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新入社員を講義に集中させるための3×3のTips

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「今年の新入社員は集中力が足りない。居眠りしている連中が多い。」

そうお嘆きの講師諸兄もいるとは思うが、それは自分の講義がつまらないからだということに、まずは思いを馳せてみるべきだろう。

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つまらない講義は新入社員でなくても眠くなる。まずは、そこから見直してはどうだろう。「何を」「どのように」伝えるかに真摯に向き合い、カイゼンを試みるべきだ。

「何を」については、それぞれの分野によって違うので、内容についてどうのこうのと言えることではないが、次の3つのことは心得ておくといい。

まず、「幹」と「枝葉」だ。伝えたいことはいっぱいあるのは分かるが、何が「枝」であり「幹」なのかを明確にしておくことだ。それらが区別されることなく、強弱もなく、だらだらと平板に語られていたら、集中力が途切れるのは当然のこと。だからこそ、この講義で「何を達成するか」のゴールを定め、それに至る物語を組み立てる。「何を達成するか」とは、「この仕事に就いたことに誇りを感じられるようになること」や「テクノロジーの新しい言葉がお客様の口から出てきてもどのようなことを言っているのかが想像でき、怖がらずに済むようになること」といったことだ。そのゴールを達成するのに大切なことは何か、つまり「幹」は何かを明確にし、補足的説明、つまり「枝葉」をできるだけ払った話の構成にする。

つぎに心がけるべきは、「例え話」だ。新入社員は新しいことを学ぶわけで、話されている内容に現実感がないことが多い。だから、彼らの知っている話題を例え話にして、親近感を持たせる必要がある。最近の話題のニュース、学校生活、流行やファッションなど、身近なネタはいくらでもある。そういうことと、結びつけて話すことで、彼らの関心を惹き付けることができる。

最後は、「意義」や「価値」だ。講義にでてくる言葉や考え方などが、彼らのこれからの仕事や成長にどのような価値をもたらすのか、あるいは、社会や日常にどのような変革をもたらすのかといったことだ。例えば、AIがどのようなとこに使われ、それがこれまでの常識をこのようなに変化させると言った話しだ。そして、それが自分たちの未来をどのように変えるのか、どのような価値をもたらすのか、自分たちは、まさにそのような世界の実現のためにこの会社に入り、いまこうしてこの講義を受けている、と言ったと話までできると満点だろう。

「どのように」については、いろいろと工夫の余地はあるが、私が実践していることを3つほど紹介しよう。

ひとつめは、「事前課題」だ。例えば、今年の新入社員には次の質問を含め、3つの質問を投げかけている。

単語の羅列や箇条書きではなく、筋の通った文章として自分の考えを文章にしてもらう。単語の羅列や箇条書きは簡便だが、言葉の要素や概念のあいだに「論理」や「物語」をつくれなくなってしまうからだ。決まった正解もない。これはかなり難しい。そんな難しさに向きあうことで、自分の知識の状態を客観視してもらう。これはまずい、自分は分かっていないを事実として感じることができれば、講義は他人事ではなく自分事となり、講義への期待が高まり、気持ちがとても前のめりになる。

ふたつ目は、「今日はどんなことをこの講義で知りたいか」を講義の最初に聞くようにしている。

講義の冒頭、事前課題について、4人くらいで15分ほどのグループ・ディスカッションを行い、お互いに考えてきてもらったことを共有してもらう。自分とは違う考えを知ることで、得られる気付きは多い。そして、そのディスカッションで、「今日の講義で教えてもらいたいこと」を考えるように指示している。そして、ディスカッション終了後に、発言を求め、それをホワイトボードに書き出す。

おおよそは想定の範囲内であり、講義の中で応えるが、突拍子もない質問が出てくることもあり、これがなかなか楽しめる。どう説明しようかと思いを巡らせることで、こちらも講義への気合いが入る。こうやって、自分の聞きたいことを教えてもらえる自分のための講義という気持ちが作られ、その答えを知ろうという積極的な態度が生まれる。

最後は、「質問を考えるディスカッション」だ。講義の途中で、何度が5分ほどのグループ・ディスカッションを行い、それまでの講義についての質問を考えてもらう。個人に手を挙げさせるのではなく、グループで話してもらうところがミソだ。最近の若い人たちは、まわりの評価を気にして手を挙げない人が多い。しかし、4人程度の小グループだと活発な意見が交わされ、質問も出やすくなる。また、これまでのことを理解できていない人に説明してあげる人がいたり、ちゃんと聞いていなかったことを補足してもらえたりと、知識の平準化や底上げができるのもこのような時間を取り入れる価値である。また、それを立ったままで行い、会場によってはあえて壁際や窓際に移動してもらい、立ったままディスカッションをしてもらう。身体を動かすことで右脳が活性化し、左脳のストレスを解消してくれる効果があるらしい。質問してもらうことが大切なのではなく、身体を動かし、思考回路を変えてみることで、疲労感が一挙に解消する。

他にも1時間毎に休憩を取ることや、動画を見せて、この動画の背景にある企業の思惑を考えディスカッションし、発表してもらうなどの工夫も凝らしている。例えば、Amazon GoとAmazon Echo の動画を見せて、「この両方のビジネスに共通するAmazonの戦略や思惑をあげて欲しい」と言って、動画を見せ、そのあと5分ほどのグループディスカッション、そして考えたことを発表してらっている。これはかなり白熱する。

「何を」つまり講義内容を洗練させることは当然のことではあるが、「どのように」ついても講義を楽しめるように演出することを心がければ、講義への集中力は増し、居眠りなどできなくなる。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

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