【図解】コレ1枚でわかるAI
人間の知的能力を機械に置き換えてしまおうという技術が使われはじめています。「人工知能(Artificial Intelligence)」と呼ばれるこの技術は、もはやSF世界の夢物語ではありません。私たちの日常に様々な恩恵をもたらしつつあります。
「人工知能」という言葉には様々な解釈がありますが、概ね「人間が行う知的な作業をソフトウェアで実現する技術や研究」を意味しています。その範囲は広く、音声をテキストに置き換える音声認識、画像に何が描かれているかを解釈する画像認識、大量のデータの中に隠れた規則性や関係性を見つけ出そうという機械学習などがあり、それを応用した技術や研究も含まれます。
そんな人工知能を搭載した「ロボット」も登場しています。ロボットは、これまでも様々なところで使われてきました。例えば、次のようなことです。
- 工場のものづくりに使われてきた産業用ロボット
- 倉庫で貨物を移送するための搬送ロボット
- 宇宙ステーションの船外活動を助けるロボット・アーム など
しかし、それらは人間が作ったプログラム通りに動くものや、人間が遠隔操作するものなど、知的処理の部分は人間が担っていました。しかし、人工知能を搭載すると、自分で周囲の状況を捉え、どう行動すべきかを考え、判断して行動する機械へと進化します。前者を「自動化(Automation)」、後者を「自律化(Autonomy)」と呼び、両者を区別しています。
ロボットには、機械の身体を持たないソフトウェアだけのものもあり、「bot(ボット)」とも呼ばれています。「ロボット(ROBOT)」から生まれた言葉で、人に代わって作業を行うコンピューター・プログラムのことです。botが登場した当初は、次のような単純作業を行うのが一般的でした。
- Webを巡回して情報を収集する
- 用意されたメッセージを指定した時間にソーシャル・メディアに発信する
- オンライン・ゲームで一定の動作を自動で繰り返し行う など
これに人工知能の技術を組合せ、
- 音声を理解して自然な対話で応対する
- 曖昧な指示からその人のやりたいことを推察する
- 機器やソフトウェアの操作、検索や要約などの知的作業を代替する など
ができるbotも登場しています。
■人工知能やロボットが実現しようとしていること
人工知能やそれを搭載したロボットは次のふたつを実現しようとしています。ひとつは「人間にしかできなかったこと」を代替し人間の作業を効率化すること、そして「人間にはできなかったこと」を実現し人間の能力を拡張することです。
前者の例としては、自動運転自動車がトラックやタクシーの運転手を、産業用ロボットが工場の作業員を、自律型無人機がパイロットの代わりをしてくれます。また音声を認識し、言葉の意味や文脈を解釈し、検索やプログラム操作を代替してくれます。
後者の例としては、次のようなものがあります。
- 人間には一生かかっても読み尽くせない膨大な学術文献や法律文書を読み、これを分析し、最適な解釈や判断基準を示す。
- 膨大な物質の組合せを検証し、遺伝子やタンパク質の合成メカニズムを探り、これまでにない薬や個人に最適化されたカスタムメイドの薬を創り出す。
- 犯罪の発生場所や犯罪の内容を予測し、指定された地域のパトロールを強化することで検挙率を増やし犯罪の発生率を減らす。
- 障害者や高齢者の筋力や認知能力をロボットとともに補完し日常生活を快適なものにしてくれる。
- 言葉の異なる人同士がリアルタイムで対話し、意思疎通が図る。
一方で、これまで人間にしかできなかった仕事を奪ってしまうのではないかとの懸念もあり、人間は新たな役割を見つけなければならないのかもしれません。ただ過去にも、1970年代に始まるもの作りの自動化で製造現場での人間の仕事は少なくなり、管理やサービスといった仕事に役割を転じてきました。人間の役割が時代と共に変わってゆくのは今も昔も変わりません。
さらに、機械が人間よりも優れた知能を持つようになり、人間を支配する時代が来るかもしれないといったことも心配されています。ただ、「知能とは何か」が未だ解明できておらず、それを工学的に実現する方法の見通しもないのが現実です。それを心配するよりも、人間に代わって安全、確実に効率よく作業ができる、あるいは人間の知的能力を拡張し、これまでできなかったことができるようになるといったメリットを積極的に活かしてゆくことのほうが、現実的な係わり方と言えるでしょう。
特に少子高齢化がすすむ我が国では、働き手が少なくなってゆきます。不足する労働力を補い経済や生活の質を維持してゆくためには、人工知能やロボットをうまく使いこなしてゆく必要があります。また、過疎化・高齢化が進む地方の交通手段や輸送手段として自動運転車は地元の足となり、輸送手段として欠かすことができないものとなってゆくでしょう。また、「ITや機械の操作が難しくて使いにくい」というこれまでの常識が、人に話しかけるように指示するだけでできるようになれば、高齢者や身体に障がいを持つ人たちにも大きな恩恵を与えることになります。
人工知能やロボットの実用についての模索は始まったばかりですが、着実に成果をあげつつあり、近い将来、なくてはならいな存在となっているでしょう。
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