白みもなければ、ピントこないのだ。
古くて新しいことはいくらでもある。2600年前の「論語」、70年以上の前の戦争を語った「失敗の本質」など、過去から変わらぬ普遍的な真実というものはたくさんある。それをいまの出来事に照らし合わせ、未来への教訓として語ることの意義は大きい。
また、ITについて言えば、その発展は、方法論だけばなく、価値観であり、歴史観であり、本質的な転換を幾度となくもたらしてきた。例えば、パーソナルコンピュータがコンピューティングの民主化を果たし、インターネットが情報流通の民主化を果たし、ブロックチェーンが価値交換の民主化を果たそうとしている。社会や政治、生き方さえも大きく変える力を生みだしてきた。
「3年前は明治時代、5年前は江戸時代、10年前は原始時代」
そんな冗談を話すこともあるが、ITはそれほど高速にアップデートされている。それを未だ過去の知識"だけ"で語ろうとするのは辞めた方がいい。くどいようだが「過去」がダメなわけではない。「だけ」がだめなのだ。「だけ」が古くささを醸し出す。
「過去」を知っているなら、それを財産に「いま」を重ね合わせることができるはずだ。それはオッサン講師でしかできないバリューでもある。
お金をもらう講師の目指すべきは、受講者の満足度を最高レベルに高めることだ。自分の知識を披露することではない。カラオケ名人ではなく、プロの歌手を目指すことだ。
じゃあ、そのためには何をすればいいのか。そんな辺りもいずれ書いてみようと思う。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
【12月度のコンテンツを更新しました】
・総集編の構成を1日研修教材としてそのまま使えるように再構成しました。
・最新・ITソリューション塾・第32期の講義資料と講義の動画(共に一部)を公開しました。
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総集編
【改訂】総集編 2019年12月版・最新の資料を反映しました。
*1日研修で使える程度に、内容を絞り込みました。
パッケージ編
ITソリューション塾(第32期)
【改訂】ビジネス・スピードを加速する開発と運用
動画セミナー・ITソリューション塾(第32期)
【改訂】ビジネス・スピードを加速する開発と運用
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ビジネス戦略編
【新規】変革とは何をすることか p.4
【新規】イノベーションとインベンションの違い p.8
【改訂】デジタル化:デジタイゼーションとデジタライゼーション p.37
【新規】経済政策不確実性指数(EPU)p.38
【新規】デジタル・ディスラプターの創出する新しい価値 p.41
【新規】ハイパーコンペティションに対処する適応力 p.42
【新規】価値の重心がシフトする情報システム p.54
【新規】複雑性を排除してイノベーションを加速する p.55
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoT実践の3つの課題 p.74
ITインフラとプラットフォーム編
【新規】ゼロ・トラスト・ネットワーク 境界型セキュリティの限界 p.110
【新規】ゼロ・トラスト・ネットワーク セキュリティと生産性の両立 p.111
開発と運用編
【改訂】改善の4原則:ECRS p.5
【新規】ITの役割の歴史的変遷 p.8
【新規】アジャイル開発:システム構築からサービスの提供(体制変化) p.11
【新規】仮想マシンとコンテナの稼働率 1/2 p.60
【新規】仮想マシンとコンテナの稼働率 2/2 p.61
【改訂】DevOpsとコンテナ管理ソフトウエア p.63
【新規】モビリティの高いコンテナ p.65
【新規】モノリシックとマイクロ・サービス p.71
テクノロジー・トピックス編
【新規】急増するAI専用プロセッサ p.62
下記につきましては、変更はありません。
・クラウド・コンピューティング編
・サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
・サービス&アプリケーション・基本編
・ITの歴史と最新のトレンド編