【図解】コレ一枚でわかる人工知能の歴史
「我々は、1956年の夏の2ヶ月間、10人の人工知能研究者がニューハンプシャー州ハノーバーのダートマス大学に集まることを提案する。そこで、学習のあらゆる観点や知能の他の機能を正確に説明することで機械がそれらをシミュレートできるようにするための基本的研究を進める。機械が言語を使うことができるようにする方法の探究、機械上での抽象化と概念の形成、今は人間にしか解けない問題を機械で解くこと、機械が自分自身を改善する方法などの探究の試みがなされるだろう。我々は、注意深く選ばれた科学者のグループがひと夏集まれば、それらの問題のうちいくつかで大きな進展が得られると考えている。(McCarthy et al 1955)」
1956年7月から8月にかけて、人工知能という学術研究分野を確立したダートマス会議が開催され、その開催提案書の序文に書かれていた言葉です。この提案書のタイトルに、人類史上初めて「人工知能(Artificial Intelligence)」という用語が使われたとされています。
それからおよそ60年の歳月を経て、機械学習の進展やディープラーニングの登場と共に、人工知能の実用化が急速に進み、いま「第3次AIブーム」が到来しています。
振り返れば、1956年のダートマス会議をきっかけとして、「第1次AIブーム」が到来し、「人間の知能を機械でシミュレーションできる」ようにするための様々な研究が行われました。1957年には、いま話題のディープラーニングの原型とも言われるユーラル・ネットワークが考案され、翌1958年にはそれを機械に実装したパーセプトロンが登場しています。しかし、単純なゲームや迷路の探索程度以上の成果をあげることができず、このブームは終焉を迎えます。
その後、コンピュータは急速な発展を遂げます。ビジネス分野では、1951年、米・Remington Rand社がビジネス・コンピュータの先駆けとなるUNIVAC-Iの販売をきっかけとして、1964年、米・IBM社がビジネス・コンピュータの普及の原動力となったSystem/360を発表しました。同年、米・DEC社は商業的にはじめて成功したといわれるミニコンピューターPDP-8を発売しています。
1981年、米・IBM社が、当時需要を拡大していたパーソナル・コンピュータ分野にPersonal Computer 5150を投入、ビジネス分野での圧倒的地位を確立することになります。
コンピュータ性能の向上とその普及を背景に、人工知能研究に新たなブームが登場します。「第2次AIブーム」と呼ばれるこの時代、知識をルールや辞書として人間が記述し、それに基づいて知的処理と同等の結果を得ようという取り組みです。「ルールベース」と言われるこのやり方は、やがて特定分野の専門家の知識を記述する「エキスパートシステム」として成果をあげることになります。しかし、ルールを記述するのは人間であり、世の中のあらゆる事象を記述することはできず、汎用性を持たせることはできないままにブームの終焉を迎えます。
その後、コンピュータ性能は「ムーアの法則」に従うように急激な向上を果たします。また、1990年代に始まるインターネットや2007年のiPhoneの登場をきっかけとしたスマートフォンの普及により、データの流通量が爆発的に増大、これらを背景に「機械学習」の時代を迎えます。
2011年、米国の人気クイズ番組JeopardyにてIBM のWatsonがクイズ・チャンピオンに勝利し、画像認識のコンテストでカナダ・トロント大学のチームがディープランニングで圧倒的な勝利を収めるなどの出来事が注目され、その後、実用面での応用が急速に拡大、いまの「第3次AIブーム」に至っています。
今後、IoTの普及によるデータ流通量のさらなる増大、「ムーアの法則」に支えられたコンピュータに変わる新たなテクノロジーの登場により、人工知能の新たな発展の可能性が模索されています。その鍵を握るのが、量子コンピュータやニューロモーフィング・チップです。さらには、人間の脳の機能を全てシュミレーションできる汎用人工知能の研究も進んでいます。
1956年から63年目を迎えたいま、ダートマス会議の理想が完全に実現されたとは言えません。しかし、その実現に向けての取り組みは、冬の時代を乗り越えて確実にその成果をあげつつあると言えるでしょう。
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